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第百九十話:拠点の探し方

 第七章、開始です。

 寒さが厳しくなり、外に出るのも億劫になる季節。

 この時期になると、多くの魔物は冬眠の準備で大忙しだ。

 先日まで滞在していた王都の近くの森でも、魔物を見かけることが少なくなっていて、より本格的な狩りの練習をするためには、季節の巡りを待ち、新たな場所で狩りをする必要がある。

 まあ、場所によっては冬こそ本番みたいな魔物もいるけど、そう言う意味でも、町を離れるのは必然だった。


『それで、どこに行くの?』


『一度大きな森にでも行って、一人で生活させる、という手も考えたが、流石にこの時期ではろくに食料を得ることはできんだろう。だからまずは、我の住処の一つに向かい、別のことをしようと思っている』


 ニクスは、各地を飛び回っていた影響もあり、多くの場所に住処を持っているらしい。

 俺が最初に住んでいたあの洞穴も、元はニクスの住処だったわけだしね。

 狩りをしようにも、そろそろ冬になろうというこの時期では、獲物の数はかなり減る。

 もちろん、冬眠をしない魔物もいるし、そう言った魔物を狙っていくという手もあるが、そもそも効率が悪いことをする必要はあまりない。

 まあ、今は冬に向けての備蓄ができているわけではないし、死に物狂いで集める必要があると言えばそうだけど、俺達の場合、最悪町に行って食料を買うという手があるからね。

 ニクスはあまり肯定しないだろうけど、最低限の手段は残されている。

 それに、今はどちらかというと、慣れるための期間であり、ニクスとて何が何でもやれと言うことはないと思う。

 いや、ニクスならありえなくもないけど、その時は俺が手を貸すし、ニクスもそのことをわかっているからこそ、あえて避けているってところかもしれない。


『別のことって?』


『もうすぐ冬になるが、この時期の敵は、食料が少なくなるというのもあるが、もう一つ、寒さが厳しくなるという点がある。我は特に気にしたことはないが、他の魔物はそれが苦手という奴もいるらしいからな』


『なるほど。確かに、寒いのは苦手かも』


『火魔法が使えるなら、暖を作るのはそう難しくはない。しかし、それも安全な拠点があってこそだ。だからこそ、住処の作り方を学んでもらいたいと思う』


 本来なら、冬になる前に、きちんと住処を確保し、食料も溜め込んで、寒さに耐えうる用意をするのが普通である。

 しかし、俺達は決まった拠点というものを持たない。

 一応、ニクスの住処を借りる形で拠点を作ることはできるかもしれないが、ここで暮らそうと明確に決めている場所はない。

 強いて言うなら、最初にいたヒノアの大森林がいいかなとは思うけど、世界は広いし、まだまだ見ていない場所は多い。

 俺自身、そう言う未知の場所を見てみたいという欲求もあるし、住処を決めるのは、その後でもいいと思っている。

 だから、今回造るのは、あくまで仮拠点。

 何の用意もない状態から作る、最低限の場所だ。


『住処となる場所を見極めるのも重要な能力の一つだ。できるな?』


『そう言うことでしたら、何とかやって見ましょう』


『その意気やよし。道中、ある程度のことは教えてやる。せいぜい、頭に叩き込んでおけ』


 そう言って、先を飛ぶニクス。

 住処の見つけ方に関しては、俺も知識があるわけではないから、一緒に聞いて学んでおくとしよう。

 果たして、どうなることやら。


 それから一か月ほど、すでに先日までいたネーベルベル王国は地平の彼方。

 辺りには広大な森が広がっており、木々は白い化粧をしている。

 この一か月の間に、冬が到来し、ちらちらと雪が降る日も増えてきた。

 だからなのか、いつもより周りの音が静かに聞こえて、なんとなく物悲しい雰囲気を感じる。

 ニクスは、迷いなく飛び進み、とある場所に足を降ろした。


『ここは、遺跡?』


 そこには、明らかに人工物を思われる残骸が多く転がっていた。

 風化が激しく、もはやどんな建物だったのかはよくわからないが、それでも、かろうじて残っている部分もあり、ニクスはそこを住処にしているようだった。

 俺の時のように、誰かが住み着いているということもなく、わずかに屋根がない場所から雪が侵食してきている以外は、特に荒らされてもいない様子だ。


『ここは昔、砦があった場所でな。隣国に攻め込まれて制圧され、人がいなくなってから、運悪くスタンピードに遭い、放棄された場所だ』


『スタンピードって、ダンジョンであったみたいな?』


『そうだ。何が原因かは知らんがな』


 何か強力な魔物が住み着き、追い立てられるように魔物が大移動することで、って言うのが、地上でのスタンピードの主なパターンらしい。

 それがいつ起きたのかは知らないけど、昔は幻獣という強力な存在もたくさんいたわけだし、そう言ったことが起きても不思議はないのかな?

 というか、砦がここにあるってことは、近くに町もあるのかな。

 見た感じ、見渡す限り森って感じだけど。


『ここから三日も飛べば町もあるだろう。今回は寄る気はないが』


『そっか』


 まあ、今回は住処の見つけ方を学ぶフェーズである。

 今、ニクスの住処がここにあるから、ひとまずの拠点は確保していると言っていいけど、それ以外に、もう一つ住処を作れってことだね。

 森だから、探せばそれらしい場所はいくらかありそうだけど、果たして見つかるだろうか。


『小娘、腹ごなしをしたら、さっそく住処となる場所を探してくるがいい。条件は、わかっているな?』


『はい、大丈夫です』


 住処となる場所は、まず第一に、安全であることが挙げられる。

 他の魔物のテリトリーから離れているとか、地形的に侵入がされづらいとか、そう言った場所のことだね。

 住処は、食事をする時や、寝る時に使うと思うけど、いずれもそれをしている時は無防備になりやすく、不意打ちを受けては堪ったものではない。

 だからこそ、安全であるというのは重要になってくるわけだ。

 もちろん、完全に安全な場所を探すのはなかなか難しいけどね。

 寝る際は、常に気を張って、いつ襲われても大丈夫なように備えるというのも重要なスキルだし、野生で生きるというのはなかなか難しい。

 後は、雨風を凌げるというのも大事である。

 安全であるという中には、暑さや寒さから身を守れるというのも含まれる。

 いくら安全でも、環境によっては住めない地形なんてこともあるだろう。だから、それらも考慮して、住みやすい場所を探さなくてはならない。

 誰だって、住処は住みやすい方がいいに決まっているしね。

 他にもいくつかあるが、基本的な条件は道中でニクスに教えられた。

 後は、それに当てはまる場所を見つけられるかと言ったところだけど。


『ニクス、俺は?』


『貴様は待機だ。以前のように、小娘にちょっかいをかけるんじゃないぞ』


『それは状況によるかな』


 そりゃ、これはある意味試練とも呼べるものだし、極力手は貸さないつもりだけど、万が一ということはある。

 強大な魔物が現れたとか、怪我をして動けなくなったとか、不測の事態が起きた時は、迷わず助けるだろう。

 ニクスは、複雑そうな顔をしていたが、これは譲れない。

 ひとまず、腹ごなしということで、持ち込んだ食料を調理しつつ、準備を整えるのだった。

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