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第二百四十一話:病気の原因

 見た限り、高い熱にうなされているようである。

 風邪か何か? それとも、毒にでも侵されたのだろうか。

 この世界の医療は、魔法に頼っている部分が多く、場所によっては薬師自体いないところもあるらしい。

 もちろん、魔法での治療は高額なことも多く、貧しい人にとっては手が出しづらいものだから、薬による治療も一般的ではあるらしいんだけど、どうしても、手間などを考えても、魔法に勝てる部分は少ない。

 だからこそ、発展している町などでは、簡単な痛み止めや、冒険者向けのポーションなど以外は、医者にかからないと手に入れるのは難しく、大きな病気にかかってしまうと、なかなか治すのが難しいってことになるみたい。

 俺としては、いくら魔法が優秀とは言っても、薬を全くなくして生活するなんて無理だと思うけどね。

 そもそも、それだと治療ができる魔術師の権力がとんでもないことになりそうだし、発展している町だからこそ、安価に入手できる薬は必要だと思う。

 まあ、この町に関しては、貿易によって薬なども色々入ってくるようだから、まだましな方なのかもしれないけど、他の町だとそうでもないと考えると、ちょっと理解できない考え方だ。

 こうして、お金に困って治療できない人がいると思うと、ちょっと可哀そうだよね。


「どうでしょう? 治りそうですか?」


「ん、ちょっと、まって」


 流石に、診ただけではどんな病気なのかはわからない。

 しかし、俺の治癒魔法なら、そんなの関係なしに治すことができる。

 病気を治すというよりは、体を正常な状態に戻すと言った方が正しいかもしれない。

 俺は軽く手をかざし、治癒魔法をかける。

 相変わらず、制御の利かない治癒魔法は、まばゆい光を放ちながら、体に吸い込まれていった。


「う、ん……」


「クレア! 大丈夫か!?」


 アレム君が、少女に縋りつく。

 治癒魔法は正常にかかったはず。恐らく、もう治ったことだろう。

 クレアと呼ばれた少女は、ゆっくりと起き上がって自分の体を見回している。

 まだ汗はかいているようだけど、熱は引いただろうか?


「あれ、苦しくない……」


「な、治ったのか?」


「なおった、はず」


 念のため、熱を測ってみたが、きちんと引いている様子だった。

 外傷はないし、何より、先ほどまで苦しげに呻いていたのが嘘のようにピンピンしているので、うまくいったとみていいだろう。

 アレム君は、ほっと息をついて、クレアちゃんに抱き着いていた。

 うん、無事で何よりである。


「本当に治った……? まさか、これほどとは……」


「これで、だいじょぶ」


「ああ、ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」


 母親も、クレアちゃんの様子を見て安堵したのか、何度もこちらに頭を下げていた。

 それと同時に、少し申し訳なさそうな顔をしている。

 恐らく、本当に治るとは思っていなかったんだろう。俺が出しゃばった時点で、子供の遊びかと思っていたに違いない。

 それでも診せてくれたのは、アレム君が必死だったというのが大きいだろうね。

 ダメ元でも、試してみなければわからない。だからこそ、通してくれた。

 しかし、治ってしまったら、対価を払わなければならない。

 その対価を払えないからこそ、苦しんでいたのに、病気が治ってしまったら、どうすればいいんだろうとか思っているんだろう。


「あの、お代は……」


「しんぱい、ない」


 俺は、アレム君に近づく。

 ずっと大事そうに持っていた花の入った袋を手に取り、中に入った花を取り出した。

 この花、ずっと気になってたんだよね。

 夜にしか咲かない貴重な花らしいけど、手折られたせいなのか、今は昼間なのに花を咲かせている。

 すでに結構な時間が経っているにも拘らず、未だにみずみずしさを失っていないその花は、まるで宝石のようだ。

 これならば、俺のコレクションに加えても申し分ない。


「これ、ちょうだい?」


「この花を? 別にいいけど、こんなのでいいの?」


「うん。このはな、きれい」


「……ありがとう」


 さて、これで正当な対価も貰ったし、後腐れはないだろう。

 それにしても、結局あの病気は何だったんだろうか?

 俺は治癒魔法は得意だけど、病気に詳しいわけではない。

 ただの風邪だっていうならそれでいいけど、何か原因があるなら、それを取り除いておかないと、また同じことが起こる気がする。

 何か心当たりはないんだろうか?


「特に心当たりは……。先日、アレムと二人で遊びに行って、帰ってきたらこの調子でしたから、外で何かあったのかも」


「あれむ?」


「えっと、あの日は、その……海岸の方に行ってたんだ。港の方は整備されてるけど、海岸の方は、いろんなものが流れ着くから、何か使えそうなものないかって探してたんだよ」


 海岸に流れ着くものの中には、まだ使えるものもたまにあるらしい。

 そう言ったものを換金して、少しでも生活を楽にしてあげようと、子供なりに考えたようである。

 母親は、それは知らなかったのか、かなり驚いた様子だった。

 しかしなるほど、日頃から換金できそうなものを探していたのだとしたら、夜に花を見つけられたのも納得なのか?

 たとえ夜にしか咲かないとわかっていたとしても、それを知っていなければ、見つけるのは困難だろうし。

 案外、逞しい子なのかもしれない。


「その途中、町の漁師に会ったんだ。それで、貝をくれたんだよ」


 その漁師は、たまたま貝を拾ったのだという。

 漁師の間では、貝の身を生で食べるのが通とされているらしく、せっかくだから食べてみなと、差し出してきたようだ。

 言われるがままにクレアちゃんはそれを食べ、しばらくしたら、とてつもない腹痛に襲われ、倒れてしまった。

 アレム君は、急いで家に連れ帰り、後のことは、聞いたとおりである。


「きっと、お母さんに内緒で食べたから罰が当たったんだ……」


「ばち、というか……」


 原因は、十中八九それだろう。

 確かに、貝を生で食べることはあるかもしれないが、この世界でそれはかなり危険な行為だと思う。

 焼くのが基本と言われている魚料理だって、生で食べたら腹を下すって言われているのだし、貝だって同じことだろう。

 この町に住んでいる以上、その常識を知らなかったわけではないと思うけど、漁師の言葉に乗せられちゃった感じか。

 しかし、ほんとにそんな食べ方が通なんだろうか?

 そりゃ、漁師飯って言葉があるくらいだし、漁師が釣った魚とかを捌いて食べるって言うのは普通のことかもしれないけど、それは前世での話。

 この世界の常識を当てはめるなら、生で食べたら腹を下すかもしれないというのに、危険な船の上で食べるとは思えない。

 それとも、漁師の間だけで伝わる、秘密か何かなんだろうか。

 いずれにしても、その貝が原因で、クレアちゃんは体調を崩したということらしい。

 高熱で寝込むほどのものなのかと思うけど、よっぽど悪いものだったんだろうか?

 俺は、その貝が何なのか、ちょっと気になった。

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