第8話 シャムとの決闘
盗賊団『黒の牙』の幹部、シャムとの一騎打ちが始まる。
圧倒的な剣技を誇るシャムと、異世界の力を秘めた蓮――互いの信念がぶつかる戦いの結末は!?
闇が森を包んでいた。わずかな月光と焚き火の炎だけが、二人の影を長く地面に落としている。
「……いい度胸だな」
シャムが剣を片手に不敵に笑う。その瞳は獣のように鋭く光っていた。
「お前みたいな甘ちゃんが、俺に勝てると思ってんのか?」
「勝てるかどうかじゃない」
蓮は静かに剣を構えた。
「俺は、お前を倒す必要がある。それだけだ」
「ハッ……戯言は戦場じゃ通用しねえぜ?」
シャムの笑みが消えた瞬間、彼の姿が霞んだ。
(来る――!)
蓮が直感した時には、すでにシャムの剣が目前まで迫っていた。
「遅え!」
ギィンッ!
火花を散らしながら、蓮は剣を受け止めた。
衝撃が腕に響く。まるで全身を殴られたような感覚だった。
(なんて重さだ……!)
「ほらよッ!」
シャムは剣を滑らせ、そのまま体をひねって蹴りを放つ。
「ぐっ……!」
蓮は咄嗟に腕で防いだが、軽く跳ね飛ばされた。
「そんなモンかよ?」
シャムは余裕の笑みを浮かべながら、再び間合いを詰める。
(くそっ、速い……!)
だが、蓮も負けてはいない。
「≪エアブースト≫!」
風の魔法を足元に纏い、一気に距離を詰める。
「おっと!」
シャムが驚いたように剣を振るうが、蓮はその刃を紙一重でかわし、懐に飛び込んだ。
「喰らえ!」
蓮の剣が閃く――
しかし、シャムの表情は変わらなかった。
「甘い」
瞬間、蓮の腕が弾かれた。
「なっ……!?」
気がつけば、シャムの剣が蓮の喉元を捉えていた。
「止めを刺すか?」
シャムの冷ややかな声。
蓮は歯を食いしばった。
(ダメだ……このままじゃ、勝てない)
「……へへっ」
不意に、シャムが笑った。
「なんだよ、お前。ここで諦めるのか?」
蓮は拳を握りしめる。
(まだだ……俺には――)
「≪エンチャント・フレイム≫!」
剣に炎を宿す。
「ははっ、いいねえ!」
シャムの目が輝く。
「だったら――こっちも本気でいくぜ!」
閃光のような剣戟が交差する。
蓮の炎の剣と、シャムの疾風のごとき斬撃。
お互いに譲らない攻防が続く。
「このッ……!」
蓮が踏み込み、シャムの剣を弾く。
「ッ!!」
一瞬の隙。
蓮は渾身の一撃を放った。
「――ぐはっ!!」
シャムの剣が宙を舞う。
地面に膝をついたシャムは、苦笑した。
「負けた……か」
蓮は深く息を吐きながら剣を納めた。
「……決着だ」