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第5.5話『スキルの検証』

※本編に支障のない、気になる方に向けた補足回となるため、読み飛ばして問題はありません。

洞窟の壁に背中を預けて天井を仰ぎながら、ゆっくりと呼吸を整える。

ヘルハウンドが追跡してくる気配はないものの、未だに鼓動の乱れは収まらない。


「……このままじゃダメだ。」

拳を握りしめ、思考を巡らせる。


『敵が強すぎる。次は逃げることさえ出来ないかもしれない。

このままじゃ、訳の分からない奴らに食われて終わりだ…。

唯一、生存の鍵になりそうなものといえば…いくつか手に入れたスキルか…』


「詳しく検証しておく必要があるな……。」

それぞれのスキルで、何を、どこまでできるのか。そしてスキルの獲得条件は何か。


できることの限界を知る必要がある──。


意識を切り替え、洞窟内の安全そうな場所を探しながら歩き出す。


******


『まずは《収納膜》から検証してみるか。…気になるのはどれだけ持てるか、だが…』


目についた石をひとつずつ収納膜に入れていく。

50個ほど入れてみたが、制限がある様子はない。それに、重みもまったく感じない。

また、収納膜の内部に、どの程度石が入っているかは、感覚でわかるようだ。


「きりがないな。個数に制限があるか分からないが、これだけ入るなら困ることはないだろ…。

あと、重さを感じないのは助かるな。」


次に、水を使った実験を始める。


収納膜にしまっていた水袋を取り出す。

水袋を慎重に傾けて、袋の中の水を収納膜に注ぎ込もうとする。

しかし…水が吸収されることはなく、重力に従って地面へ落ち、岩肌に染み込んでいく。


どうやら、水をそのまま収納することはできないようだ。


******


こうしていくつかの実験を行い分かったことについて、木の枝で地面にまとめていく。


・収納できる個数の限界は分からない。

・収納膜を使っても疲れない。

・自分の体より大きなものは入れられない。

・水はそのまま収納できない。

・水を入れた水袋は収納できる。

・生き物は入れらない。(※ミミズで検証)

・収納膜の中は状態が変化しない。(濡れたものを収納しても維持される)


『ふぅ…かなり便利に使えそうだな。ここまで分かれば十分だろ。』


次は、ヘルハウンドから逃走するときに覚えたスキルだ。


《高速木登り》は"より速く登ること"。

《高速滑空》は"より早く飛ぶこと"に意識を集中することで、感覚的に発動できることが分かった。


また、初めて使ったときはあまりの速さに圧倒されて制御できなかったが、洞窟内で練習を繰り返した結果、コントロールできるようになった。


『あとは《ファントムテール》だが…』

試行錯誤しながら、あの時の感覚を探る。


『確かあの時は…全神経をしっぽの先まで通したような──』

背中の毛がふわりと揺れ、静かに立ち上がると、尻尾が淡く輝きだした。


「おぉ…あの時と同じだ…!」

尻尾を振ってみると、淡いグラデーションが滑らかに揺れる。


「これは…光るだけ…か…?」


このまま走ってみると、わずかとはいえ、動きに軽さが生まれた気がした。


『…こんなので、よく助かったもんだな…しかし、無いよりはマシか…』


******


手持ちのスキルは、おおよそ把握できた。


次に確認するのは、「手持ちにないスキル」。

つまり、「新しいスキルの獲得』だ。


どうにかして新しいスキルを手に入れられないかと、試しにクネクネと動いて虚空を殴ってみたり、プルプルと力を入れてみたりしてみるが、何も起きない。


やはり、適当にやってもダメということだ。


これまでの経験から、スキルの獲得条件は、「必要性」と「集中」の2つではないか?

そう仮定し、まず今の自分に「必要」なものを改めて整理してみることにする。


これまでに遭遇した凶悪なモンスターの姿を改めて思い返してみると…たとえスキルが増えたとしても、彼らを倒せるとは到底思えない。

結果として、逃げるしかなくなるはずだ。


しかし、いざというときに壁や遮蔽物がないと、すぐにやられてしまうだろう。

つまり、今最も必要なスキルは、新しい「逃走手段」ということになる。


さらに、逃げるだけでは長くはもたないだろう。いずれ追いつめられる事が目に見えている。

そうなると、次に必要なスキルは、逃げ切るための対抗手段、できれば「敵に何らかのダメージを与える手段」が欲しい。


まとめると、必要なスキルは2つ。

──"逃走手段"と、"対抗手段"だ。


「必要」なものが整理できたので、次は「集中」してみる。

追い詰められた時の状況を思い出しながら、ゆっくりと全身の感覚に集中し、「逃走」と「対抗」を強くイメージする。


自然と四肢に力がこもっていき…徐々に淡く青い光を帯びてきた時、頭の中に声が響いた。


**《ジャンプスタンプ》——発動。魔力による超ジャンプ。**

**《ショックスタンプ》——発動。魔力振動による衝撃波。**


集中を切らさぬよう、静かに全身を確認する。

「…魔力…ってなんだ?…この青い光のことか…?」


右手を見ると断続的に明滅する青い光が広がり、小さな掌球を中心として「異常な力の振動」を纏っている。

また両足の下には青い光が広がっており、力を込めていくと、呼応するように光の強さが増していく。


イメージに従い、力を溜めて両足を踏み込み、強く地面を蹴り出した瞬間——

低い衝撃音と共に体が大きく跳ね上がり、瞬時に地面が遠ざかる。


想定外の高度まで飛び上がったことに気づき、反射的に滑空体勢に入ったところで、明滅する右手が目に入った。


『この力をぶつければ…!』


空中で体を翻し、自然落下に入る。


そのままの勢いで、地面に剥き出しの岩盤に向けて、右手を思い切り叩きつけた。


着地の瞬間、右手の光が一段と強く明滅し、

——バチィンッ!!


高音と同時に、着弾点を中心に岩盤が破裂し、そこから放射状にひび割れが走った。

瞬時に、魔力に弾かれた破片がいくつも飛散し、地面には波紋のような衝撃波が円状に広がっていった。


地面は自分の体の大きさ程抉れて窪んでおり、岩の破片が遅れてカラカラと音を立てて落ちてきた。

砕けた岩の中心に小さく着地し、ゆっくりと呼吸を整える。


掌に軽い痺れと確かな手応えがあった。


『これだけ威力があれば…モンスター相手でも、多少は通用するかもしれない。

完全に倒せなくても、足止めにはなるはずだ。それに、その間に逃げることもできる。

今の自分にとっては、それだけでも充分な対抗手段だ。』


しばらくその場で手足を動かし、感覚の残滓を確かめてから、再び小さく構えを取り、他にも何か得られないかと、姿勢や意識を変えてスキルの発現を試みる。


滑空しながら地面にタッチしてみたり、空中で捻転してみたり、

全身に魔力を巡らせるイメージを変えて、しっぽ・爪先・背中などに集中を分散してみる。


だが──

スキル名を告げる声は、それ以上返ってこなかった。


何度か繰り返してみたが、特に新たな気配は感じられない。

どうやら、今の状況ではこれ以上の取得は望めないらしい。


『…仕方ないな。焦っても無駄ってことか。

ここまでで、ある程度の能力は手に入った。


試行と検証もひと区切りついたように思える。


今必要なのは、戦うことではなく──休むことだ。

これからどうするかを考えるためにも、もう少し落ち着ける場所がいる。』


身を隠せる拠点になりそうな場所を、求めて歩き出した。


------------


身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》

尻尾系:《ファントムテール》

肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》


---

次回2025/7/25、7話を更新予定です。

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