第32話『龍の記録』
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絡まったツタを見て、俺は爽やかに額の汗をぬぐった。
「ふー……大分まとまったことだし、バッサリいくかな!」
わざとらしく尻尾を振り上げると、塊からわずかに伸びたツタの先端はしゅんと丸まり、ぺたんと地面に伏せた。
バインドモールは涙目になり、小さく鳴き声をあげている。
「キィィ~(お前が蹴ってきたくせにぃ~)」
ラースがふよふよと近づいてきて、ぽつりと呟いた。
「……さすがに可哀そうですよ」
少しだけ笑い、収納膜からグルーツ・バインの果実をいくつか取り出す。
「分かってる、冗談だって。
……オマエだって、生きていくために自分のナワバリを守っただけだもんな。
俺が悪かったよ。これでおあいこにしてくれ……」
するすると伸びてきたツタが、果実を受け取った。
バインドモールは表情を輝かせ、鳴き声をあげる。
「キィィ!(アニキィ~)」
「いや、兄貴じゃないからな!?」
否定を無視して、ツタは嬉しそうに果実をくるくると回していた。
「どうやら、和解できたようで良かったですね!
しかし、皮膜の傷は平気でしょうか」
「動けない程じゃないんだが、このままじゃまずいよな。
何とかしないと……」
目を閉じ、少しでも傷を癒す方法がないか模索を始めた。
『これまで攻撃する時は、外に向けて鋭利な魔力を放出していた。
もしも"癒す"スキルがあるとしたら、何をイメージすべきか。
……"攻撃"の逆──つまり、丸く包み込むように、内側に集めるように意識する……?』
傷の周辺に意識を集中してみるが、むしろじんわりと痛みが広がるだけで、何の反応もない。
続けて目、耳、皮膜と順番に集中してみるが、まるでスキルを得られる気配がない。
まぁ、そう上手くいくわけもないか……と諦めかけた時、ふと掌が温かくなっていることに気付いた。
目を開くと、青く光る円形の魔力が4つ、肉球の形に浮かび上がっており──頭の中に声が響いた。
**《ヒールスタンプ》──発動。魔力による治癒力向上**
「おぉっ!これは、回復スキルでは!!」
掌の魔力を傷口に当てると、柔らかく熱が広がり、痛みがマシになってきた。
様子を見ていると、心なしか傷口も塞がっているようで、時間をかければ治療することができそうだ。
傷口にヒールスタンプを当てながら一息つき、遺跡の中心部に視線を送る。
「よし。あとは、エリア中心部に機械のパーツがあるはずなんだが……」
「キッキィィ!(アニキィ!これでしょうか!)」
ふと見ると、《機械のパーツ》と《保存データ》を乗せたツタが、するすると手元に伸びてきた。
「お、お前!なんて話の分かるやつなんだ!」
「クロ、ちゃんとお礼を言った方がいいですよ……」
さっそく、手に入れた《機械のパーツ》をラースの表面に当ててみる。
カチリと音がしてパーツは沈み込み、紋様に光が走った。
ヴゥゥン……
ラースはくるりと回転して明滅する。
「これは《観測パーツ》ですね!
一定強度以上のエネルギーを検知できるのですが……ああっ!?
なんだかとてつもない、エネルギー反応があるようです!」
「ええっ……そ、それってどこからの反応なんだ……?」
「残念ながら、発信源までは特定できないようです!」
「そ、そうか……じゃあ、その反応って何か意味があるのか?」
「……現時点ではエネルギーの有無が分かるだけで、特に意味が無いようです!
邪魔なので見なかったことにしましょう!機能OFF!」
「進展無しというか、逆に嫌な情報だな……。
いや!!保存データ!保存データを見てみよう!」
「そうですね!」
ラースの上に飛び乗り、映像再生を始める。
なぜか、バインドモールも一緒に眺めていた。
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映像はゆっくりと明るみを帯び──青黒い光沢が静かに、確かな存在感で浮かび上がる。
少しずつ遠のいていく視界の中、規則的に並ぶ菱形──“鱗”が現れる。
その表面は硬質で、金属のような反射を見せていた。
やがて全貌が映し出される。
そこにいたのは、星々の中で視界を覆い尽くすほど巨大な“龍”──。
“龍”が大きく口を開くと、目の前の空間が大きく歪み始める。
歪みは波紋のように広がり、やがて一点に収束。
その瞬間、空間に断裂が走り、光の筋が奔流のようにほとばしった。
光が収まった後、“龍”の前──先ほどまで星々があったはずの空間には、“無”が広がっていた。
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無意識のうち、ぞわぞわと尻尾の毛が逆立っているのを感じる。
チラリと下を見ると、バインドモールは涙目でガタガタと震えていた。
ラースは小さく明滅して呟いた。
「……これも、見てはいけないやつでしたね!」
「……なんか、ものすごく嫌な映像だったが……
ひょっとして、あの龍が観測パーツで検知したヤツなのか……?」
胸の奥にざらついた不安が浮かぶが、いくら考えても対応のしようがない。
頭をブンブンと振り、思考を振り払う。
「いや!あんなのを考えても仕方がないな!
無事にパーツも手に入れたことだし!
そ、そうだ!セレナは機械のパーツが5個ある、と言っていたよな!」
「はい!!
エコロームから通信パーツを獲得した後、ここで観測パーツを手に入れましたので、この先あと3つはあるはずですね!
次は、毒地帯の《鉄殻の墓所》が待っているはずです!」
「よし。気を取り直して、ドンドンいこう!
しかしリディス……"ここに危険な生物はいない"って言って、いきなりこれだからな。
まったく、この先が思いやられるよな」
「いえ。ここはクロが悪いと思います」
バインドモールも同調するように小さく鳴き声をあげる。
「キィ~(アニキが悪い)」
クロはバインドモールをチラリと見てため息をついた。
「悪かったよ……」
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身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
ラースのパーツ:
《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》
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《保存データ》について
《保存データ》は《ルーミナ結晶》と呼ばれる青い小さな鉱石。
強烈な魔力を当てたとき魔力残滓が焼き付く特性がある。
魔力残滓は指紋のように一つ一つ形状が異なり、専用の機器や魔術を通し解析することで映像を読み取れる。
ただしラースは優秀なので、パッと見るだけで映像再生することが可能。
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次回2026/1/17、0:05頃、次話を更新予定です




