表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/201

第91話  影の覚醒

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

王都の夜は静寂に包まれ、空には無数の星が瞬いていた。


蓮は城の庭で、影の力の制御を試みながら考えを巡らせていた。


影の王が遺した「均衡を護る者」としての力。それが一体何を意味するのか、未だに確信は持てないままだ。だが、蓮の中には一つの決意があった。


「……俺は、この力を守るために使う」


彼はそっと目を閉じ、深く息を吸い込んだ。



蓮は影の力を解放し、手のひらに集中させた。すると、黒い霧のようなものがゆらりと揺れ、地面に伸びる。


「……影の分身、か」


先ほどの影の実験で得た一つの答え。それは、影が自身の分身となる可能性を秘めていることだった。


蓮は影に意識を向けながら、分身を作り出すことを試みる。


(影は俺の意思に応じて形を変える……ならば)


彼が集中すると、黒い影が蠢き、徐々に人の形を成していった。


「――!」


ついに、蓮と同じ姿の影が目の前に現れた。


「これが……影の分身」


蓮が腕を動かすと、それに呼応するように影の分身も同じ動きをする。しかし、完全な独立体ではないらしく、まだ自由には動かせないようだった。


「なるほどな……これを自在に操れるようになれば、戦闘でも役に立つ」


蓮は影の分身を試しながら、新たな能力の可能性を探っていく。



その頃、城のバルコニーではリーナとイリスが並んで夜空を見上げていた。


「……蓮、また修行してるわね」


リーナが苦笑しながら呟く。


「彼らしい」


イリスも静かに頷いた。


「でも、最近の蓮は少し変わった気がするの」


「変わった?」


イリスがリーナを見つめると、彼女は少し考えてから言葉を選んだ。


「私たちと過ごす時間を大切にしてくれているというか……前よりも、私たちに心を開いてくれている気がするの」


「……そうかもしれない」


イリスもそれを感じていた。


彼の優しさ、彼の強さ、そして彼が抱える葛藤――。


「ねぇ、イリスは蓮のこと、どう思ってる?」


「……」


イリスは言葉に詰まり、しばらく黙った。


だが、やがて小さく微笑みながら、そっと胸に手を当てる。


「たぶん……好き、なのかもしれない」


リーナは驚いたようにイリスを見つめたが、次の瞬間には自分も同じ気持ちであることを悟った。


「……私も、同じかもしれない」


二人は顔を見合わせ、少し照れ臭そうに微笑んだ。



夜が更け、蓮は影の分身の訓練を終えた。


「まだ完璧ではないが……この力は、きっと俺たちの役に立つ」


蓮は拳を握りしめ、決意を新たにする。


影の力は未だ謎に包まれている。しかし、これから先、蓮はこの力をどう使うかを自らの意志で決めなければならない。


彼はゆっくりと夜空を見上げた。


(影の王が託した力……俺が均衡を護る者だというなら、その意味を見出してみせる)


静かな夜風が吹き抜ける中、蓮は新たな力の片鱗を手にし、次なる戦いへと備えていた。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ