第百九十四話:本体探し
カロンさんの話では、特徴的なのは、その巨大さである。
元々は海に住んでいたらしいのだけど、その時は一つの島と見間違えられるほどには大きかったらしい。
そんなでかい体だったらすぐに見つかりそうって思ったけど、正確には覚えていないけど、この地に来てからすでに数百年以上経過しているらしく、すでに体は自然に覆われていて、パッと見ただけではわからないだろうとのこと。
なんかスケールがでかい話だけど、下手をしたら、今立っているこの地面が本体の甲羅だった、みたいな可能性だってあるわけで、そう考えると、案外見つけるのは難しいのかもしれない。
海にポツンとでかいものがあれば目立つけど、ここは森に覆われているしね。木々でカムフラージュされているのなら、確かに見つからないかもしれない。
『他にはないんですか?』
『特には。ああ、この尻尾は同じじゃよ』
そう言って、蛇のような形の尻尾を見せてくる。
確かに、特徴的と言えば特徴的だよね。
自在に動かすことができるらしく、一つの攻撃手段としても機能しているらしいけど、これがそのままでかくなったような奴がどこかにあるってことだろうか。
正直、体の大きさが大きさだから、どの程度なのかなかなか想像できないけど。
『わかりました。それじゃあ、探してみますね』
『うむ、よろしく頼む。まあ、無理なら無理で構わんよ』
そう言って、からからと笑いながら送り出してくれた。
さて、どこから探したものか。
カロンさんの話では、この近くだという話だけど、そんなサイズで移動していたなら、近くと言ってもだいぶずれる可能性もある。
下手をしたら、俺達の足だと一か月くらいかかるような場所を近くと言っている可能性もなくはないし、近くというのはあまり考えないようにしよう。
とはいえ、近くにあるかもしれないというのは間違いないので、まずはこの周辺を探るのが一番かな。
『それじゃあ、フェル、手分けして探そうか』
『わかった。気を付けてね』
『そっちこそ』
それぞれの方向に別れ、飛んでいく。
さて、こちらはもう一人手を借りることにしよう。
『ニーシャさん、いる?』
「はいはーい、こちらにいますよー」
俺が呼び掛けると、目の前に羽の生えた子供が現れる。
以前、ネーベルベル王国の王都にいた時に契約した精霊のニーシャさんだけど、きちんと旅に同行している。
元々は、件の精霊を探すための手掛かりとするためだけに呼んだんだけど、ニクスが、専属の精霊がいてもいいと言うので、せっかくだからと契約したから、俺が魔力を払う限りは、ちゃんとついてきてくれる。
まあ、あんまりにも遠い移動には、ついてこないらしいけどね。
今回は、大陸を渡るような長距離でもないし、範囲内らしい。
『ちょっと探しものをして欲しいんですけど』
「探し物? また人かな?」
『いや、今回は魔物。とてつもなく大きな、亀の魔物らしいんだけど、この辺りに反応ない?』
「ちょーっと待ってくださいね」
そう言って、目を閉じて辺りを探っている様子のニーシャさん。
しばらくして、目を開けると、少し困ったように首を横に振った。
「ごめん、このあたりの精霊に確認をとってみたけど、亀の魔物って言うのはよくわからないみたい」
『そっか。まあ、流石にそんなすぐには見つからないか』
「一応、私の方でも索敵してみたけど、それにもそれらしい反応はなし。この近くにはいないんじゃないかな」
となると、ニーシャさんの索敵範囲外ってことになるか。
ニーシャさんの索敵範囲はそれなりに広いし、やっぱり近くって言うのは勘違いだったのかな。
まあ、それならそれで、この近くを探す手間が省ける。
とりあえず、行けるところから行ってみようということで、遠くを探すことにした。
『ありがとう。これからもちょいちょい聞くと思うから、その時はお願い』
「りょーかい。まあ、それだけ大きいなら、すぐに見つかるでしょ」
そう言って、姿を消すニーシャさん。
カロンさんの話では、すでに甲羅の上には自然が生成されてしまっていて、ぱっと見では気づけないと言っていたけど、それだけ巨大なら、少なくとも、山のような形になっているのではないかと思う。
例えば、先日ニクスが指摘したあの山。
あれは大きすぎる気がしないでもないけど、もしかしたらあれだけ巨大という可能性もなくはないし、あの山が丸々カロンさんの本体だった、という可能性もある。
とりあえず、行ってみるだけ行ってみて、何か手掛かりがないか探すのもありだろう。
さっそく、その山に向かって、進路を取ることにした。
『近くで見ると、結構大きな山だね』
見えているんだから、すぐに着くだろうと思っていたけど、飛んでみると案外遠く、一時間近くかかってしまった。
よく見てみると、ちらほらと道があるのが見える。
元々、この辺りに住んでいた人は、この山を登っていたのかな?
それとも、獣道がそれっぽく見えているだけなのか。
いずれにしても、目印になりそうなので、そのあたりに降りてみた。
『甲羅、には見えないけど……』
地面を踏みしめる感覚も普通に土だし、辺りを見回してみても、甲羅要素は一切ない。
これが亀の甲羅だというのなら、どれだけ侵食されているんだと思うけど、数百年経っているって言うし、なくはないのかな。
判断するには、それらしい特徴を見つけるか、あるいは魔力を感じ取って、気づくしかない。
とりあえず、辺りを探索してみよう。
『ちなみに、この辺りにも反応ないですか?』
「ないわねー。この辺りは魔力に満ちているから、心地いいのはあるけど」
確かに、このあたりの魔力は澄んでいるように思える。
魔力にも質があり、乱れていたりすると何となく居心地が悪いと感じることもあるけど、この辺りには全然ない。
魔力の乱れは、大きな戦闘があったりするとなるから、この辺りでは最近まで大きな戦闘がなかったってことかもね。
『うーん、何も見つからない』
飛びながら、ざっと辺りを見回してみたが、特に何か見つかることはなかった。
強いて言うなら、山頂は見晴らしがよく、日の出もよく見えそうだなってくらいか。
いずれ、フェルのために来ると考えると、それは喜ばしい情報だけど、何もないのは少し困る。
見当はずれの場所を探しているのだろうか? なかなかうまくはいかないね。
『とりあえず、そろそろ日没だし、戻ろうか』
何の成果もなしに帰るのはあれだけど、一日で見つかるとも考えていなかったし、とりあえず戻るとしよう。
果たして、本体はどこにあるのだろうか。




