息子の死
王子が死んだ直後、王妃は息子が殺されたとは思えない程、葬儀の準備をテキパキと指示した。
そして、膨大な仕事量をこなし、部屋へ戻ってきた。
まだ息子が死んだ実感が湧かない。
疲労のため、王妃はすぐに寝てしまった。
特に夢にうなされることもなかった。
朝いつものように目覚め、朝食に向かった。
豪華な食事用のテーブルには王子の分の料理も用意されていた。
「いつもの癖で息子の分まで用意していますよ。」
王妃は笑顔でそういった。
しかし、家政婦はそう言わせたことを申し訳ないと思ったのか凄く恐縮して謝罪した。
王は黙って料理を食べていた。
ああ、これからはこの人とずっと2人なのか・・・
もう息子の笑顔も泣き顔も照れた顔も怒った顔も見れないのか・・・
そんなことを考えながら王妃は食事を食べた。
王妃は再び部屋へ戻った。
葬儀までは少し時間があった。
生きていれば、今日もまた私を説得しに来たのだろう。
息子は自分がやりたいことを素直に言わない所があった。
よく見れば協調性があり、悪く見れば自主性がない。
そんな息子が素晴らしい王になれるだろうか・・・王妃はずっと不安だった。
しかし、周りの反対を押し切って結婚を通そうとする姿に王妃は安心していた。
息子ならば素晴らしい王になれるし、アリエッタと共に幸せになってくれると。
いつも息子はあと10分ぐらいしたらこの部屋に来た。
王に反対するよう迫られていたため、ずっと王妃も反対を続けていた。
王子の決意がどれだけ強いかも見たかった。
今日はもう許そうと思っていた。「私はあなたを達二人を応援します」と言ってやりたかった。
言う前に死んでしまった・・・
不意に、心に穴が空き、風がそこから吹き抜けているように感じた。
どうにかそれを抑えようとしたが、どうしようもなかった。
息子はもういない
どうしようもないその事実を悟った瞬間、虚無感、悲しみが一気に襲ってきた。
王妃はその場で泣き崩れた。
しかし、泣いても泣いても心にあいた穴はどうしようもなく王妃を悲しい気持ちにさせた。
その時、鏡から声がした。
『ほらほらね。今、後悔してるでしょう?私の言うことを聞かなかったからですよ。あの時、アリエッタを始末してれば王子は殺されずにすんだのに・・・』
「どーすればよいのです?悲しくて哀しくて堪らないのです。ああ・・・どーすれば・・・」
『・・・その悲しみは私にはどうしようもありません。それが愛する人の死なのですから。しかし、王子が再び幸せになれる方法なら私には分かりますよ。』
「・・・どーすればよいのです?」
「まず、アリエッタを私の前に連れて来なさい。そうすれば方法を教えましょう。」