第六十話:ダンジョンへ
朝食を食べた後、捕まえた泥棒達を衛兵の詰所に持っていき、少しばかりの金銭を得る。
指名手配されているような大物ならそれなりに賞金は高いようだけど、そうではない初犯の者や軽犯罪によって捕まえた場合、貰える金額はかなり少ない。それどころか、貰えないこともある。
まあ、それらを捕まえるのは本来町を警備する衛兵の仕事だし、ただのボランティアで捕まえたところで「あ、そうですか」で済まされることも多い。
だから、襲われた場合は面倒をなくすために普通に殺してしまうことも多く、こうして生かした状態で詰所に持ってくるのは稀なのだそうだ。
そう考えると、ニクスはよく殺さなかったと思う。
昨日売った素材の値段に比べれば報酬は微々たるものだし、これからダンジョンに挑もうというなら素材はそれなりに手に入るはずだから、いくら家賃のためにお金が必要とは言っても持っていく理由は薄そうだけど。
「人の中に紛れる場合、町の衛兵は貴族の次に面倒くさい存在だ。だから、少しでも印象をよくしておけば後で面倒事が起こった時に見逃される可能性が高い。最も、長期滞在しないのであればこんなことする必要はないのだがな」
ニクスによるとそう言うことらしい。
なるほど、確かに衛兵にいい印象を残しておけば多少のことなら見逃される可能性もある。
面倒事を起こさないのが一番ではあるけど、そういうものは気を付けていても向こうからやってくるものだし、対策しておくことに越したことはないだろう。
これを怠って捕まるなんてことになった場合、うまく逃げ出せたとしても指名手配される可能性もあるし、保険をかけておくのは大切なのか。
ニクスも結構考えているようである。俺なんかよりよっぽど人間社会に溶け込んでいるよね。
「今日はダンジョンですか?」
「そうだ。食料を買ってからダンジョンへと潜るぞ」
今日はいよいよダンジョンへ挑戦するらしい。
詳しくは知らないのだけど、ダンジョンには階層のようなものがあるらしく、この町にあるダンジョンは全30階層あるらしい。
どうやってその階層とやらを判断しているのかは知らないけど、仮に30階建ての建物と同等と考えるとかなりの広さだよね。
まあ、このダンジョンは登っていくんじゃなくて降りていくみたいだけど。
「まずは経験を積むことが重要だ。とにかく魔物を倒せ。その中で立ち回りを考えろ。失敗は気にするな。いざとなれば白竜のが助けに入るだろう。いいな?」
「は、はい!」
それにしても、ぶっつけ本番でダンジョンに挑むって結構無謀なような?
何となくだけど、ダンジョンって深くに潜れば潜るほど脱出が困難になっていきそうだし、それを考えるとある程度実力がないとかなり難しい気がする。
確かに、俺やニクスがいるから最悪フェルを抱えて脱出することはできるだろうけど、相手の強さによっては一撃で致命傷を負う可能性もあるし、きちんと強さを把握できていないとかなり怖そう。
大丈夫かなぁ……。
「ルミエール、フォローお願いね」
「うん」
でもまあ、一応すでに基本はできているわけだし、後は経験がものを言うというのも事実。
多少相手が強くても、それを倒せるように立ち回りを考えることも重要だし、これは必要なことか。
そう納得して、ダンジョンの入口へと向かう。
途中で食料を買いこんだが、アイテムボックスがかなり便利だ。
これのいいところは、イメージさえできればいくらでも空間を拡張できることと、入れたものの重さを全く感じないところだろう。
かなり重い水の入った樽も、アイテムボックスに入れてしまえば全然嵩張らない。
これ商人とかが使ったら相当強いだろうなぁ。アイテムボックスって他の人でも普通に使えるんだろうか?
適性が必要らしいからみんな使えるわけではないと思うけど、使えるならかなり重宝されそう。
「ここだな」
「おー」
ダンジョンの入り口に辿り着くと、そこはかなり賑わっていた。
そこら中に露店が立ち並び、客引きの声が飛び交っている。
どうやらダンジョンに必要なアイテムなどを売っているようだ。そのほかにも、ポーターと呼ばれるいわゆる荷運び人を貸し出すサービスもあるらしい。
確かに、ダンジョン内で魔物を倒してもその素材を持ち帰るにはそれを運ぶ人が必要だろうし、そういう人材もいるのか。
なんか面白いな。ちょっとワクワクしてくる。
「行くぞ」
思わず見とれてしまうが、ニクスはそんなものには目もくれず、まっすぐに入口へと向かっていく。
俺もフェルも慌ててそれを追いかけていくが、すぐに足を止めることになった。
ニクスの目の前に門番らしき兵士が立ちはだかったのだ。
「なんだ貴様ら」
「ダンジョンに挑戦の冒険者ですか? それでしたら、そちらの受付で入場料を払ってください」
そう言って、ある一方を指さす。
そこには露店と違ってきちんとした造りの建物があり、数人の人物が並んでいるのが見えた。
なるほど、確かにダンジョンでは無限に資源が手に入るのだし、これでタダで入場できてしまうと簡単に稼ぐことができてしまう。
もちろん、魔物を相手にするわけだから命の危険はあるだろうけど、それを抜きにしても挑む人はたくさんいそうだ。
「それと、入場できるのは冒険者と国から許可を得た者のみです。そちらのお嬢さんは恐らく入場できないかと思いますよ」
そう言って俺のことを見る門番。
一般人は入れないってことか。まあ、農民とかが挑んでも死ぬだけだろうし当然の措置と言えばそうだけど、なんで俺はだめなんだろう?
あれかな、幼すぎるってことなのかな。
見た目的には5歳くらいだもんね。冒険者は10歳以上でないとなれないらしいし、国がこんな子供に許可を出すとも思えないから入れない、ということなんだろう。
え、どうするのこれ?
「少し見ない間に面倒なシステムになったものだな。仕方がない、行くぞ」
「あ、うん」
ニクスは門番の言葉にため息をつきながらも、大人しく受付へと向かう。
まあ、あそこで強行突破したらそれこそ衛兵に突き出されそうだし、ここは従うほかないか。
でも、俺のことはどうするんだろう? 今から冒険者登録をしようにもこの見た目ではできないだろうし、許可を得るにも時間がかかりそうだけど。
最悪留守番かな? フェルのことは心配ではあるけど、ニクスなら俺がきつく言って置けばきちんと守ってくれそうだし、俺がいなくても大丈夫だとは思うけど。
「どうする?」
「安心しろ。なんとかしてやる」
何か作戦でもあるんだろうか? 一応、ニクスは後々面倒になる可能性があるならきちんとルールは守るようだから強引に突破ということはしないと思うけど、何か心配である。
大丈夫かなぁ……。
俺は少し不安に思いつつも、ニクスの後についていった。
感想ありがとうございます。




