プロローグ
結果だけ言うと、私、秋津みどり27歳は死にました。
突然死ってやつなんだけど、要因は過労かな?働きすぎっていう自覚はあったし、体調もずっと芳しくなかったんだよね。
まぁ、忙しさにかまけて、病院行かなかった私が悪いんだけど。
てか、過労死認定ってどうなるんだっけ?
愛社精神なんてもんは持ち合わせてないが、株式上場したばっかりのこの時期、契約社員なバイトとはいえ、死亡しましたってイメージ悪いよね…。
うちの会社、子会社なんだが倒産とかなったりしないよね?…あー、親会社のやつからボロクソ言われている上司の姿が、脳裏を過ったよ。
正直、親会社はどうでもいいです。現場を見ない上なんてクソックラエ。
さて、どうしたものか…。
悩んでいたら、神様から声かけられました!
困った時の神頼みよろしく、相談してみた。
そしたら、神様の条件をのむなら、どーにかしてくれるってさ。
神様から出された条件は『転生』―――
アスディロンという異世界で、人間を滅ぼすかどうか決めてこいとサクッと言われまして…。
それってどうよと思いながらも、詳細を聞いてみた。
要約すると、アスディロンの人間たちは、『自分たちは神に選ばれた種族であり、世界を管理するのも人間に与えられた使命だ』みたいなことを振りかざし、アスディロンに住むエルフや獣人、魔族を迫害しているそうな。
世界が違えど、人間の考えるとこって変わんないんだねー。何かそういう展開、世界史で習ったねー。
でも、何で神様が決めちゃいけないの?って聞いてみたら、神様にとってはどの種族も自分が創り出したものだから、決められないってさ。
自分勝手だな。
………ちょっと待てよ。転生ってことは、結局私死んでんじゃん!
27歳で死ぬのは天命だから、神様にも変えられないって言われた…。
転生して、滅ぼすかどうかを決めたら、死に方を選ばせてくれるって…。
死に方って何かヤダな…。
条件をのむべきか、それとも過労っぽい突然死のまま行くか。
んー、親会社は国とも繋がってる(天下り先とも言う)から、揉み消してそうだしな。
断ろっかなぁって思ってたら、神様が好きな能力を授けるからって言ってきた。
能力ってことは…チートか!?
今流行りの転生チートですね!!
何がいい?って聞かれたから…
「もふもふしたい!!可愛い動物たちと戯れたい!!癒しプリーズ!」
と心の底から叫びましたよ。
異様なテンションに神様若干引いてたけど、しょうがない!
動物好きな私にはもふもふが一番の癒し。実家の猫にもふもふすると、敵認定されて流血沙汰になるのにやめられない。
…………あ゛ぁぁぁぁ!!
承諾したってことじゃないかぁぁ!!
「ちょっ!タンマ!!」
「じゃあ、人間以外の生物に好かれるようにするから、自分の好みの子探してね」
おぉ!てことは、ネコ科の猛獣とか猛禽類とか、あっちの世界じゃ味わえないもふもふが可能なんだねー!
じゃねーよ、自分!神様も人の話を聴けぇぇぇ!!
「ダイジョウブダイジョウブ!素敵な家族を選んでおいたから」
見事なスルースキルですね。
何で私、こんなやつに捕まっちゃったんだろう?
日頃の行いってやつですか。そうですか…。死ぬ前の自分が憎い!
とりあえず、晴れやかな笑顔の神様を一発殴ってから、ちゃっちゃと逝ってきます。