表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/276

第二百五十話:次なる目的地

 その後、俺はフェルと合流し、市場を覗いてみることにした。

 ニクスからは、すぐにでも出発すると言われているが、今日一日くらいは、まだ許されるだろう。

 宿屋を取っていないところを見ると、本当に今日一日だけになりそうだけど、まあ、それでも問題はない。

 まだ昼頃だしね。


「魚料理もこれで食べ収めかな」


「また、くればいい」


「そうだね。港町はここだけじゃないしね」


 これから、どこに行くかに関しては、ある程度任されている。

 どこかのタイミングで、模擬戦をしなければならないというのは決定事項だけど、その後どこに向かうのかは、ニクスも決めかねているようだ。

 大きな目標を考えるなら、フェルの修行ができる場所、ということになるんだろうけど、正直、フェルの野生としての知識は、すでにそこそこあるんだよね。

 狩りの仕方、寝床に見つけ方など、大体のことは教わってきたし、実戦を用いて、体験もしてきた。

 後は慣れるかどうかの段階であり、それこそ、どこかに定住して、ってやっていくのがいいと思う。

 俺としても、ニクスやフェルと共に暮らせる場所が見つかるのなら、それでいいと思っているし、目下の目標は、住処探しと言ったところだろうか。

 でも、俺には密かに考えている目標があり、それが、世界を見て回ってみたいというもの。

 せっかく、労働から解放されて、しかもどこへでも飛び回れる翼を手に入れたのだから、見たことのないものを見て回りたいという欲がある。

 今のところ、俺もフェルも、幻獣としての年はまだまだ幼い部類に入る。であるなら、そんな小さなうちから引きこもってしまうのも、もったいないだろう。

 ニクスのように、世界の様々な場所を回り、いろんなものを見聞きしたい。それくらいの夢を持っても、罰は当たらないと思う。

 だからこそ、住処探しはまだ先にしたいのだ。

 とはいえ、世界に何があるかを具体的に知っているわけではないし、候補地が少ない。

 ニクスから、そういうことを聞ければいいんだけどね。


「次行くとしたら、どこがいい?」


「うーん、やま?」


「山? 変なところに行きたがるんだね」


 割と適当に言ったけど、海と来たら、山じゃない?

 まあ、海に行ったとは言っても、ビーチで遊んだりしたわけではないから、行ったというのは微妙かもしれないけど、広大な山々の景色を見てみたいというのはある。

 この世界で、最も高い山ってどこなんだろう?


「後でニクスさんに聞いてみようか」


「うん」


 その後、いくつかのものを買い込み、ニクスとの待ち合わせ場所へと向かう。

 買ったのは、魚をいくつかと、香辛料の類。

 特に、香辛料って、他のところだと割と高いらしくて、ここなら結構お手頃な値段で買えるから、ちょうどいいと思ったようだ。

 野生での生活には必要ないかもしれないけど、町で生活する分には、こういうものの扱いにも慣れておきたいよね。

 ニクスも、フェルの料理には一目置いているみたいだし、この調子で篭絡していけば、少しは町の近くに住めるかもしれないし。


「それで、山だったか?」


「うん、けしき、いいばしょ、いい」


「そういうものは、精霊の方が詳しいだろう。おい、そこにいるんだろう? 出てこい」


「むぅ、驚かせようと思ってたのに……」


 ニクスが呼び掛けると、物陰から子供のような人物が現れた。

 そう、海を渡る際に別れた、ニーシャさんである。

 まさかここまで早い再会になるとは思っていなかったが、元気そうで何よりだ。


「もっとかかると思っていたのに、案外すぐに戻ってきたから、驚かそうと思ってたのに、ニクスさんは空気が読めないのね」


「ぬかせ。貴様の気配くらい、白竜のなら気づいていただろう」


「え? ま、まあ、うん、そう」


 正直全然気にしてなかったけど、でも、ニーシャさんが近くにいるというのは何となくわかっていた。

 別れからまだ一週間も経ってないわけだし、全然久しぶりって感じもしないけど、また会えて嬉しいね。


「ふぅ、まあいいわ。それで、山だったかしら? それなら、いい場所を知ってるわ」


「ほんと?」


「ええ。ここから内陸の方に行くんだけどね」


 ニーシャさんが言うには、内陸の方に少し行くと、とある山があるらしい。

 詳しいことは知らないけれど、どうやらそこには神聖な滝があるらしく、その滝に打たれた者は、新たな武の極致に至る、と言われているらしい。

 滝に打たれるって、修行でもするんだろうか? なんとも興味深い話である。


「その話、どこかで聞いたことがあるな。確か、気を開くための瞑想の場とか言う」


「き?」


「魔力と似たようなものだ。人間どもは、身体強化魔法の新たな体系として、気を用いることで、体の強化をするところもあるらしい」


「へぇ」


 そういうものもあるんだね。

 となると、やっぱりそこは修行の場ってことなんだろうか。

 見てみたい気もするけど、神聖な場所っぽいし、入ったら怒られてしまうだろうか?


「安心しろ、その場所はすでに何年か前に放棄されている。今は無人のはずだ」


「そうなんだ」


 それなら安心、なのかな?

 いったいなぜ放棄されることになったのかが気になるけど、俺が見たいのは、綺麗な景色ってだけだし、最悪遠くから見るだけでも構わない。

 まあ、気を解放するというのが、どういうものかを見てみたいというのはあるけれど、どのみち人間のために編み出されたものっぽいし、俺達には無用の長物だろう。


「修行の場だというならちょうどいい。そこで貴様らと模擬戦をするとしよう」


「ほ、ほんと、やるの?」


「嫌なのか?」


「い、いや、ではないけど……」


 正直やりたくないけど、ここで嫌と言ったら、余計に怒られそうである。

 まあ、自分の実力を把握するいい機会と思うことにしよう。


「決まりみたいだね。案内はするから、ついてきてね」


「うん、よろしく、にーしゃさん」


 行先も決まったので、町から離れ、元の姿に戻り、空へと飛び立つ。

 かつて、修行の場として開かれていた山か。ちょっとワクワクするね。

 模擬戦をしたくないという不安と、新しい場所を見れるという期待を持ちながら、ニーシャさんを先導に飛び続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ