15年の空白
こんな感じの夢を見たので書いてみました。
需要があれば続くかも?
中学1年生夏休み最後の日。
僕には両隣に二人の親友が居る。
1つ年上のお姉さんの{渡辺 香}と同い年の{西野 悠}だ。
どちらも異性だけど小さい頃からずっと一緒にいて、いつかは離ればなれになるんだろうけど。
その日がくるまではずっと一緒に居たい。
??「こ・・・すし」
僕「?」
??「こら、聞いているのかな?藤本 泰くん?」
僕「香?」
香「はい、かおるさんですよ。」
悠「どーしたの泰、ボーとしてさ?」
僕「なんでもないよ。」
香「むむっ、ここはあえて聞かないでおいておくよ。」
僕「ありがとう香、僕は香のそんなところ好きだよ。」
香「私もそうはっきり好きって言ってくる泰が大好きさ。」
悠「相変わらず仲良いね-。」
僕&香「もちろん悠のことも好きだよ。」
悠「私も二人のことが好きですよ―。」
僕&香&悠 「・・・」
僕&香&悠 「・・・」
僕&香&悠 「ぷっ、あははははは。」
きっと僕たちはその時がくるまではずっと一緒なんだ。
笑ったり、喧嘩したり、泣いたり、色々あるんだろうけど。
きっとその時がくるまではずっと一緒なんだ。
pipipipipipipipipi!!!!!
目覚ましがけたたましく僕の睡眠を妨害してくる。
しかし今日から学校だ、起きないことには仕方がない。
僕「んんー良く寝た。」
身体を伸ばすことで覚醒を促す。
まだ眠気は残っているけど学校の準備をしないと。
僕「今日は始業式だけだから、なにも必要ないよな。」
今日は昼までで学校が終わりだ。
その後は、香と悠とで何しようかな?
僕「?・・・なんか変だな。」
準備をしていると違和感を感じる。
バランスが何か変だ。
タンタンタンタン
違和感を感じていると、誰かが階段を上がって来ている音がする。
足音は僕の部屋の前で止まり、一拍置いてから。
??「おはよー起きた泰?」
部屋に入ってきたのは誰かの面影を感じさせる女性だ。
だが、その女性に僕は心当たりがない。
僕「え?」
いまの僕の顔は、形容しがたいモノだろう。
朝の準備をしていると、知らない女性が僕の名前を呼びながら部屋に入ってきたのだ。
どんな表情をして居るのかはわからないが、おそらく変顔だろう。
??「ん、どーしたの泰?」
さっき僕は心当たりがないと言ったが、全くないわけではない。
しかし、心がその名を口にするのを否定する。
否定するが。口が勝手にその名を口にした。
僕「悠?」
悠?「むっ、奥さんのこと忘れたの?」
女性が眉毛を寄せながらやや不機嫌そうに聞いてきた。
僕「あっごめん、全然違って見えたから。」
本当の事だ、僕の知っている悠は化粧なんてしないし。
同期に比べたら早熟だけど中学生でしかないのだから。
悠?「んー、綺麗?」
僕「うん、凄く女性っぽいよ。」
悠?「あはは、照れるなぁ。相変わらず直球で言うよね?」
笑えない、何が起きているのかがわからない。
悠?「折角お仕事で長期休暇とれて地元に帰って来たんだから回ってきたら?」
僕「仕事?長期休暇?地元に帰って来た?」
どういうことだ?
僕は中学生だし、ココから出たことも数えれるくらいしかない。
思考が追いつかない。
悠?「泰、ほんとーに大丈夫?なんだか変だよ?」
悠?が心配そうにこちらをのぞき込んでくる。
僕「え?いや、何でもないよ、そうだね見て回ってくるよ。」
愛想笑いをしながら僕は家から飛び出していった。
悠?「あっ、泰!」
悠?の声を背中に受けながら。
僕「ハッハッハッハッハ」
心臓が凄い勢いで早鐘を打つ。
家を飛び出してから、あちこちを走り回った。
僕「どうなってんだこれ、おかしいよ。」
知っている所が無くなって、知らないところが有った。
僕「昨日までいつも通りだったじゃないか。」
知らないのに知っている気がする人に声をかけられた。
僕「夢?いや夢にしては現実味がある。」
何が何だか全然わからない。
否定したいのに見るモノが現実だと訴えかけてくる。
僕「他の所も見て回ろう。」
僕は手にした新聞をポケットに突っ込みながら更に動き出した。
現実を否定するために。
新聞の日付が記憶のある日から15年後を記していても。
僕「はぁ。どうなってるんだ。」
結局何も変わらなかった。
否定したくても、現実は現実でしかなかった。
それよりも、新しい情報が入ってくるたびに僕の空白だった15年間の記憶が掘り返されてくる。
しかしそれは、思い出ではなく記録としてできの悪いビデオを見ているようだった。
そこには嬉しいや、悲しいの感情は一切なかった。
僕「これじゃあ、僕だけが時間に取り残されたみたいじゃないか。」
昨日までの現実が本当は夢なんじゃあないのだろうか?
僕「本当にどうなってるんだよ。」
??「泰?」
途方に暮れる僕に声がかけられた。
僕「え?」
??「こんなところでどうしたんだい?」
涙が出てくる。
??「悠が心配してたよ?」
本当は、走り回ってたのは彼女を捜していたからだ。
??「駄目だよ?奥さんを心配させちゃあ。」
彼女は本当に困っている時にはいつも傍に居てくれ、相談にのってくれ、手助けしてくれる。
??「ん?」
だから、また話しを聞いてくれ、助けてくれ。
僕「香?」
香「はい、かおるさんですよ。」
中学生の頃よりも女性として成長し、なお一層頼もしげな香が僕に笑いかけていた。