鳥の死骸
さらに奥に進むと、人の骸骨がなくなってきた。
それとは反対に辺りは禍々しい魔力が濃くなってきて二人の気分もだいぶ悪くなってきた。
「ワイアス様…周りから魔力がわき出てくるのを感じます。」
「ああ…中心に行くほど強くなってくるな…」
二人は慎重に進んだ。
しばらく進むと、道の真ん中に子供の死骸が転がっていた。
その死骸からは禍々しさは微塵も感じられなかった。
むしろ、何かを守っているような神聖さすら感じた。
しかし、死骸の手からはおびただしい魔力を放っていた。
その手は両手で何かを覆っていた。
ワイアスは慎重にその手を動かした。
すると、鳥の死骸が苦しんだ表情のまま固まっていた。
その鳥からは強烈な死臭と魔力を放っており、これがノメッドの求めていたものであるのは一目でわかった。
二人はこの死骸を持っていくのをためらった。
ノメッドに渡すと嫌な予感がする…本能的に二人はそう感じ取っていた。
いったんこの死骸のことを考えるのはやめて、『不魔石』の捜索を二人は始めた。
『不魔石』を見つけられないまでも、何か手掛かりがないかと思い捜索を始めた。
しかし、『不魔石』どころか魔力が帯びた石の一つさえここにはなかった。
二人は相談し、手ぶらで帰ることで合意しようとしていた。
すると、ワイアスがその死体の手からあるものを見つけた。
その手には神聖な魔力を放ったブレスレットがはめられていた。
マーチはそのブレスレットをよく見てみた。
すると、ブレスレットには何か文字が描かれていた。
「ワイアス様…このブレスレットどうします…?」
「いや…このままにしておこう。もしかしたら、この人の大切なものなのかもしれない…」
「ちょっと…おしいかもしれないですけどね。」
「まあ、しょうがないさ…死体から奪うわけにもいかないしな。」
二人は帰ろうとその死骸を離れると、突然その死骸が動き始めた。
二人は即座に身構えたが、その死骸からは殺意を感じなかった。
死骸はマーチの元に近づき、ブレスレットをしている手を差し出した。
「…ブレスレットくれるのかい?」
そう聞くと死骸はコクリと頷いた。
マーチは手から優しくブレスレットをとり、自分の手にはめた。
「ありがとう。」
マーチがそう言うと、死骸はニコリと笑っているような表情をしたように見えた。
そして、ブレスレットをはめた手に先ほどの禍々しい鳥の死体も乗せた。
「…これも持っていけばいいのかい?」
そうマーチが聞くと、その死骸はコクリと頷き、その場に倒れてそのまま動かなくなった。