鏡
「鏡よ聞いておくれ…アリエッタは次期王妃にふさわしいのだろうか?」
『ふさわしいわけがありません。あの美貌に人々が騙されているだけでございます。』
「しかし、初めて会った時も彼女は気品もあり素晴らしい女性であったけれど…」
『それは外見だけでございます。あの女の心の中では嫉妬の炎が燃え上がっておりましたとも。なんせあの女は下賤の出でありますから』
「…私はそんなこと一度たりとも気にしたことはありませんよ。」
『それは違います王妃様…あなたは気にしておいでです。今までは我慢しておられたのです。ですが、今回は王妃になるお方。やはりそれなりの身分でなくてはなりません。』
「しかし…」
『私が今までに間違ったことをおっしゃいましたか?あの女が子を産み、下賤な血が流れることを許せるでしょうか?いいえあなたは許せないでしょう。後で一番後悔するのはあなたなのですよ!』
「…なぜそんなことを言うのです。身分の差別を無くそうといったのは他ならぬお前じゃない」
『あの時は素晴らしい王妃になりたいと願っていたじゃありませんか。実際にあなたは私の助言で国中から愛される王妃になりました。しかし、今回は国民の反感を買い、あなたも後悔します。私にはその未来が見えるのです。』
「…」
『いいですか…私の言うとおりにしなさい。あなたはあの女が憎いわけではない。これからすることは全て鏡である私があなたにやらせることなのですから』