決断
王子の部屋に向かうと、王子もまた、こちらへ歩いて来た。
アリエッタは小走りで王子の方へ走った。
その後ろ姿だけで王子のことがどれだけ好きかがわかる気がした。
王子はアリエッタにかすかに微笑み、そして次にワイアスらの方へ視線を移した。
「こちらの方々は?」
王子はアリエッタに尋ねた。
「今しがた私の命を助けていただいたのです。」
王子はそれを聞くと表情が変わった。
「命を…それはどういうことだ!」
「…私が『呪われた血』だからでしょう。」
アリエッタは悲しそうにうつむいた。
そこへマーチが口を挟んだ。
「当然のことでしょう。『呪われた血』とはそれほど忌み憎まれているのです。」
王子がマーチの髪に視線を移した。
「あなたも…」
「はい。『呪われた血』です。魔法でも決して隠すことはできません。あなたは人々の考えを甘く見たのです。王妃がいかに『呪われた血』を擁護しようとも、それほど人の偏見を変えることは難しいのです。」
王子はうなだれ黙った。
ワイアスは王子とアリエッタに尋ねた。
「あなたたちはこれからどうするのですか?」
王子はアリエッタを見つめた。
アリエッタは黙ったまま俯いていた。
「アリエッタと結婚する意志は変わりません。しかし、命を狙われた今となってはアリエッタの周りには信用できるものは少ないです。」
ワイアスは腕を組みながら言った。
「それならば、私たちがアリエッタ様を守りましょう。マーチは同じ『呪われた血』ですし信頼もおける者です。王子が私たちを信用されればですが…」
「…ありがとうございます。」
王子は頭を深々と下げた。
一方、アリエッタはワイアスの方を見て、こう言った。
「本当にありがとうございます。しかし、私は王子と結婚する気はございません。」