第二百二話:町へ調査に
結局、いい案は浮かばず、ひとまず拠点まで戻ってきた。
魔術装甲を破壊すること自体は多分できる。けど、それをやったら、魔石ごと壊れる可能性が高い。
それを防ぐためには、どうにかして魔石を保護しつつ、破壊するってところだけど、そんなこと可能だろうか?
仮に、防御魔法のようなものを使うのだとして、そもそも魔術装甲に阻まれて魔石自体に魔法が届かない。
それに、魔石は本来、魔物の急所である。
世に出回っている魔石も、結晶質で砕けやすいという性質があるし、扱いを誤れば、ただ触るだけでも砕けてしまう可能性がある。
特に、俺達みたいな幻獣は、力も強いし、加減ができない可能性もある。
中の黄身を傷つけないで、卵を握りつぶせと言っているようなものだ。
相当繊細な力加減ができれば可能かもしれないけど、一歩間違えば魔石が砕けてしまうかもしれないと考えると、それも難しい。
まじで、どうしたものだろうか。
『……これ、カロンさんには伝えますか?』
『確かに、本体が見つかった以上、報告はしてもいいかもしれんが、あの状態の本体を見せたところで、絶望するのが落ちだろう。むしろ、本体の状態を把握したことで、魔石の魔力がリンクしてしまう可能性もある。解決するまでは、下手に伝えない方がいい』
『そうですか。確かに、今はあらゆることに慎重になるべきですよね』
現在は、なぜか魔石の魔力が枯渇しても、カロンさんは死なない状態である。
そもそも、分体であるカロンさんが、なぜ本体の死を自覚できないんだという疑問はあるが、感じられないこそ、死を免れている可能性がある。
であるなら、下手に自覚させて、命を明確にするよりは、このまま黙っていた方が無難ではあるか。
『ねぇ、魔術装甲をどうにか無力化する手段はないの?』
『戦争に首を突っ込んだことは数回だけからな。もしかしたら開発されているかもしれんが、我は知らん。文献を漁れば、あるいは……』
『なら、そこから攻めるしかないんじゃない?』
無理矢理壊すという手段を取るのが難しい以上、どうにかして無力化する手段を見つける必要があるだろう。
文献ということは、どこかの町の図書館にでも行けば何か見つかるだろうか。
カロンさんのためにも、早いところ見つけたいところである。
『この状況では、少ない希望に縋るほかないか。いいだろう、まずは町で情報を集めることとする』
『オッケー。ここから近い町ってなると、やっぱりあそこ?』
『ああ。最も、図書館があるかは知らんが』
森を抜けた先には、町があることは把握済みである。
見てはいないから、どれほどの規模かはわからないけど、もしかしたら、お年寄りとかから、昔の話を聞けるかもしれないし、近くの町だというなら、何か記述が残っている可能性もある。
行くとしたらまずはそこだろう。それでも見つからなかったら、その時考えればいい。
『とにかく行ってみよう』
俺達は、さっそく件の町へと向かうことにする。
三日ほど飛び、町の近くまで来たら、人化によって人間の姿となり、いつもの冒険者パーティのような出で立ちとなる。
さて、この町には有用な情報はあるだろうか?
「なんか、結構廃れている感じ?」
「たしかに、きぼ、ちいさい」
遠くから見た限りでは、結構大きな町という印象だったけど、実際に入って見ると、割と寂れた印象がある。
空き家と思われる場所もたくさんあるし、まるで予算がなくなって、規模を縮小せざるを得なくなったって感じだね。
違和感は感じたが、ひとまず話を聞くために、冒険者ギルドへと立ち寄る。
ここなら、情報も集まっているだろうし、図書館があるとすれば、その情報も聞けるだろう。
「ようこそ冒険者ギルドへ! 依頼の受注でしょうか?」
「情報を聞きに来た。この町に図書館はあるか?」
「図書館ですか? 以前はありましたが、今はもう……」
受付の話によると、以前はこの町も発展していたようだが、主要産業である鉱山の採掘ができなくなり、それに伴って町の人々が外に出て行ってしまったせいで、産業も廃れ、今では森で魔物を狩ったり、近くにある遺跡から使えそうなものを拾って来たりして、生計を立てているらしい。
かつては立派な町で、それこそ図書館もあったが、今では維持もできなくなり、潰されてしまったとのこと。
寂れているように見えたのは、それが原因か。
しかし、どうしてそうなってしまったんだろう?
「先程も言いましたが、ここは鉱山採掘によって栄えた町です。鉱山では鉄や石炭の他、貴重な魔力水晶も産出されるとあって、賑わっていました。ですが、知っての通り、ここは隣国との国境近くにあります。鉱山での採掘も、よく隣国と揉めていました」
この町は、良質な鉱物の取れる鉱山の町という反面、隣国との国境を守る、砦としての意味もあったらしい。
鉱山がある場所は、その隣国との国境付近にあるらしく、所有権を巡って、日々いざこざが発生していた。
それがエスカレートしていき、戦争にまで発展した。
この町は、最前線として、軍の駐屯地として利用されていたのだけど、戦争は思いもよらない理由で終結することになる。
それが、魔物のスタンピードだ。
双方、守っていた国境線付近を襲撃され、大半の兵士は蹂躙されることになった。
お互いに深手を負ったため、戦争はなし崩し的に中止となり、今後、国境付近の一部地域は、お互いに手出ししない領域として協定が結ばれることとなった。
ただ、その地域の中には、この町を支えていた鉱山も含まれており、主力産業がなくなった町は、徐々に廃れ、今の状況になったというわけだ。
「そんなことがあったんですね」
「ふん、人同士で争った挙句、誰も得しない結果になるとは、愚かなことだ」
「私も人伝で聞いただけなので、詳しいことは知りませんが、おかげでこのギルドもガラガラですよ。依頼はありますが、受ける冒険者はほとんどいません」
辺境に位置する場所のため、わざわざやってくる冒険者も少なく、ギルドは閑古鳥が鳴いている状況。
国からの支援金が少なからずあるため、存続はできているが、このままでは、このギルドもいつか潰れてしまうのではないかと懸念しているようだった。
思ったより深刻な状況に同情はするが、まあ、これはなるべくしてなったことだと思うし、仕方ないことだと思う。
強いて言うなら、鉱山を手放す選択をした国が悪いと言えばそうなのかもしれないけど、当時の状況を考えると、そうせざるを得なかったんだと思うしね。
しかし、図書館がないとなると、どうしたものだろうか。誰か、昔のことを知っている人がいればいいんだけど。




