第38話『アルネフェルディアス』 後書き:イラスト
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受けた衝撃の余韻がまだ残っている。
少女の無事を確認しようと浮上を試みるが──推進反応が返ってこない。
「……あれ? 浮けないですね……」
右へコロコロ、左へコロコロと転がるばかりで、思うように浮くことができない。
「なんと……これは不具合でしょうか!」
視界が回転し続け、周囲の把握が難しい。
このまま転がり続けても効率が悪いと判断し、いったん停止する。
「まずは点検ですね」
自身を構成するパーツの状態を順に確認していくが、どこにも異常は見られない。
「……壊れていませんね! 原因は不明。では、浮上以外の移動手段は?」
下部を中心に点検すると、“走行輪”のように内部から地面側へ回り込む構造の、リング状補助パネルが待機していた。
「これを回転させれば、移動に転用できそうですね」
ロックを解除し、各部の調整を行う。
試しに補助パネルを回転させてみると、地面をしっかりと捉えた。
「おお……これは、なかなか安定していますね」
視界が回転することなく、前方へと進むことに成功する。
「……こういう時は名前を叫ぶのが定番でしたね。
では、名づけまして……《マシナリードライブ》、発動です!」
少女のそばへ近づき、様子をうかがっていると、まぶたがわずかに震えた。
意識回復の兆候を確認できたため、声をかける。
「意識が戻ったようですね。痛むところはありませんか」
少女が上体を起こした。
背丈は人間の半分ほどで、右目と両手には包帯が巻かれている。
「……あなたが、助けてくれたのね」
「はい。怪我の具合はどうですか、お嬢さん」
「……大丈夫よ。あぁ、この包帯は……気にしないで」
少女は少し目を伏せた。
その仕草から、怪我の話題を続けるのは適切ではないと判断する。
「……承知しました。
先ほどさらわれた友人を助けに行きたいのですが、ここがどこなのかご存じでしょうか?」
少女は静かに息を整えた。
「ここは《樹影の根域》……。
上層にある大樹の根が張る場所」
「なるほど、この辺りに詳しいのですね!
あの鳥は、何者なのでしょう」
少女の耳が小さく揺れている。
「……ふふ。ここには、何度か来てるから。
あの鳥は雷角鳥様──。
大樹の魔力を糧とする、郷の守り神……。
だけど、最近少し“乱れて”いるの」
「乱れ、ですか?」
少女は傷が痛むのか、包帯の上から右目を抑えている。
「そう……ある日、大樹が弱ってきたの。
そのせいか、雷角鳥様は魔力を帯びたものを集めるようになってしまった。
あなたの友人も、きっと大樹の元へ連れていかれたのね……。
……食べられたりは、しないはず」
少女は右腕をぎゅっと握りしめ、震えている。
「あなたに協力したいけど、今は……大樹を放っておけない。
きっとこの先に、“原因”があるはず」
少女の言葉から、状況を整理する。
巨大鳥の行動特性から、クロは無事である可能性が高い。
少女は負傷しており、この場に残すのは適切ではない。
そして──自分ひとりで上層へ戻る手段がない。
導き出される最適解はひとつ。
「では、同行させていただけないでしょうか。
あなたの知識があると、とても心強いです」
少女は大きく目を見開いたあと、視線をそらした。
長い耳は小刻みに動いている。
「あなた、名前は……?」
「私の名前は、ラースです」
「私は……アル……アルネフェルディアス」
その声音は落ち着いているが、少しだけ影を帯びていた。
******(クロ視点)
人々の冷たい態度を思い返すとつい苛立ちが沸き上がり、思わず鼻がプスプスと鳴る。
そのとき、背後の広場から妙な視線が刺さった気がして、思わず振り返った。
……が、そこには誰の姿もない。
「……?」
気のせいか。
視線を戻して息をつくと、老人の言葉がふと脳裏をよぎり、つい空中をスカスカと殴ってしまう。
その瞬間、背後に同じ“気配”が走った。
今度は迷わず振り返る。ババッと。
……だが、やはり誰もいない。
「……おかしいな」
眉間に力を込め、千里眼を発動した。
視界が開け、格子状の魔力が周辺の輪郭を描き出していく。
広場に面した家の裏手──その陰に、そいつはひっそりと身を潜めていた。
「……そこにいるのは分かってる。何の用だ?」
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■クロ
身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
■ラース
スキル:《マシナリードライブ》
パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《??パーツ》
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