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第二話 学年一の美少女(笑)がその本性を見せ始める 2


 カチャリ。

 う……ん? 今、何か物音が。

 ああ、もう月曜日か……また一週間が。

『……え? 本と』

  …………ん? 目覚ましが、止まった? 少しだけ待ってみたが、続きが流れる気配はない。まさか、壊れてっ……。

 そんな!

 俺はばっと目を開く。

 目を開くと、天使が俺に覆い被さっていた。

「お、おはよう?」

 混乱したままそう口にした。

「あ、うん、おはよう」

 茜音はすごい早さで視線を目覚ましから俺の顔に斜めに落とすと、そう呟く。

 お互い見つめ合ったまま停止する。首痛くないのかな、と関係ないことを思った。

 制服姿の茜音は、俺の上に覆い被さって、右手を枕元に伸ばしている。目覚ましを止めていたのだろう。

 で、左手はベッドについていた。ベッドが沈み込んで、距離が近い。

 結ばれた制服のリボンが、俺の額辺りに垂れ下がる。目覚ましを止めるために、やや枕元側に身体をおいているためだ。本来ならば額にかかるリボンは気になるところだが、今はそうでもない。

 ……さて、首辺りにあるリボンが額にかかると言うことは、だ。言わなくてもわかるな? 目の前にどの部分が来るか、などということは。

 首の下には何があるか。そうおっぱ――胸である。もとい胸部である。

 人間というのは立体的な生き物だ。いきなり何を、と思うかも知れないが、大切な事なので聞いてほしい。また、制服のブラウスというものが、割合ゆったりしたつくりなのは皆さん知っての通りだ。

 立体的で、隙間がある。ボタンとボタンの間には隙間がある。まっすぐ立っていればちゃんと閉じられているそれだが、このような姿勢ではどうなるか。さらに、おっぱ――胸部が立体感を作り出すと言うことは、隙間から下着が心頭滅却ッ!

 丁度アルファベットの「U」みたいに重力に引かれるブラウスの奥から見える、黄色いブラジャ……下着が、そのレース模様の細部までわかるほど近く、さらにその中の存在感まではっきりと感じさせるほどの距離にある。

 茜音が身じろぎしたのか、隙間の形が僅かに変わる。しかし角度が少し変わっただけで、視線を動かせないのは同じ、どころか、それ以上に、その中身が動く。

「お、お兄ちゃ……」

 俺の視線に気づいてか、茜音が声を出し、言い切る前に行動にうつった。

「ふごぉっ」

 俺の視界を塞ごうと思ったのか、あるいは慌てて転んだのか。茜音はそのまままっすぐに俺の上に落ちてきた。

 ふにょん。

 という擬音を、頭の中に聞いた。顔全体で感じるブラウスと下着越しの柔らかさ。そして鼻のあたりで感じる、直接の甘さに思考が停止しかかる。

「っっっっ!」

 声にならない茜音の悲鳴、というか空気の動きを触った。おっぱいに次ぐ胸の役割、すなわち呼吸による伸縮が、一層やわらかさを俺に押しつけることになる。

 押しつぶされた形を変える感触を覚えていると、茜音は横に転がってベッドから落ちた。そしてそのまま起き上がり、振り向かずに部屋を出て行く。

「………………」

 思考停止していた俺は、少ししてからのろのろと起き上がった。

 結局、何だったんだろう。


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