護衛
マーチは宿の廊下で先ほどの出来事を思い返していた。
王子は結婚を断ったアリエッタを説得し続けたが、彼女は頑として首を縦に振らなかった。
「あなたのことは愛しています。…でも、私たちは一緒にはなれませんね。」
王子もこのアリエッタの涙ながらの言葉を聞き、とうとう口を閉ざした。
城の中は危険なので、王子はアリエッタにも宿を手配した。
そして、マーチとワイアスに護衛を改めて頼んだ。
アリエッタは最初護衛を断っていたが、王子は結婚をしない条件と引き換えにそれを承知させた。
「私はまだ彼女との結婚をあきらめていません。まずは皆を説得しなければ。」
王子はそう言って王の元へ向かってった。
マーチは自分の緑色の髪を見ていた。
この髪のせいであきらめなければいけなかったことがどれほどあったろう…
アリエッタは愛する人に愛していると言われている。
それは人生で最高の言葉なのに、彼女にとってその言葉は…
マーチはそのことを考えると胸が痛んだ。
夜中、ワイアスが護衛を交代するために部屋から出てきた。
「ワイアス様…」
マーチがそう話しかけると、ワイアスが言った。
「俺たちが彼女たちのためにできることは護衛以外にはないよ。だからもう悩むな。お前が結婚に反対したことも後悔することはないんだ。」
マーチはそれを聞くと、いっそう肩を落とし部屋へ戻っていった。
そのあとしばらくして、足音がワイアスの元に近づいてきた。
ワイアスは目を凝らすが、足音だけがだんだんと近づいてきた。
「マーチ!!」
ワイアスが大声をだした。
そして、マーチが部屋から飛び出てきたのと同時に足音の場所から人が出てきた。
「驚かしてしまいましたね。」
そう言って姿を現した人物は王妃クーダだった。