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第二百十七話:おもてなしを受けて

 話を聞いているうちに、夜になってきたので、今日は一泊させてもらうことにした。

 いつもは、すぐに発ってしまう幻獣ばかりらしく、泊まりたいと言うと、それはもう喜んでくれた。

 今日は宴会だと、食料をかき集め、盛大にもてなしてくれるようである。

 ちなみに、食料に関しては、例の像の付近から生まれるらしい。

 村人が近づき、欲しいものを願うと、それが現れるのだとか。

 本当に、なんでそんなことができるんだと思ったけれど、これに関しては、夫の方に絡繰りがあるらしい。

 アーリヤの夫である人物は、幻獣だと思っていたのだけど、実は神様なんだとか。

 つまり、幻獣と神様の夫婦である。

 そんなのあり? 幻獣って、神の遣いだし、言うなれば労働力みたいなものである。

 そんな幻獣とくっつくって、大胆な神様がいたものだ。

 そんな神様の名は、グウィネというらしく、成長を司る神様だとかなんとか。

 なるほど、だから食料を出したり、不老不死にできたりすると……いや、全然納得できないけど、神様だったら、それくらいのことはできてもおかしくないのかもしれない。

 世界規模の戦争を諫めたりと、何気に凄いことをしていると思ったけど、それを聞いて、大体納得したね。

 まあ、そんなわけで食料には困らず、しかも色々な食料が手に入るものだから、村人の料理の腕は一流だ。

 すぐに舞台が整えられ、俺達は村人達のお酌を受けながら、料理を楽しむことになった。


「おいしい」


「お気に召したようで何よりです!」


 町にいる時はともかく、道中ではどうしても肉料理が多くなる。

 まあ、基本的に食料は現地調達で魔物を倒し、それをフェルが調理してくれる形だからね。

 日持ちするものなら持ち込めるけど、せいぜいパンくらい。

 だから、新鮮な魚などを使った料理は、とても美味しく感じた。

 あえて湖に飛び込んで魚を取るのもいいけど、濡れちゃうからあんまりやらないんだよね。

 これだけ美味しいのなら、たまにはやってみてもいいかもしれない。焼くのも手間がかかるけど。


「ささ、こちらもどうぞ」


「ありがと」


 勧められるがままに、渡されたジョッキを傾ける。

 飲んでから思ったけど、これお酒だな。

 元の世界では割と飲んでいた気がするが、この世界に来てからは初めて飲んだ気がする。

 料理ともよく合い、食べる手が止まらない。

 見た目はあれだけど、天国のような場所かもしれない。


『おい、あまり飲みすぎるなよ』


『だいじょぶだいじょぶ。お酒は強いから!』


『だといいが……』


 ニクスは、控えめにこちらを見ながらも、食事を進めている。

 フェルはお酒はダメなのか、断って果実水を貰っているようだけど、もったいないと思うなぁ。

 次々に運ばれてくる料理とお酒を楽しみながら、しばしの時を過ごす。

 しかし、時間が経つにつれて、違和感に気が付いた。


『あれぇ……?』


 目の前がぐるぐる回り、天と地がひっくり返ったような状態になる。

 なんだろう、いつの間にか逆立ちでもしてしまったんだろうか。

 もしかして酔った? いや、まだまだ序の口だし、これくらいで酔うはずがない。

 きっと、楽しくて体がポカポカしているから、軽い幻覚でも見ているんだろう。

 三人で食べる食事も美味しいけど、こうやってみんなでワイワイ食べる食事も楽しいものだ。


「おい、飲みすぎだ。そろそろ休ませてやれ」


「おっと、これは失礼しました! あまりにいい飲みっぷりなもので、ついつい手が止まらず」


『白竜の、貴様もいい加減その手を止めろ。二日酔いになっても知らんぞ』


『まだ全然酔ってらいよぉ?』


『それは酔ってる奴が言う言葉だ。はぁ……仕方ない、おい、小娘、白竜のを介抱してやれ』


『は、はい』


 ニクスの言葉に、フェルが俺のことを抱えてその場を去ろうとする。

 まだ飲み足りないんだけど、もう宴会は終わりなんだろうか?

 名残惜しい気持ちを抱えながらも、村人達に手を振る。

 視界がぐるぐる回ってよくわからないが、楽しそうな声が聞こえてきたから悪い感触ではないだろう。


『ルミエールがここまでべろべろになってるとこ始めて見た……』


『フェルも飲んでるー?』


『私は飲めないから。それより、これ、お水』


『ありがとー』


 渡された水を飲み、少し風に当たる。

 何となく落ち着いてきたのか、視界のぐるぐるは収まってきた。

 しかし、それと同時に眠気も襲ってきた。

 まあ、ニクスもフェルもいるし、寝ちゃってもいいだろう。

 後片付けに関しては村人にお願いすることにする。後で、お礼言わないとね。

 そんなことを考えながら、瞳を閉じると、一瞬のうちに意識はなくなった。


『うぅ……頭痛い……』


 翌日。酷い頭痛と共に目を覚ました。

 この感じ、二日酔いか? そんなに飲んだつもりはなかったんだが……。

 いつの間にか、家の中に入れられていたらしく、ふかふかの藁が心地よい。

 頭を抑えながら外に出ると、ニクスとフェルが待ち構えていた。

 あんまり記憶がないけど、俺はなんかやっちゃったんだろうか?


『ようやく起きたか、寝坊助め。とっくに昼だぞ』


『え、もうそんな時間なの? ご、ごめん……』


『まったく、あれほど飲みすぎるなと言ったのに』


『だ、だってぇ……』


 俺としては、別に飲みすぎたつもりはない。

 あれくらいだったら、いつも飲んでいたし、俺は割とお酒には強い方だ。あれくらいで酔い潰れるとは思えない。

 ……と思っていたんだけど、昨日俺が飲んだという量を聞いてびっくりした。

 なんでも、酒樽を一個、丸々飲んでいたらしい。

 いや、流石にそんなはずは、と思ったけど、よくよく考えたら、今の姿はドラゴンである。

 人化した状態ならともかく、ドラゴン姿では、人サイズのジョッキもかなり小さく見えるし、そんな飲んだ気がしなかったけど、実際にはかなりの大きさだったようだ。

 道理でこんなに頭が痛いわけだ。流石に酒樽一個はやばすぎる。むしろ、それだけ飲んで二日酔いで済んでいるのが救いだろうか。


「申し訳ありません、私どものせいで、面倒をかけてしまって……」


「構わん。あれはこいつの自業自得だ。とはいえ、あの程度で酔うとも思っていなかったが」


 村人がやって来て、ニクスに謝罪する。

 ただ、ニクスもあれで酔うとは思っていなかったらしい。

 というのも、ドラゴンは基本的に酒豪が多いらしく、いくら俺の体がドラゴンとしてはまだまだ子供だとは言っても、酒樽一個くらいで酔うようなことはないらしい。

 そんなことある? と思ったけど、ドラゴンの体でジョッキが小さく見えたように、そもそもドラゴンの体の許容量が大きいので、酒樽一個どころか、二個や三個あっても酔わない奴は酔わないらしい。

 だから、一個で酔った俺の体は、結構お酒に弱いようだ。

 あの時感じた、まだまだ全然飲み足りないって感じは、ドラゴンの体ならではだったというわけだね。

 しかし、俺は元々お酒は強かったはずなのに、まさか弱くなっているとは。

 転生によって体質が変わったんだろうか? いやまあ、ドラゴンになってるんだから、そりゃ変わるかとは思うけども。

 なんか、せっかくお酒飲めたのに、これからはあんまり飲めないのかと思うとちょっと残念だが、一応酒樽一個くらいだったら飲めることはわかったので、ちょっと楽しむくらいだったら大丈夫だろう。

 そもそも、そんなに大量にお酒を買うこともないだろうしね。お酒なんて、自然じゃほぼないし、あんまり慣れ過ぎるのも困る。

 俺は、改めてみんなに謝罪し、今後はこういった失敗がないように気を付けると誓った。

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