盗賊
「ここだな…さっきの少年が言っていたのは。」
2人は少年の言うとおり、4ブロックほど東に進んだ。
先ほどの煌びやかな建物とは違い、薄暗くボロボロの長屋が至る所に立ち並んでいた。
道端には死骸などが転がっていて生臭いにおいが辺りを包んでいた。
その中で、2人は宿屋を見つけた。
外装は長屋の中でもかなりマシなほうだったが、部屋は今にも天井が落ちてきそうな部屋だった。
その夜、外から気配を感じてワイアスは目を覚ました。
なにやら囁くような声がしていた。
ワイアスはマーチを起こした。
そして、マーチは呪文を唱え始めた。
すると、壁が透き通って向こう側が見えた。
そこには、さっき会った少年が5、6人を引き連れてこちらを襲う準備をしていた。
ワイアスとマーチはため息をつき、窓から宿の外へ飛び降りた。
そしてマーチがその部屋に向かって呪文を唱えた。
少し時間が経ち少年たちは部屋に突入した。
すると少年たちは金縛りにあい、誰一人動けなくなった。
ワイアスとマーチは部屋の前まで戻り、ドアの前に立った。
少年たちが口ぐちに悪態をつくので、マーチの呪文で少年以外は黙らせた。
少年は悔しそうに言った。
「ちきしょう。騙しやがったな。さっきもらったあのお金がいつの間にか消えてたぞ。」
「一番最初に渡したお金は本物だよ。こちらにもあまり持ち合わせがないもんでね。だからといって盗賊まがいの行為をするのはダメだろ。」
「しょうがないだろ!ここではそうやってしか生きる道はないんだ。お金持ちになるしかこの町では生きては行けないんだ!」
よく見ると、少年以外の仲間もみんな子供ばっかりだった。
マーチはため息をつき、魔法を解き、少年たちに言った。
「今回は許してやる。しかし、もう2度と盗賊なんてするな。自分たちの境遇がどんなもんだって、人を傷つけるのはダメだ。」
少年はワイアスとマーチをしばらく見つめた。
そして、突然地に頭をつけて涙ながらに言った。
「…お願いです。助けて下さい。」