第1話『闇に目覚める小さな生命』
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夢の中——
——深緑と褐色が混ざったふわふわな毛並みの巨体に、大きな琥珀色の瞳。
石柱庭の中を鳥が飛び交い、小動物は皆、尊敬のまなざしで我が友を見つめている。
…なぜ君はこんなにも自然で、美しく煌めいているのか——。
——「ったく…クロ。困難があるから人生は潤うんだぜ」
屈託のない笑顔を向けてくる銀髪の青年。
深い藍色の瞳を持つ友人は、迷いなくこちらを見据えている。
…なぜ君は困難を前にして、笑い、喜び、立ち向かえるのか——。
——激しく揺れる洞窟内を、短い手足で駆け抜ける。
上空では、雷を帯びた龍がこちらを見据えている。
光の粒子が舞い上がる中、人々は困難に立ち向かい、手を取り、祈りをささげている——。
私は生命そのものを尊敬する。
ああ、煌めく生命よ。
なぜこんなにも儚く、なぜこんなにも輝いているのか。
私もいつか——。
******
——暗闇だった。
意識が戻る。
だが、何かがおかしい。
視界はぼんやりと揺らぎ、はっきりしない。
遠くには、薄い光の筋が見えている。
『…ここは…?』
しゃべったつもりだったが、声が出ていなかった。
喉が動いた感覚がない。
少し疑問を感じたが、すぐに他のことが気になった。
——手も足も、なにもかも感覚が違う。
肌には毛のようなものが覆っている。
それに、指先の感覚も…爪…?
細長い指の先には鋭いかぎ爪が生えていた。
「…なんだこれ、俺は…?」
今度は声が出た。
何か感覚がつながったような気がした。
しゃべれるのか…。
少しほっとして、もぞり、と身をよじる。
体が軽く、ふわ、と柔らかい何かが背中に触れる。
尻尾…?
『…俺は、小さい生き物になったのか?』
確証はないが、身体の違和感はそれを示していた。
ネズミ…にしてはフサフサしツヤのある尻尾。
ならばリスかと思ったが、脇に妙な膜のようなものがある。
四肢の感覚、毛の覆い方、尻尾の存在——。
とにかく人間じゃないことは確かだった。
冷たい空気の流れ。
湿った床の感触。
遠くで何かが滴る音。
夢にしてはリアルだ。あまりにも、リアルすぎる。
足場の確認を試みる。
フサフサ動く尻尾が妙な感じだが、バランスは取りやすい。
足元は石の床になっており、足裏から湿り気が伝わってくる。
四肢の感覚を頼りに、周囲を見回す。
思ったよりも周囲の構造が見える。
この身体は夜目がきくのかもしれない。
自然のものではなさそうなのに、壁や天井が一部飛び出したり、柱があったり、 不思議な構造のようだ。
付近しか見えないので、広さのほどは分からない。
目を凝らして見える範囲を見渡すと、すぐ近くに中空に浮かぶように何かがあることに気づいた。
それは、中途半端に壁から突き出た石柱で、そこには、びっしりと模様が刻まれていた。
その一部は淡く輝いている。
この刻印はおそらくただの装飾ではない。
どこか計算された線のように、石柱の表面を巡っている。
意識を集中する——その瞬間、何かが脳内を駆け抜けた。
**《サーチ》——発動。認知向上。**
唐突に視界が広がる。
暗闇に埋もれていた不可思議な空間が何倍にも広がっていた。
目の前の石柱が、それ1つだけでなく、この空間のいたるところに突き出ているのがわかった。
大きさもばらばらで……なんというか秩序がない。
1つ共通しているのは、そのすべてに刻印が刻まれていること。
「……何かの文字か?」
じっと見つめる。
意味があるのか?
「……ダメだ」
しばらく文様を目で追ってみたところ文字のようだが、解読はできそうにない。
何か意味がある。だが、それが何なのかは、まだ分からない。
「とにかく…」
この無秩序に見える空間を探索するしかない。
一呼吸して、決意する。
この身体で、ここで——生き抜くためには。
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便利系:《サーチ》
2025/11/1 プロローグ追加、文章補正
2025/11/2 文章補正




