表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/28

第一話 学年一の美少女(笑)が俺の妹を好きだという 3


 さて。たとえ仲がいい兄妹だろうと、さすがに何でもかんでも日々のことを、事細かに話したりはしないだろう。

 少しくらい話題にでても、だから御堂の事は、同じ委員会に入っているからでてくるのだろうと、そのくらいに思っていた。

 そんなある日、放課後、帰り支度をしていると、声をかけられた。

「ねえ、恭吾君」

 と。聞き慣れない女性の声に顔を上げると、そこにいたのは御堂。

「なに?」

 純粋に理由がわからずに尋ねた。なにか、プリントでも出し忘れたか?

「ちょっと、付き合ってくれない?」

「あ、ああ」

 よくわからないまま頷いた。用件がまるで思い当たらない。

 場所を変えたい、という彼女に居従って、後ろをついて行く。なんだろう。別に、恨まれる覚えもないのだが。

 階段を上がる。四階も通り過ぎ、屋上へ。

 屋上? 屋上は確か、鍵がかかっているはずだ。

 と、御堂は鍵を取り出すと、屋上への扉を開いた。

 薄暗い階段に外の光が差し込み、やたらとまぶしい。思わず目を瞑った。

 彼女に続いて屋上へ出る。当然誰も居ない。……誰も居ないことに少し安心した。こう、なにか怖い人がいなくて。

「ねえ、恭吾君」

「うん」

 屋上の真ん中辺りで、彼女はくるりと振り向いた。

「クラスとかでもそうだけど、恭吾君って、シスコンだよね?」

「ああ」

 いきなりなんだ? とおもいつつも、俺はその類いの質問にはイエスと答えることに決めている。

「うん、それじゃあ言っておく。その方が、フェアだから」

「フェア?」

 茜音に関係することか? そう思い当たると気を引き締める。俺自身のことなら多少の迂闊も後悔すればすむが、茜音のこととなれば別だ。慎重に、一つの失敗もなく、あたらなければならない。

「私ね――」

 彼女は息を吸い、告げる。


「茜音ちゃんのことが、好きなの」


「…………は?」

「入学式の日、初めて会った時から。五分咲きの桜の下で、迷っていた彼女に声をかけた瞬間から。新入生オリエンテーションの時に舞台から一年生を見ているときもずっと。同じ委員会で話してからはもっと。そして今は、なによりも」

「あ、ああ、うん。うん?」

 勢いに圧倒されて曖昧に頷く。

「茜音ちゃんはよく恭吾君の話をするんです。たった一人の家族だって事も」

「ああ、まあ」

 茜音が他のところで俺の話をしていることにうれしくなった。我ながら単純だな。

「だから、ご挨拶を」

 彼女はまっすぐに俺を見つめて――それは思わず引き込まれるほど綺麗で――丁寧に頭を下げた。

「これから、よろしくお願いします。お義兄さん」

 と。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ