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第二百四十七話:アーリヤとの関係

「船長ですか……それなら確か、いたはずです」


「ほんと?」


「ええ。少しお待ちください」


 そう言って、ナインディさんは仲間に声をかけていく。

 しばらくして、一人の男がやってきた。

 この人が、船長?


「昔船長をやっていた身だが、私に何か?」


「ききたいこと、ある」


「私に答えられることでしたら、何なりと」


 俺は、漁師の男から聞いた話や、アレム君達のことを話す。

 すると、その男は昔を懐かしむように目を細めた後、頷いた。


「ええ、確かにそれは私のことでしょう。そうか、あいつや家族は、まだ元気にやってるんですね」


「うん」


「それを聞けただけでも、心が洗われるようです。伝えてくださって、ありがとうございます」


 船長さんは、残してきた人達のことを、とても案じていたようだ。

 特に、共に一度は生き延びて、その後、海の藻屑となった仲間のことは、ここにいないこともあり、とても心配していたようである。

 確かに、ここにいないということは、自分だけ助かったと感じてもおかしくないもんね。

 お互いに、自分だけ助かったと思っていたって言うのは、ちょっとしたすれ違いだけど、ようやく繋がった感じがする。


「しかし、私がレヴィア様を信仰していない愚か者ですか……こうして助けられた今、その存在を疑うことはないのですが」


「まちのひと、みんないってた」


「まあ、あの町は昔からそうですからね。帰ってこれなかったということは、そういうこと。私には、それを否定することもできません」


 海に敬意を払わない者は、罰を与えられる。それは一部は事実だけど、単純に運が悪くて帰れなかった者もいる。

 そんな人達もひとくくりにして、愚か者呼ばわりするのは、なんだかもやもやするけど、レヴィアさんも、積極的に訂正しようとはしていないみたいだし、そこまで干渉する気はないのかもしれない。

 俺としては、名誉を守ってあげたいと思うけどね。

 でも、ここで手を出すのは、レヴィアさんにも失礼な気がするし、難しいところだ。


「しかし、家族が困っているというのは、見過ごせません。せめて、私の無事を伝えられたらいいのですが……」


「わたし、つたえようか?」


「よいのですか? それでしたら、こちらを渡してもらえないでしょうか」


 そう言って、船長さんは懐から貝殻が通されたネックレスを取り出す。

 アクセサリーとしては、随分と簡素で、手作り感があるけれど、これが思い出の品なんだろうか?


「以前、息子から貰ったものです。これを渡せば、少しは安心することでしょう」


「わかった。かならず、わたす」


「ありがとうございます」


 さて、これは重要な役目を貰ったものだ。

 いずれはあの大陸に帰るつもりだったとはいえ、これは早急に戻る必要がありそうだね。

 貴重な話を聞けたことに礼を言い、そろそろニクスの話も終わったかと思って、一階へと戻る。

 レヴィアさんとニクスは、なにやら楽しげに話していたけど、こちらの存在に気が付くと、すぐにいつもの表情に戻った。


『来たか。話は終わったぞ』


「なに、はなしてた?」


『貴様は知らなくてもいいことだ』


『でも、リト。少しくらいは話しておいた方がいいんじゃないかい?』


『ふむ……まあ、少しくらいはいいだろう』


 こっちにこいというので、俺はニクスの下に近寄る。

 二人とも、こちらをまじまじと見つめてきて、少し恥ずかしいんだけど、一体何なんだろうか?


『以前、例の村で話したな。遥か昔、月の女神とも称された、幻獣がいたことを』


『えっと、確か、アーリヤだっけ?』


『そうだ。奴の献身は、多くの人々を助けたが、その優秀さのあまり、大きな戦争へと発展し、その責任を感じたアーリヤは、自ら命を絶った』


 あの時の村では、アーリヤの像が建てられており、その戦争の戒めとして祭られていた。

 だが、現在の人々は、そんな大昔のことはすっかり忘れてしまい、アーリヤのことを覚えているのは、古くから存在する幻獣くらいなものだという。

 なんとも悲しい話だけど、人間は、忘れる生き物だ。そうなっても仕方ないとは思う。


『アーリヤはすでにこの世にいない。しかし、ここにきて、その特徴を持つ者が現れたのだ』


『特徴って?』


『アーリヤは、ほぼすべての属性を操ることができるという特徴を持っていた。それは、貴様にも覚えがあるだろう?』


『俺のこと?』


『そうだ。どういうわけか、貴様はアーリヤにしか扱えなかった、ほぼすべての属性を操るという特徴を持っている。それに何より、貴様はアーリヤの像を見た時、どこか懐かしいと感じたと言っていたな。それはつまり、貴様はアーリヤとは無関係ではないかもしれないということだ』


 確かに、そう言われたらそうかもしれない。

 本来、魔法の属性というのは、基本的に一つしか扱うことができず、扱えたとしても二つとかが限界のはずなのである。

 それが、闇属性以外のすべてを扱えるということは、俺にもアーリヤの特徴が備わっているということ。

 でも、仮に関係があるとして、どんな関係だって言うのだろうか?

 俺は、アーリヤについて何も知らない。

 ニクスや村の人達に聞いた程度の情報なら知っているけど、正確にどんな人物だったのかを知る術はない。

 そんな俺が、何の関係があるというのだろう?


『我は、何者かが、再びアーリヤをこの世に呼び戻そうとしているのではないかと考えている。貴様は、そのために呼ばれたのではないかとな』


『そんなことできるの?』


『知らん。だが、特徴が一致している以上、その可能性もあるということだ。貴様がアーリヤの生まれ変わりなのか、それとも関係者なのかはわからんが、もし、再びアーリヤをこの世に呼び戻すということになれば、世界はまた、混乱に陥るだろう』


 かつて、アーリヤを巡って戦争が起きたように、俺を巡って戦争が起こるかもしれないってことか。

 でも、今では幻獣信仰もすっかり廃れてしまっているし、同じにはならない気もするけどね。

 可能性があるのは確かだから、楽観視はできないけど、どうなるかな。


『今はまだ可能性の段階に過ぎない。こうして貴様をレヴィアに会わせたのは、レヴィアがアーリヤと親しい間柄にあったからだ』


『君を一目見て、何となく懐かしいと感じたのは、間違いではなかったってことだね。君は間違いなくアーリヤの関係者だろう。それがこの先どう転ぶかは、僕でも予測はできないけどね』


『俺は、どうすればいいの?』


『今のところ、貴様に要求することはない。ただ、そう言う可能性があるということは、胸に留め置いておけ』


 うーん、なんだか壮大な話になって来たな。

 世界を揺るがすような幻獣の生まれ変わりかもしれないと考えると、なんだかドキドキしてくる。

 でも、俺は元はただの社畜だったはずなんだけどな。仮に、関係者だったとして、なぜわざわざ別の世界の人間の魂を呼び寄せたんだろうか?

 よくわからないけど、俺が原因で、戦争が起こることは絶対に避けたい。

 どうすればいいかはわからないけど、気をつけないとね。

 俺は、ニクスの言葉を頭の中で反芻していた。

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