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水面下ではいろいろとやりあっているらしい。

お待たせしました!!

「ただ今戻りました」


お使いを頼んでいたパウルが戻ってきた。


「おかえりなさい。…どうだった?」


「それはもう、素気(すげ)なく断ってくださいましたよ」


…お、おう。

だが、パウルよ。一応、あちらの方が立場は上なので、怒ってはならん。

その怒気を収めてくれ!

パウルには、ダオに遊びましょーっていうお誘いをしにいってもらったのだが、どうやら門前払いをされてしまったようだ。

ダオと遊ぶには、皇帝陛下を通じて呼び出してもらうしか、今のところ方法がない。

せっかく遊び友達ができたのに、満足に遊べないとは…。

でも、ダオにも都合というものがあるし、だからこそ、予定を合わせたかったんだけど。

今は、私だけではダオに近づけない。

マーリエの方も全敗中である。

仕方ないので、今日は宮殿を散策することにした。

護衛は森鬼で、案内役は星伍(せいご)陸星(りくせい)だ。

ただ廊下を歩いているだけでも、ここに抜け穴がとか、隠し部屋はこっちとか教えてくれる。

その情報いるかな?

まぁ、パウルが精査しているだろうから、私は覚えなくてもいいかな。


我が国の王宮と違い、壁や柱への装飾が少ないのは意外だった。

ただ、不思議なのが共通する模様が所々に刻まれていること。

なんの文様魔法なんだろう?

ぷらぷらと散策して思ったのが、使用人たちは丁寧だけど、貴族と思われる人たちにはほとんど警戒されているってこと。

お姉ちゃん曰く、お姉ちゃんがライナス帝国に嫁入りするんじゃないかと思っている節があると。

つまり、年頃の娘を持つ貴族たちは気が気じゃないということらしい。

そんなことはないと言いたい。

たぶん、パパンが許さないと思う。

お姉ちゃんのことも離したがらないくらい可愛がっているので、嫁がせるなら国内限定だろう。

まぁ、ヴィの婚約者候補らしいけど、本人がめっちゃ嫌がっているので、それもどうなっているのかよくわからない。

もし、ルイさんといい感じになって、嫁ぐってなったら、絶対大泣きする自信がある。

私もお姉ちゃんとは離れたくないんだよ!


まぁ、どうなるかわからない未来の話はいいとして、女の世界ってどこもドロドロしているんだね。


「どうして貴女がここにいるのかしら?」


「本日はアイセント殿下と仲のよい方だけが招待されているのよ?」


三人のご令嬢が、一人のご令嬢を壁際に追い詰めている場面に遭遇した。

なんでこんなところでそんなことやっているの?

ちょっと顔貸しては、こんな人が通るところでやってはいけません!


「私は兄の付き添いで…」


「貴女のお兄様が殿下と仲がよいのは存じておりますけど、立場というものを弁えてはいかが?」


どうしよう。

我が国だったら、ちょっと通してねって止めに入ることができるんだけど、ここは他所の国。

ある意味権力抗争でもあるので、口を出していいのか…うーん。

悩んでいると、星伍と陸星が空気を読まずに切り込んでいってしまった。

ワンワンと、あの子たちの可愛らしい姿を見て、詰め寄っていたご令嬢たちが表情を緩めた。


「あら。もしかして、噂の可愛いお客様ね」


「まぁ!本当に可愛らしいわ!」


と、なぜか人気者だった二匹。

大人しく、ご令嬢たちに撫でられている。

しかし、先ほどまであった剣呑な雰囲気がなくなったので、二匹はいい仕事をした!

これなら、私が出ていっても問題ないだろう。


「星伍、陸星、どこー?」


二匹を探すふりをして、ご令嬢たちからでも見える位置に出た。

私の声に反応して、二匹がワンッとお返事をした。


「星伍、陸星、勝手に動いたら心配するでしょう?」


本来なら褒めるべき行動なので、あとで思いっきり褒める予定だ。

今は話を合わせてくれる二匹は、本当にお利口さんだな。


「うちの子たちが失礼いたしました」


そうご令嬢に声をかけると、私が誰だかわかったようで、二匹に見せた笑顔よりも固い、愛想笑いに変わった。


「いえ、可愛らしい姿にとても癒されましたわ」


「それでは、わたくしたちは失礼いたします」


そそくさと、という言葉がぴったりな感じで、どこかに行こうとしたご令嬢たちだったが上手くいかなかった。

ご令嬢を挟んだ、私の反対側から別の人物が現れたからだ。


「アリアナ、ショーンが探していたよ?」


「えっ?あ…申し訳ございません。すぐに戻ります」


まさか、自国の皇子が探しにくるとは思っていなかったのか、アリアナと呼ばれた、絡まれていたご令嬢がわたわたしている。


「君たちも、一緒に戻ろうか。綺麗な花がいなくて、みんな淋しがっているよ?」


んんん??

チャラ男ってこんなキャラだったっけ?

いや、チャラいのはチャラいけど、こう軟派な感じだったような。

考えずに物言うようなタイプから、歯が浮くような甘いセリフを言っちゃうタイプにチェンジしたのか!

チャラ男を観察していると、バッチリ目が合ってしまった。


「おや、可愛い小さなお嬢様。今日は一人なのかな?」


見よ!鳥肌が立った!!

でも、私は公爵家の娘。これくらい我慢できなくてなんとする!

戦場におもむくような気持ちで、チャラ男と対峙する。


「ごきげんうるわしゅうぞんじます、アイセント殿下。少しきゅうでんを冒険していたところですの」


「最近はダオとよく遊んでいたようだったから、今日も一緒かと思っていたよ」


一応、皇子らしい対応ではあるんだが、こう言葉に棘のようなものを感じる。

チャラ男もダオのことをよく思っていないのかもしれない。


「ダオとは仲良しですけど、今日はつごうが悪かったようで…」


「愛称を呼ぶくらい仲良くなったんだ。…そうだ。よければ、交遊会に来なよ。歓迎するよ?」


交遊会とは、友人同士のごく内輪の小さなお茶会みたいなものらしい。

性別や階級関係なく、友情を深めるという目的で、ライナス帝国では若い十代の間で流行っている。

これは、ライナス帝国の歴史と風習に基づいたものなので、我が国では行われていない。

面白そうではあるけれど、仲良くない人に招待されるって困るよね?

かといって、お世話になっている国の皇子の誘いを断るのもまずい。

よって、受けるしかないというわけだ。


「とつぜん私がおじゃまして、めいわくじゃありませんか?」


「とんでもない。みんな、可愛らしいお姫様と仲良くしたいと思っていますよ」


お嬢様からお姫様にグレードアップしただと!?

ていうか、お姉ちゃんと同じくらいの年齢でコレって、大人になったらもっとやばそうだよねぇ。

というわけで、おっかなびっくりついていくことになりました!


宮殿内の一角の、美しい庭が見渡せる部屋に通された。

そこには、チャラ男と同世代の子息令嬢たちが、楽しそうにおしゃべりをしている。

この交遊会も宴のときと同じで、おしゃべりする部屋と飲食できる部屋が分けられているようだった。


「殿下、お帰りなさいませ。おや?そちらの方は…」


「あぁ、アリアナを探しているときに出会ったんだ。ガシェ王国からの客人であるネフェルティマ嬢だよ」


ライナス帝国の礼をして自己紹介をすると、あっという間に人に囲まれてしまった。


「あの切れ者と有名な宰相閣下のご令嬢なんだって?」


「住民の少ない地域における職業納税の仕組みは凄かった。わたしの領地でも参考にさせていただいているんですよ」


「特殊技術法の確立も、さすがとしか言えませんね。ぜひ、我がライナスでも実施したいと…」


なぜかパパンが大人気だった。

我が国のことを聞かれても、ある程度は答えられる。

だが、国政や領地での政策など、私が知らないことを聞かれても困る。

つか、なんでそんなに他国の政治に詳しいの?

うちの領地でやっている職業納税の仕組みとか、私でもこんなことやってるよ、くらいしか知らないんだけど。


「まつりごとのことはくわしくないのですが、我が国は地域によってきこうもとくさんぶつも違うので、その地域に住まう民によりそった結果だと思いますの」


東西南北で気候も産業もまったく違う、我が国ならではの政治だろう。

そして、領地をある程度領主が好き勝手できるというのも大きいかもしれない。

領地でこれをやりたいと言えば、領主としてすぐに議題、というか王様や大臣ズといった政治中枢に上げることができるのだから。

ライナス帝国の政治は、勉強した限りでは昔の日本と同じようだと思った。

皇族が幕府で、貴族に領地を与えて藩のように治めさせる。

もちろん、年貢である税を国に納めさせるが、その税の集め方は貴族に任せる。

ただし、国が定めた以上の税を民に課してはならないし、私腹を肥やすのもダメ。

これらは、謀反と見なされて、即処刑だというから、とても重たい罪なのだ。

なので、領地内での自由度はライナス帝国の貴族の方が高いかもしれない。

代主(だいしゅ)を務めている我が国の貴族には、そんな権限はないからね。

だけど、国からの監視という面では、ライナス帝国の方がきついかも。

ライナス帝国には、特別な調査官がいるんだって!

我が国の調査官は、ある意味官吏なので、町奉行している某桜吹雪みたいな人ってイメージなのだが、こちらは某先の副将軍みたいな人って感じだ。

皇帝陛下直属であり、貴族を監察し、不正があれば調査官の裁量で罷免できる。

直属の調査官のみに与えられる紋章と陛下直筆で御璽入りの勅書(ちょくしょ)

ここまで揃えば、控えおろうって言いたくなるよね!!


「あの…本当にアーマノスっているんですか?」


神代(しんだい)語で秘密を暴く的な意味を持つアーマノスと呼ばれるようになった調査官たち。

好奇心が押さえられずに聞いてしまった。


「そんな恐ろしいことを…」


「ネフェルティマ嬢、その名前は禁句なんだよ。貴族たちの間ではね」


と言われて、何も教えてもらえなかった。

しかし、引っかかるなぁ。

別に悪いことしていないなら、調査官を恐れることはないはず。

彼らの権限が強いから、冤罪を恐れるっていうのならわかる気もするが…。

それだって、冤罪であれば別の調査官に再調査を申請することだってできるし。

うーんと悩んでいると、きゃーという黄色い歓声が上がった。

なんだと振り向けば、声がした方にご令嬢たちが集まっていた。

そして、その中心にはなぜか森鬼がいた。

少し不安になったので、一言断ってから、ご令嬢たちの方へ移動した。


「うちの者が何か失礼でも?」


森鬼の(あるじ)として、失礼があったのなら謝らねばと思っていたんだが。


「いえ、とても素敵なお話を聞かせていただきましたの!」


ご令嬢たちは頬を赤らめ、心なしかうっとりしている気がする。


「この方とネフェルティマ嬢との出会いですわ」


「まるで物語に出てくる騎士様のようで…」


次々とご令嬢たちが口にするが、出会い?騎士様??

…あぁぁぁ!ママンが作ったアレか!!

すっかり忘れてたよ。

森鬼もよく覚えていたね。


(すい)族というのは初めて耳にしましたけど…」


ご令嬢の一人がそう言うので、知らなくても恥ではないと教えてあげた。


「珍しい種族ですから。私も森鬼に言われるまで知りませんでしたし」


森鬼ではなく、教えてくれたのはママンだったがな。


「それがよいのではないですか。ありきたりな獣人では、素晴らしさが減ってしまいます」


別のご令嬢が力説するが、なんかむずむずする。

こう、喉に骨が引っかかったときのような、小さな違和感。


「この方は凛々しくて格好いいですけれど、軍にいらっしゃるフリエンスのフォーグ様のような麗しい方を助けるというのもいいですわよね」


夢見る乙女はイケメン好きだよねぇ。

我が国に来るといいよ!顔面偏差値高いから!

それから、どこどこの誰が格好いいとか、麗しいとかの話で盛り上がり始めた。

名前を言われても、私はわからないから適当に相づちを打つしかなかった。

しかし、とても興味を引かれる話題もあった。

ご令嬢たちが好ましくないと言った獣人の中に、(せき)族がいたのだ!

そう!ファンタジー風に言うなら、ドラゴニュートが近いだろう。

トカゲの獣人だよ!トカゲ!!

トカゲって言うと強そうな感じがしないけど、竜とは言えない竜の亜種だと強そうに感じる。

つまり、そういうことだ。

竜ではないけれど、ワームくらいの強さのトカゲがいるんだって。

しいて言うなら、コモドオオトカゲとかが近いかな?

蜥族のルーツはそれだと思われているので、獣人の中でも戦闘能力は高い。

これは、かなり楽しみだね!


なんだかんだ言って、結構楽しめた交遊会だった。

星伍と陸星も、動物が好きな人たちから遊んでもらっていたし、森鬼もしれっと料理をいっぱい食べていた。

交遊会がお開きになったところで、チャラ男が私の部屋まで送ると言い出した。

星伍たちが帰る道を知っているので、ちゃんと戻れると断ったのだが、笑顔でスルーされたよ。


「ネフェルティマ嬢、覚えておくといいよ。あそこにいた者たちは敵だから」


「…敵?…誰の?」


突然そんなことを言ったかと思ったら、それ以降は一言も口を開かなかった。

なんて意味深!めっちゃ気になるじゃんか!


「ねぇ、アイセント殿下にとって敵なの?」


食い下がろうと質問するも、彼は目を細めて笑うだけ。

あ、この表情はママンに似ている。

人をやり込めようとするときの、絶対に勝つことができないママンの顔に。


もやもやしたままお部屋につき、チャラ男はまたねと去っていった。

パウルに出迎えられ、お姉ちゃんにお帰りと言われて思わず、私の方からお姉ちゃんにぎゅーっと抱きついた。


「ネマからは珍しいわね。疲れたのかしら?」


クスクスと笑いながらも、私の頭を撫でる手は優しかった。


「…あのね」


お姉ちゃんに今日あったこと、聞いたことを全部話した。

チャラ男が言った最後の言葉も。


「そう、アイセント殿下がそんなことを…」


「敵って、誰の敵だと思う?」


「そうね。おそらくだけれど、皇族やわたくしたちの敵でしょうね」


「えっ!?」


私たちの敵っていうならまだわかるけど、皇族にとっても?

ってことは、チャラ男にとっても敵な人たちと仲良くしてるってこと?


「もしくは、アイセント殿下も敵かもしれませんよ」


パウルがお茶を用意しながら、会話に入ってきた。


「あそこにいた者たちということは、アイセント殿下も含まれています。殿下がなぜ、そのようなことを仰ったのかはわかりませんが」


もしかしたら、ネマお嬢様を巻き込みたくないのかもしれませんねとパウルは続けた。


「もし、そうならば、アイセント殿下は良識は捨てていないってことになるわねぇ」


「どうして?」


敵かもしれないのに、良識がある。

一見、矛盾しているように感じるのだが?


「ライナス帝国内の政権争いに、無関係なネマを関わらせたくない。ましてや、ネマはまだ幼い子供ですもの」


お姉ちゃんは、わたくしだったらそうするわと、少し悲しそうだった。

そうか。お姉ちゃんは、本当は私をこういったことに関わらせたくないと思っているんだ。

でも、私のために、私に協力してくれる。

自分の気持ちよりも、私を優先してくれる優しい姉だ。


「おねえ様、大好き!」


再びお姉ちゃんに抱きつくと、私も大好きよと抱きしめてくれる。


「ネマが傷ついたりしないよう、どこかで大人しくしていて欲しいって思ったことがあったの。でも、それだとネマを苦しめるだけだわ。創造神様にも、女神様にも愛されているネマだからこそ、たくさんの経験をして成長しなければならないのよね」


「おねえ様…」


「ですが、だからといってネマお嬢様を甘やかしてはいけませんよ、カーナお嬢様」


パウルに釘を刺されたお姉ちゃんは、それもそうねと声を出して笑った。

いやいや、お姉ちゃん。甘やかしてくれていいんだよ?

パウルが厳しいから、その分お姉ちゃんが癒しなんだよ!


「それから、ネマお嬢様とシンキは、交遊会にいたご子息たちの名前を教えてください。我々の方で調べますので」


……うーん、覚えている人?

アリアナって人くらいしか記憶に残ってないけど。

私の表情から察したパウルは、アイセント殿下と同じ年代の子供がいる貴族の一覧を用意しますと言ってくれたので、なんとかなるだろう。


「パウル。アイセント殿下の目的がわかるまで、ネマに近づけさせないようお願いね」


「畏まりました。殿下の周りも含め、急ぎ調査いたします」


そういえば、我が家の使用人はスーパーマルチだけど、他国の情報なんてすぐに調べられるものなんだろうか?


「パウルが調べるの?」


「…いえ。元からライナス帝国に潜入している者たちもおりますし、屋敷にいた者たちが数名、宮殿で働いております」


マジですか!?

しかも、宮殿で働いている者たちは、皇帝陛下公認だとか…。

皇帝陛下、大丈夫?そう易々と他国の者を入れて大丈夫?

それだけ、見られて困るものはない、もしくはどうとにでもなるという自信の表れか。

星伍と陸星も自由に動き回っているしな。

皇帝陛下も何を考えているのかわからない人だなぁ。



おまけ

『おとう様へ


今日は交遊会というものに参加しました。

ライナス帝国でおとう様がとても人気者で、とてもうれしかったです!

あと、お姉ちゃんが大好きなので、お嫁にやりたくないから、おとう様も協力してね!


ネマより』



いやー、自分の文章面白くない病を発症し、なかなか書けませんでした。

アイセも当初からキャラチェンしてもらったけれど、書きづらい(笑)

とりあえず、次は情報部隊のおっさんのターンかな?




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