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第二百十九話:留守番する町

 ひとまず、休める場所が必要ということで、宿屋を探すことにする。

 ここはそれなりに大きな町だし、きちんと宿はあると思うけど、どんなもんだろうか。

 ただ、闇雲に宿屋を探すのも大変なので、とりあえず冒険者ギルドに行って、話を聞くことにする。


「ルミエール、離れないでね」


「うん」


 フェルは、そう言って手を差し伸べてくる。

 手を繋いで歩くなんて、ちょっと子供っぽいと思わなくもないけど、実際今の俺の姿は子供だからな。それも、かなり幼い方の。

 成長すれば、もう少し大きな姿にもなれると思うけど、ドラゴンとしての年齢を基準にしているから、大きくなるとしても数十年とかかかりそうなんだよな。

 フェルのように、明確にイメージできる姿があるなら意図的に年齢を上に見せることもできそうだけど……試しにどこかその辺にいる人を相手にその姿になり切る練習でもしてみるか?

 明確にイメージできればいいのなら、他人の姿を事細かに観察すれば、イメージ自体はできそうだし。

 まあ、それは後だ。今は宿を見つけないと。


「すいません、少し聞きたいことが……」


「いらっしゃいませ。どんな御用でしょうか?」


「この町で、私達でも泊まれる宿屋ってありますか?」


 ギルドへと着くと、まず最初に受付に挨拶をする。

 これは、よそから来た冒険者が、この町にいることを証明するために必要なことだ。

 ニクスなんかは、その時の気分で言ったり言わなかったりしているようだけど、基本的には言った方が得なことが多いらしい。

 まあ、挨拶もしないと、依頼を受けることもできないから、お金を稼ぐなら、必然的に挨拶は必要になってくるんだけどね。


「それでしたら、こちらの宿がいいかと。多少値は張りますが、女子供二人では安全性は大事でしょう?」


「そうですね。ありがとうございます」


 受付さんは、ギルド証を見せると丁寧に対応してくれた。

 俺達の姿を見て、とっさに安全性を考える辺り、気を使ってくれたのがわかる。

 まあ、普通はそんなお金持ってるのかと心配される気もするけど、これでもフェルはBランク冒険者になっているからね。

 Aランクとまではいかなくても、ソロでBランクならかなりの実力者だ。必然的に、お金も持ってるはずである。

 まあ、たまにそう言うの関係なしに煽ってくる奴もいるらしいけどね。

 ニクスはよくそう言うのに出くわして、返り討ちにしていたという話をしていた気がする。


「もしよければ、依頼を受けて行ってくれると嬉しいです」


「わかりました。宿が取れたら、何か依頼を受けに来ますね」


 受付さんと軽く会話し、ギルドを後にする。

 紹介された宿屋は、ここから少し進んだところにあるらしい。

 言われた通りに進んでいくと、やがて宿屋の看板が目に入る。

 見た感じ、結構綺麗な宿屋だね。

 手入れが行き届いている宿屋ほど、サービスはいいけど、それと同時に金周りのいい人しか相手にしないところも多いから、俺達だけでちゃんと相手してくれるかわからないけど、どうかな。

 少し緊張しながら、フェルの手を握って宿屋へと入る。

 受付には、かっちりとした服を身にまとった受付さんが待ち構えていた。

 広さは比べ物にならないけど、前世でのホテルの受付に似ている気がする。


「いらっしゃいませ。ご宿泊でしょうか?」


「はい。一部屋お願いしたいんですが、大丈夫ですか?」


「もちろん。それでは、料金のご案内をさせていただきますね」


 そう言って、なにやら絵が描かれた板を取り出す受付さん。

 ここでは、素泊まりと食事つきのプランがあるらしく、それぞれで値段がだいぶ違うらしい。

 食事つきのプランだと、小金貨1枚と銀貨3枚とのことだけど、確かに他の宿屋に比べると相当高いな。

 普通の宿屋なら、銀貨3枚で食事付きで泊れるだろうに。

 これは、ギルドの受付さんに吹っ掛けられたかと思ったけど、その分セキュリティはしっかりしているだろうし、見た目からしても、割と高級気味なのはわかる。

 いや、高級までは行かないか。

 いわゆる高級宿と比べると、値段は相当安いみたいだしね。

 そう考えると、ちょっとグレードの高い宿屋って感じなのかもしれない。


「料金は前払いです。何か質問はございますか?」


「大丈夫です。それじゃあ、食事つきのプランをお願いします」


「かしこまりました」


 別に素泊まりでもよかったけど、しばらく滞在することを考えると、食事つきの方が色々と楽である。

 何泊もするとなると、普通に金貨が飛んでいきそうだけど、幸い、お金には多少の余裕がある。

 ニクスが荒稼ぎしたのが残ってるからね。

 それに、この町でも依頼は受ける予定だし、ニクスが帰ってくるまでの間くらいなら、何とかなるだろう。

 料金を払い、代わりに部屋の鍵を貰う。

 部屋は結構広く、調度品もそれなりのものが揃っている。

 ぱっと見高級宿に見えないこともないから、そのあたりは気を使ってるんだろうな。

 きちんとベッドも二つあり、これなら安眠できそうである。


「ふぅ、とりあえず宿屋はこれでいいとして、これからどうする?」


「んー、まち、みる?」


 ニクスが帰ってくるまで、大人しく待っているのもいいけど、流石に、ずっと宿に閉じこもっているわけにもいかない。

 せっかく知らない町に来たんだし、多少なりとも観光したい気持ちもある。

 問題を起こすなと言われているけど、別に町を見て回るだけで問題が起こるわけでもないし、多少の観光くらい許されるだろう。


「それじゃあ、ひとまず街を見て回って見よっか」


「うん」


 置くべき荷物もないので、さっそく街に繰り出すことにする。

 さて、この町には何があるのかな?


「かわ、きれい」


「確かにきれいな川だねぇ」


 宿を出てしばらく進んでいくと、川が見える。

 この町には水路が通っているらしく、以前訪れたネーベルベル王国の王都と似たものを感じる。

 流石に、あそこほど飾り立ててはいないが、流れる水は澄んでいるし、生活用水路というわけではないみたいだ。

 広場らしきところには噴水もあるし、その近くには立派な教会も見える。

 雰囲気はなかなか悪くないところだね。


「あっちは、なんだか不穏な雰囲気があるけど……」


「なんだろ」


 全体的に美しい街並みではあるんだけど、ある場所を境に、なんとなく雰囲気が変わっていくのがわかる。

 具体的には、街の北側。山に面している方角だけど、そちらに行くに従って、不穏な雰囲気が漂っている。

 なんというか、スラムのような感じと言えばいいだろうか?

 道も先程まではしっかり舗装されていたけど、そちらに近づくにつれてだんだんと整備がされていないのか、荒れている部分も多い。

 明らかに、この先はよくないものがありそうだ。


「おい、嬢ちゃん達、そっちには行かない方がいいぜ」


 とりあえず行って確かめてみるかと足を延ばそうとしたら、近くを通りかかったおじさんが話しかけてきた。

 話によると、この先には鉱山があるらしく、そこで働く労働者達の区画になっているらしい。

 なんで労働者の区画ってだけでこんなに荒れているのかと思ったけど、鉱山採掘による騒音や、公害などによって居住環境があまりよくなく、誰も近寄りたがらないのだとか。

 この区画に住むような奴は、底辺労働者というレッテルを張られ、南の綺麗な区画の人からは、蔑まれているとかなんとか。

 なんか、あんまり気分のいい話ではなさそうだなぁ。


「あっちに住んでる奴らの中には、仕事中の事故によって親を亡くした奴もいたりする。そう言った奴らが盗賊まがいのことをするもんだから、余計に誰も近寄らなくなったってわけさ」


「なるほど」


 なんか、明らかな町の闇なのは気になるけど、わざわざ近寄るほどのことでもないかな。

 できることなら、その孤児達は助けてあげたい気持ちもあるけど、俺だけでどうこうできる問題でもなさそうだし。

 まあ、後で確認くらいはしてもいいかもしれないけどね。

 そんなことを考えながら、荒れた区画を見ていた。

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― 新着の感想 ―
>別に町を見て回るだけで問題が起こるわけでもない と言っておきながら、スラムが気になるなんて、無自覚にフラグ立てすぎだね
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