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第95話  影と光

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

王都の夜は依然として深く、静寂が支配していた。城の庭で影の力を掌握した蓮は、ゆっくりと深呼吸しながら拳を握る。黒蓮との戦いを経て、彼は影の真の力を理解し、それを自らのものとした。


(影は俺のもう一つの姿――俺の意志がなければ、ただの闇にすぎない)


影を操る力は強大だが、単なる模倣に留まらず、自分自身がどう使うかが鍵になる。そのことを黒蓮との戦いで痛感した。


リーナとイリスが近寄る。


「蓮、少しは休んだほうがいいわ」


リーナが優しく微笑みながら言う。しかし蓮は首を横に振った。


「いや、もう一つ試したいことがある」


「まだやるの?」


イリスが呆れたように溜息をついた。


「影の力を掌握したなら、それで十分じゃない?」


「いや……影の力を完全に理解するには、もう一つの要素が必要なんだ」


蓮はゆっくりと右手を上げた。彼の手のひらには、わずかに光の粒が集まり始める。


「光……?」


リーナとイリスが驚きの声を上げた。


影を操る力を得た今、蓮は逆に「光」の力にも意識を向ける必要があると考えていた。影は光があるからこそ生まれるもの――二つの力は表裏一体であり、どちらか一方だけでは完全ではない。


(俺の魔力は全属性を扱える……ならば、光の力も極めてみせる)


蓮は集中し、掌に浮かぶ光の粒を増幅させる。しかし、それは影の力のように自然とは馴染まず、どこかぎこちなかった。


「……まだ不完全か」


光はまるで蓮を拒むかのように揺らぎ、やがて消えてしまう。


「影の力を手にしたことで、光の力が拒絶しているのかもしれないわね」


イリスが鋭い指摘をする。


「かもしれないな……だが、俺は光も影も同時に扱えるはずだ」


蓮は再び意識を集中し、今度は影と光を同時に生み出そうと試みる。しかし、影が広がると光がかき消され、光が強まると影が薄れてしまう。


(まるで水と油みたいに、反発し合っている……)


彼は思わず歯を食いしばった。影の力を得たことで、今度は光の力が遠ざかってしまったのかもしれない。しかし、それを克服しなければ、影と光の力を真に統合することはできない。


リーナがそっと蓮の手を握った。


「蓮、焦らないで。あなたなら、きっとできるわ」


その言葉に、蓮の心が少し落ち着いた。


(そうだ……俺はただ力を振るうだけじゃない。大切なのは、どう使うかだ)


彼は深呼吸し、今度は無理に影と光を同時に出そうとせず、それぞれをゆっくりと調和させるよう意識を向けた。


すると、蓮の足元に淡い影が広がり、その中心に柔らかな光が灯った。


「……成功したの?」


イリスが驚きの声を上げた。


蓮はゆっくりと頷く。


「完全ではないが……今までとは違う感覚がある」


影と光は反発するものではなく、互いに補い合うもの。力ずくで融合させるのではなく、それぞれを理解し、調和させることで共存できるのだ。


(影と光――これが俺の新たな力)


蓮の足元から影が広がり、その上に淡い光が宿る。影は深みを増し、光はより鮮明に輝く。


「これなら……」


彼は剣を構え、新たな技の可能性を探るように振るう。すると、影が伸びると同時に光がその輪郭を照らし、まるで剣が二重に存在しているかのような視覚効果が生まれた。


「すごい……!」


リーナとイリスが目を見張る。


蓮はゆっくりと剣を収めると、満足げに息をついた。


「これが……影と光の力を同時に操る感覚か」


確かに、影と光は対極にある。しかし、それは相反するのではなく、互いに支え合うものだった。


(これがあれば、戦いの幅がさらに広がる)


蓮は新たな力を胸に刻み、夜空を見上げた。


その瞬間、遠くから警鐘の音が響いた。


「何……!?」


リーナとイリスも驚き、すぐに王城の方へ目を向ける。


兵士たちが慌ただしく動き出し、王城の塔から魔法の光が放たれる。それは緊急事態を知らせる合図だった。


「蓮、急ぎましょう!」


リーナの言葉に、蓮は素早く動き出す。


(まさか……敵の襲撃か!?)


王都は今まで平穏だった。しかし、帝国の動きが活発になっている以上、何が起きてもおかしくはない。


蓮たちは王城へ向かって駆け出した。


――影と光の力を得た今、蓮は次なる戦いへと足を踏み入れる。

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