狙撃
アリエッタの話によると、アリエッタは王子から求婚されたらしい。王子はかなり強引な人で、アリエッタが王子に求婚の回答をする前に王と王妃の前で宣言してしまったらしい。もちろん王やその他の重臣は皆大反対をした。王妃ただ一人を除いて…王妃はひたすら沈黙を守っていた。
その話の途中、アリエッタは涙ながらに言った。
「身寄りのない孤児だった私を城へ引き取ってくださったのは王妃です。それから王子の世話を任されるようになって…今まで王妃には本当によくして頂きました。僭越ながら母親のように慕っております。その王妃を困らせるのが…私には一番辛いのです。」
マーチはアリエッタ姫に尋ねた。
「あなたは王子のことをどう思っているのです?」
「多少強引なところもありますが、私が生涯愛する人は彼以外にはおりません。」
「…もし、あなたが彼を愛しているのなら、私は身を引くのが一番よいと思います。」
「…」
「この先、起こることは想像に難くありません。あなたは殺され、王子は失脚するでしょう。王妃もそれがわかっているのでしょう。あなたは、『呪われた血』なのですから。」
マーチの言葉に、アリエッタはうつむき、そして静かに呟いた。
「わかっては…わかってはいるのです。やはり、その運命には逃れられないと…」
その時、外から空気が切裂けるような音がした。ワイアスがそれに気づき、アリエッタを抱きそれを躱した。すると、音が壁にぶつかると壁は何かに切り刻まれたようにズタズタになった。
これが、呪文だと分かり、ワイアスはマーチの方を見た。
マーチは直ちに念じ始めた。
呪文はアリエッタに向かっていくつも飛んできた。
アリエッタを抱いたまま、ワイアスは次々と躱していった。一つ、二つ、三つ…
マーチが目を開くと青い光が3人を包み、全ての呪文を外に弾いた。
さらにマーチは呪文唱え始めた。
すると、すべての壁が半透明になり中がすべて見えるようになった。
そおして後姿ではあるが、黒いローブを着て逃げている男を発見した。
呪文がやむとワイアスはアリエッタに言った。
「王子の発言であなたはもう狙われています。
まずは、王子の元へ向かいましょう…。」