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第五十一話:激突

 エドワードとメルセウスの号令によって兵士と冒険者がぶつかり合う。

 兵士達の装備は結構いいもののようで、冒険者達が持つ剣などと比べると結構強そうに見える。

 恐らく、俺が暴れた時のための保険だったんだろう。どちらかというと、対魔物用の装備のようだ。

 対して、冒険者達の装備もまた魔物用のものが多い。そりゃそうだろう、冒険者は基本的に魔物を相手にして金を稼いでいるのだから。

 きちんとした訓練を受けた兵士と、我流の冒険者という違いはあるけど、戦力的にはそこまで差はないように思える。

 だから、この勝負の命運を握るのは俺だ。

 俺がうまく立ち回れば冒険者達を勝たせることができるだろう。ただ、今この場面になっても俺は少し迷っていた。

 元々、俺が名付けを受け入れたのは、フェルが助かる可能性が高そうだったからというのもあるけど、無駄な怪我人を出さないためでもある。

 俺が本気を出したら、人間なんてそれこそ吹けば飛ぶような存在だ。俺が戦えば、怪我人はもちろん、もしかしたら死人だって出てしまうかもしれない。

 いくら相手がフェルを人質に取った畜生だったとしても、やはり元人間として人を殺すのは抵抗があった。

 それに、エドワードを始めとした兵士達を殺してしまうならまだしも、下手をしたら冒険者まで巻き込んでしまう可能性もある。

 俺がちょっと方向転換をするだけでも、尻尾によって多くの人が巻き込まれるだろう。

 さらに言うなら、フェルの存在もある。フェルも自力で戦う術を持ってはいるけど、今この場においてはそれを発揮してもらうわけにもいかない。

 フェルを守りながら、敵も攻撃する。下手に動けず、翼で吹き飛ばしてしまうから飛べもしないと考えると、かなり無茶な難題である。

 さて、どう動いたものか。


「ルミエール……」


『大丈夫だよ。フェルは俺が守るから』


 俺はフェルのことを抱き寄せ、なるべく近くに置く。

 とても不安そうだ。早く安心させてあげないと。

 ひとまず、行動を起こそう。話はそれからだ。

 そう思い、俺は兵士達に向かって手を向ける。そして、頭の中でイメージを膨らませ、それを強く意識した。

 次の瞬間、俺の手の前に水球がいくつも出来上がり、兵士達に向かって飛んでいく。

 下手に動けない以上、俺に残された選択肢は魔法で攻撃することだけだった。

 まあ、魔法だって制御に慣れてきたとは言っても、結構な威力があるから下手したら殺してしまうかもしれないけど、相手は鎧を着こんでいるし、薄い部分に当たらなければそうそう死なないと信じたい。

 放たれた水球によって兵士達は足止めを余儀なくされる。

 直撃した者は鎧を砕かれ、それを見た他の兵士達の足が止まったのだ。

 やっぱり威力が高すぎる。もう少し弱くしたいけど、これでも結構加減してるんだけどな。


「ええい、何をしているのです! たかが冒険者でしょう、それでもベランジェ様直属の兵士ですか!」


 一向に進まない戦況。それどころか、だんだんと押され始めている現状に、エドワードが怒鳴り散らす。

 たかが冒険者って、冒険者の地位ってそんなに低いんだろうか?

 確かに、冒険者って誰でもなれるイメージがあるし、正規の兵士と比べれば確かに地位的には低そうではあるけど。

 でも、冒険者がいるからこそ町に迫る魔物を倒せるわけだし、なくてはならない存在でもあると思うんだよね。

 そりゃ、兵士が魔物退治も請け負うというのならそれでもいいのかもしれないけど、町の警備と防衛を両方こなすって大変そうだ。

 対魔物か対人かというのもあるだろうし、やっぱり住み分けは大事だと思う。

 まあ、それはそれとして。

 相手の指揮官は一応エドワードだろう。となると、エドワードさえ黙らせれば兵士達も止まるかな?

 そうと決まれば……。


「さっさと黙らせ……ぶぎゃっ!?」


 俺は風を発生させ、エドワードを大きく煽る。

 バランスを崩したエドワードはその場で倒れ込み、無様な声を上げた。

 確かにエドワードは兵士達の後方にいて普通には狙えないけど、何も俺の魔法は直線状にしか放てないわけではない。見えてさえいれば、後方をピンポイントで狙うことだってできるのだ。

 続けざまに水球を近くに次々と落す。

 鎧を砕くほどの威力がある水球は容赦なく石畳を破壊し、その破裂音を轟かせた。


「ひぃ!?」


 ようやく狙われていることに気が付いたのか、エドワードは慌てて立ち上がる。

 しばらく視線をさまよわせていたが、俺が手に水球を出現させるとそれをやったのが俺だと気が付いたようだ。


「な、なにが大人しいドラゴンだ! やはり魔物は魔物なのだな! 貴様は必ず討伐してやる! 覚えておけ!」


 そう言って、エドワードは一目散に走り去っていった。

 最後に捨て台詞とはなんとも悪役らしい。

 これで俺も晴れて討伐リストに加えられたというわけか。まあ、仕方ないよね。

 討伐リストを決めているのが領主である以上、領主に逆らうことはイコール討伐リストに加えられることを意味する。

 この場で大人しく従ったとしても、どのみちいつかは敵対しなくてはならなかっただろうし、それが少し早まっただけのことだ。

 それに何より、フェルがあの場で俺の名前を呼んでくれたのに、そのまま去るなんてことできなかったしね。


「終わったか……」


 エドワードが逃げたのを見て、他の兵士達も次々に戦うのをやめ、走り去っていった。

 一応、この戦闘によって倒れた兵士達も引きずっていったので、多少は仲間意識のようなものはあったらしい。

 まあ、どうでもいいことだけど。

 こちらの被害もそれなりだ。流石に、正規の兵士を相手に戦ったとなれば、我流の冒険者では少し分が悪かったらしい。何人かが怪我を負っていた。

 だが、死んでさえいなければ俺の治癒魔法でどうとでもなる。すぐさま治療すると、皆俺にお礼を言ってくれた。


「白竜殿。すまなかった。こんなことになってしまって……」


『メルセウスは悪くないでしょ。仕方なかったことだよ』


 メルセウスだって頑張っていたことだろう。フェルを助けるために色々と奔走していたはずだ。

 だけど、相手が悪すぎた。ただそれだけだ。

 俺のことを討伐リストから除外した一人としては、こんな結果になってしまったことは心苦しいだろうが、別に怒ってはいない。

 討伐隊が組まれるというなら逃げてしまえばいいだけの話だしね。

 ただ、残念なのは結局フェルと離れなければならないということか。

 フェルを守ることが俺の使命だと思っているけど、俺がこのままこの町に居座ったら確実に討伐隊が来るだろう。

 そうなれば、フェルと会っている時にでも襲われたらフェルを危険に晒してしまうだろうし、町だって討伐隊に協力しなかったら色々言われることだろう。

 そもそも、俺とフェルが今までのように頻繁に会う関係になってしまっていたら、再びフェルも狙われてしまう。

 今回はただ人質にされただけだったけど、もしかしたら今度は殺されてしまうかもしれない。

 そう考えると、これ以上フェルと一緒にいることは難しいだろうなと思った。

 俺はこのまま住処に引きこもる。いや、もしかしたあの住処すら捨てて別の場所に移動した方がいいかもしれない。

 せっかく人化を覚えたのにフェルと離れなければいけないのは残念だけど、こうなってしまった以上は諦めるしかない。

 せめて、最後は笑顔で別れられたらいいなと、そう思った。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
どうなるか……
従属させられて悪のかぎりを尽くすみたいなどろどろの展開にならなくてよかった。 でも別れないで済む展開になってほしいところだ。
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