第40話『樹影の根域』
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******(ラース視点)
私は《鉄殻の墓所》から《樹影の根域》へ落下後、《アルネフェルディアス》と名乗る少女とともに行動を開始した。
少女の斜め後ろを《マシナリードライブ》で移動しながら、周囲の状況を確認する。
現在の空間は土と石、それに樹木の根で構成されている。
天井から太い根がいくつも垂れ、途中で枝分かれしながら地面まで伸びている。
周囲には複数の通路が確認できる。
少女はその一つへ迷いなく進入し、庭を歩くように一定の速度で前進していく。
目線と歩幅に乱れがないことから、目的地を把握していると判断できた。
「アルネフェルディアスさん。
ここから上層へ戻る方法はあるのでしょうか」
少女は右目を抑えながら微笑み、答えた。
「……アルネでいいわ。
この先には、大樹の根に沿って、上層の《跳兎の郷》まで通じる道があるの。
あなたの友人──クロも、きっとそこにいるはずよ……。
でも、今はその道が何かに"浸食"されているようだから……私は、下からその調査をしにきたの」
「なんとかしないといけませんね。まずは行ってみましょう」
通路を進んでいくと、アルネの背丈の数倍はある段差が現れた。
アルネは足を止め、段差と私を交互に見比べている。
アルネは無言でこちらへ近づき、膝をついた。
両手をそっと私の下へ差し込み、持ち上げようとわずかに力を込める。
「んん~~……」
しばらく試みたあと持ち上げられないと判断したのか、アルネは一つ息を吐き、落胆の色を見せた。
「ハァ……力さえ戻れば……」
「そうですね! どうやらこのエリアで浮くことはできないようですが……
少し離れてお待ちいただけますか!」
不思議そうな顔をしながら、アルネは少し後ろに下がる。
浮上時に使用する推進用魔力を、高出力で噴射した場合に得られる上昇量を算出……
「算出完了です! この程度の高さであれば、問題ありません!」
噴射角を調整し、推進魔力を上昇用に最適化する。
「……角度は良好です。いきますよ!」
推進魔力を圧縮し、計算値に達したところで解放した。
ボシュッッ!!
噴射の反動で周囲の砂埃が舞い上がる。
上昇する体は計算どおりの放射角で滑らかな弧を描き、推進速度も安定している。
段差の上部へ到達し、落下が始まったところで小さく噴射して調整を行う。
くるくると回転した後コトン、と軽い音を立てて狙いどおりの位置に着地した。
「おぉ、この動き……! 冒険している感じがして、とても良いですね!
これはまさしく……《マシナリージャンプ》です!」
段差の上にいる私を見上げ、アルネはわずかに目を見開いている。
すぐに段差へ向き直り、軽やかに跳ねるように駆け上がり、呟いた。
「ふふ……あなたにも、翼があったのね」
再び移動しながら自身の状態を整理する。
「いつものように飛ぶことはできませんが、移動も快適です。
下部のパネルは軽快に回転、摩擦抵抗は最低限です。
そしてさっきの着地は三回転、目指すはその先地平線!
身に着けたスキルは高性能! クロにもきっと大盛況です!」
語尾が美しく揃ったことに反応し、体がひときわ明るく明滅した。
前を歩くアルネが、振り返って微笑んだ。
「さっきまで元気が無さそうだったけど、調子が出てきたのかな。
……このあたり、大樹に行くべき魔力が滞留しているようね。
あなたが浮けないのも、その影響かもしれない」
「なるほど!
問題が解消するか、このエリアを抜ければ浮ける可能性が高そうですね。
ところでアルネさんは、どうやって《鉄殻の墓所》へ来たのですか?」
アルネは少しだけ視線を落とし、静かに答えた。
「今の私には、大した力は出せないの。
でも……“風”に乗れば、ここまで来るくらいはできるわ」
「おぉ! すごいですね!」
その反応が嬉しかったのか、アルネは頬を緩め、どこか誇らしげに見える。
「……あなたこそ、どうして《鉄殻の墓所》に?」
「私とクロは、過去の記憶がないのです。
手がかりになりそうなパーツを集めていたところでした」
「……記憶が、ない……? それって……」
言いかけて、アルネは歩みを止めた。
確認のため前方へ視線を向けると、通路の先は崩れた土砂でふさがれていた。
アルネは土砂に近づき、そっと手を当てる。しばらく静止したのち、ポツリと呟いた。
「……やっぱり、今の私ではダメね……」
そう言って、振り返りながらこちらをじぃっと見つめてくる。
「この先へ進むのですね! お任せください!」
土砂の重量を推測し、必要な動作とエネルギー量を瞬時に算出する。
下部パネルを最高速で回転させつつ、浮上時の推進魔力を全身に纏って強化する。
そのまま後方へ魔力を噴射し、土砂へ向かって勢いよく体当たりした。
全身に強い衝撃が走り、金属がぶつかる甲高い音が響いた。
土砂の層が砕ける感触が連続して伝わってくる。
ふいに抵抗が軽くなり、そのまま土砂を突き抜けた。
着地の衝撃を吸収しつつ、くるりと振り返る。
「名づけて──《マシナリークラッシュ》です!」
穴の向こうからこちらを見つめていたアルネが、目を細めた。
「すごい……あなたは隠された力を引き出せるのね」
「はい! でもクロは、もっと凄いんですよ!」
アルネは静かに歩み寄り、視線を落とした。
「……いいコンビなのね」
「……そういえば、さっき記憶の話をしていたでしょう?」
ふっと一息つき、悲しそうに微笑んだ。
「私も……記憶が、ないの」
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■クロ
身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
■ラース
スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》
パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《??パーツ》
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次回2026/3/14、0:10頃、次話を更新予定です




