眠り姫
来世まで待つ…アリエッタのその答えに、ワイアスとマーチは猛反対した。
-今は悲しくても、その内にまたいい人に出会えるよ。-
-王子は君にそんなことは望んでいない。-
-この鏡が本当のことを言っているのかわからない。-
などなど、本当に必死に二人は説得していた。
彼らはまた彼女の幸せを願っていたからだ。
しかし、彼女はどんな説得にも応じなかった。
2人の説得を黙って聞いていた王妃が口を開いた。
「以前私はあなたに、『どんな答えでも応援する』と言いました。でも、私は結局何も分かっていなかった。一番大切であるはずの息子の幸せを願わずに、私の幸せを願ってしまった。…大好きなあなたと結婚して二人で仲良く暮らす、そんな夢を見てしまった。…だから今度は、今度だけは息子のことだけを考えた一人の母親として、あなたにお願いします。どうぞこの林檎を食べてください。まっすぐにあなただけを愛した息子に応えてやって下さい。」
アリエッタは王妃の涙交じりの声に対して言った。
「王妃様…私逃げていました。王子の想いから…王子が死んでから気づくなんて…ワイアス様、マーチ様、私は今の想いを忘れてずっと生きていたくはないのです。王子の望みなんて関係ないのです。鏡の言っていることが例え万分の1の可能性しかなくてもそれを信じたい。そしていつか王子に会えたら言いたいことがあるのです。」
そう最後に言って彼女は林檎を食べ、深い眠りについた。