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第4話『赫灼の焼焔獣』

闇の奥——視線が合う。

鈍く光る二つの目。じわりと滲む赤黒い輝きが、静かにこちらを捉えている。


<<——ヘルハウンド。 赫灼の焼焔獣。>>


「……やばいだろ…」


******


逆立つ赤褐色の毛並みは、空気すら歪ませているように見える。

身構えた瞬間、その爪が僅かに沈む。


その喉元から、低い唸り声のような音が漏れたかと思うと、——薄く開かれた口内に向かって空気が一気に収束していく。


喉の奥で赫い光が脈打ち、凝縮されていく。


瞬間、大気が震え、地へ吐き出される灼熱の波——。


——ジュアッ!!


光と共に、地表を溶かす業火が瞬時に迫る——。


その一瞬、考えるよりも先に体が動く。


「……っ!」


後ろ足の爪が地を蹴り、炎の裂け目を紙一重で滑り抜ける。


赫々と揺らめく炎の向こう——ヘルハウンドが微かに動いた。


赤黒い瞳が僅かに細まり、空気を嗅ぐように首を傾ける。意外そうな気配が滲む。


——そこに獲物が焼け落ちるはずだった。


ほんの数拍の、静かな空白。


赤い獣はゆっくりと、興味深げに、小動物に視線を巡らせ…


眼光が鋭さを増していく——。



******


——まずい。次はもう避けられない。


息を飲み、全神経に集中する。背中を伝い、尻尾まで毛が逆立ったその時。


**《ファントムテール》——発動。残像、速度向上**


視界の端で、尻尾がうっすらと青く光り始め、生き物のように左右に怪しく揺れる。

——それに興味を持ったヘルハウンドの動きが一瞬鈍った。


その隙を逃さず、素早く地を蹴る。


『逃げるしかない!』


前足を押し出し、壁に爪を立てた瞬間、脳内に言葉が響く。


**《高速木登り》——発動。登攀速度向上。**


跳ぶように、死に物狂いで城壁のような壁を駆け上がる。


『ともかく距離を取らないと!』


目一杯全身の膜を広げ、強引に角度を変えて天井際から飛び出す!


**《高速滑空》——発動。滑空速度向上。**


——!?


滑空とは思えない、とんでもない加速が来た。


強すぎる勢いに身体がぶれる。

制御できない。


——着地、できない!


視界が乱れる——衝撃ののち、視界がグルグル回る。


何とか立て直し、ふらつく足で遠く後ろを振り返ると…


——こちらの慌てぶりに少し驚いたのか、所在なく口を小さく開いたままのヘルハウンドと目が合った。


興味を失ったのか、ヘルハウンドは焼けた地面にふんっと熱風を吐き出し、くるりと前足を翻した。

眼光の赤みが静かに消えていく。


******


しばらく動けずにいたが、ヘルハウンドが戻ってくる気配はない。


何とか、逃れることができたようだ。

——だが、次は狩られる——


「生き残るためには、もっとスキルを身につけないと…!」


もう一度後ろを見たが、ヘルハウンドの姿はなく、静寂が広がっていた。


------------


身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》

尻尾系:《ファントムテール》


---

次回2025/7/11更新予定です。

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