表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

第17話『エコローム①』

拙筆ですが、なにとぞ、お気に入り登録をお願いいたします!

青白く煌めく神秘的な空間には、大小さまざまな水球が無数に浮遊していた。

それら──響震の捕食者、《エコローム》は、周囲の生物を静かに取り込み、溶解し吸収しているようだった。


ラースに目を向けると、音も光も発さず、空中でぴたりと静止している。


『…ラース…器用なヤツだな…。


だが、この敵──《エコローム》は、無差別に襲ってきているわけじゃなさそうだ。

ルミラビの鳴き声、叫び…つまり“音”に反応していたように見える。


入り口で襲われなかったのは、検知範囲の外だった、ってことか……?』


少し考えたのち、クロはゆっくりと身振り手振りでラースに対し、エリア入り口へ戻るように促す。

ラースは理解してくれたようで、一度だけ静かに回転し、ふわふわと移動を始めた。


目を凝らすと、周囲の煌めく水球の中には、何かの生物の断片や千切れた器官のようなものが浮かんでいる。

先ほどまで幻想的に見えていた光景が、一転して異様なおぞましさに変わり、背筋が冷えていく。


漂う水球から可能な限り距離を取り、音を立てないよう細心の注意を払いながら、慎重に入り口へと歩を進めていった。


******


入り口まで、あと少しのところだった。


視界に漂う水球のひとつが、ふいに、しゅわしゅわと微細な気泡を放ち始めた。


不穏な気配を察し、反射的に身を引いた次の瞬間──

水球の表面でひときわ大きな気泡がパチンと弾け、水棘が空間を裂いて襲いかかってきた。


『うおぉっ!?』

わずかに距離を取っていたため、間一髪で回避に成功する。

続けざまに水球が棘を形成しはじめるのを目にして、迷う暇もなくクロは走り出していた。


『音を出してないのに、なんで攻撃してくるんだよ!』


水棘をかいくぐり、入口へ向かって駆ける中──

視界の端でいくつもの水棘がラースに直撃し、その都度、バシュンという音と共に水しぶきが飛び散っていた。


******


ようやく、《響震の洞窟》の入り口まで戻ることができた。


ラースは嬉しそうに回転している。

「危ないところでしたね!」

「いや、危ないところ…というか、普通に背中に喰らってたみたいだが、大丈夫なのか…?」


ラースの背面を見せてもらうと、苔が綺麗に取れてピカピカに輝いていた。


「こっ、これは……!顔が映りこんでる…!

ラース……むしろしばらくあそこにいた方がいいんじゃないか…?」

「絶対嫌ですよ!」


笑いながら、念のため、ラースの表面についているエコロームの水分を鑑定してみる。

結果はあくまで"水"であり、魔力反応もなく、付着しても害はないようだ。


クロは洞窟の奥へ視線を向け直した。

「冗談はさておいて…中央にある《機械のパーツ》を回収する方法を考えないとな。

あの水球…《エコローム》というらしいが、生物の“音”に反応してると思うんだ」


ラースは空中でくるりと回転しながら、得意げにうなずく。

「そうですね!初めのウサギさんは、声を出した瞬間に攻撃されていましたからね!」


クロは眉をひそめながら、先ほどの違和感を思い返す。

「だけど…入り口の近くの個体は、こちらが音を出していないのに、なぜか攻撃してきたんだよなぁ…」


ラースは小刻みに左右交互に明滅しながら、考え込むように浮遊している。

「あの時、水球の表面で、大きな気泡が弾けていました。

ひょっとすると、その反響音で攻撃対象を区別しているのかもしれませんね。」


クロは腕を組み、爪先をトントンとしながら、思考を巡らせる。

「なるほど…反響か。ってことは、跳ね返ってきた音で獲物を認識してるってことだよな?

…だったら、“音を反射しない体”になれば、攻撃されずに済むんじゃないか?

ひょっとして、そんなスキルが手に入れば、突破口になるのかもと思ったんだが…」


ラースは少し間を置いてから答える。

「…残念ですが、効果があるかは断言できません。

反響音には、波形や強度、歪み、時間差など、複雑な要素が絡んでいます。

それをエコロームがどう判断しているかは、まだ分かっていません。


仮に“音を反射しない体”になるスキルを使ってエコロームの前に立った場合、空間の一部に“反響の欠落”が生じます。

それが“異常”として認識されるなら、逆に攻撃される可能性もあります。


…とはいえ、確実な対策がない以上、試してみる価値は、あると思いますよ!」


クロはゆっくりと息を吐く。

「なるほど、効果があるかはエコローム次第か。でも他に方法はない。

よし…だったら、やってみるか!」


クロは、薄く目を閉じてイメージを深めていく。

『エコロームに気付かれないように、気配を遮断したい。いや、遮断しなければならない。

今も、シュワシュワという泡の音が聞こえている。

あの音も、俺に当たって、反射しているはずだ。

音を出さない。反射させない……!』


集中し、自身の精神が研ぎ澄まされた瞬間──脳内に、静かに言葉が響いた。


**《隠密膜》──発動。音・振動・魔力痕跡の抑制**


薄目を開き、身体の様子を確認する。

「…被膜の青みが増している。

けど、他のスキルみたいに光を放つわけじゃないんだな。

これで、音・振動・魔力痕跡を抑制してるってことらしい。

…効果があるかどうかは、実際に試してみるしかないか。」


ラースは上下にふわふわと漂いながら、不思議そうに答える。

「クロ、今何かおっしゃっていますか?口を動かしているように見えますが……」


クロは目を見開き、思わず声を上げる。

「おおっ、隠密膜の効果で音が遮断されてるのか!?

ラース!聞こえるか!?おーい!」


手を叩きながら叫んでみるが、ラースにはまったく届いていない。

空間に響くはずの音が、まるで吸い込まれるように消えているようだ。


コミュニケーションが不便なものの、音が遮断されていることが分かり、少しだけ安心する。


大げさに身振り手振りをしながら、実験しに行くことをラースに伝える。

「"問題ない"、"少しだけ"、"行こう"!」


意図が伝わったようで、ラースはくるりと一回転した。

「スキルで音を抑制することに成功しているようですね!

分かりました!」


------------


身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》

尻尾系:《ファントムテール》

肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》


---

エコロームさんです。

挿絵(By みてみん)


次回2025/10/10、18話を更新予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼ツギクル
★押してもらえると嬉しいです★
(ランキング集計されてるらしいです) ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
おおー、ステルス! 体色の変化だけというのがいいですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ