第76話 決戦、遺跡の攻防
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「ふん、貴様ら如きが我が計画の邪魔をするとは……。実に不快だ」
カール・バルトは顔を歪めながら、手にした魔導書を開いた。その瞬間、周囲の空気が震え、黒い雷が迸る。
「すべて焼き払え、『黒雷の壁』!」
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
天井から漆黒の雷が迸り、遺跡の通路を塞ぐように降り注ぐ。壁一面が焼け焦げ、空間を完全に仕切る結界と化していた。
「くそ、逃げ道を塞ぐつもりか!」
シャムが剣を構えながら叫ぶ。
「いや、違う……この黒雷はただの壁じゃない」
蓮は眉をひそめながら、アイテムボックスの中に手を突っ込む。そして、以前手に入れた『魔力視の水晶』を取り出し、黒雷の結界を見つめた。
(なるほど……この雷、近づけば"吸収"される仕組みか)
魔力が込められた存在が接触すればするほど、黒雷の結界は肥大し、最終的にはすべてを飲み込む。まさに消耗戦を仕掛けるための策。
「このままだと、先に進めないどころか、俺たちが魔力を削り取られるな」
「おいおい、どうすんだよ? あの壁をぶち破る手段でもあるのか?」
シャムが振り向くと、蓮はニヤリと笑った。
「あるさ。無限アイテムボックスならな」
彼はすぐさま別のアイテムを取り出した。
『魔力中和の宝珠』
これは強力な魔法に干渉し、それを打ち消す効果を持つレアアイテムだった。
「いくぞ!」
蓮は宝珠を壁に向かって投げつけた。
パァァァン!!
強烈な閃光が瞬き、黒雷の壁が急速に霧散していく。
「なっ!? 我が魔術が……!」
カールが驚愕の表情を浮かべる。
「お前の策は見破った。今度はこっちの番だ!」
蓮はそう言い放ち、仲間たちと共に前進した。
黒雷の壁が消えたことで、帝国の兵士たちは一斉に剣を構えた。
「囲め! 奴らを逃がすな!」
帝国の指揮官が怒声を飛ばす。
「シャム、イリス、エルシア! それぞれ前衛、中衛、後衛に分かれて戦うぞ!」
「おう!」
「了解!」
「やるわよ!」
シャムは抜刀し、二人の帝国兵を一閃。剣術の腕前は蓮の仲間の中でも随一であり、その速さは並の兵士では目で追えないほどだった。
「くそっ……!」
帝国兵が次々と倒れていく。
一方、イリスは魔法で支援する。
「《氷槍》!」
空中から鋭い氷の槍が降り注ぎ、帝国兵の動きを封じる。
「ちぃっ、魔術師か!?」
「蓮、今のうちに!」
エルシアが弓を引き絞り、敵の後衛を狙撃した。
「やるな!」
蓮は隙を見て、アイテムボックスから爆裂魔法の触媒を取り出す。
「お返しだ……!《爆裂の炎》!」
ドォォォン!!!
爆炎が巻き起こり、敵陣を吹き飛ばした。
帝国兵たちは悲鳴を上げながら、次々と倒れていく。
「クソッ、やはり手練れか……!」
カールは苛立ちながら呪文を唱え始める。
「まだだ……まだ終わらん! この場で決着をつけてやる!」
蓮たちが戦っている最中、カール・バルトは魔導書を開き、詠唱を続けていた。
「汝、我が声に応えよ……我が名はカール・バルト。契約の下、汝をこの場に召喚する!」
すると、地面が震え始めた。
「な、なんだ!?」
蓮たちはその異変に気づき、警戒を強める。
ゴゴゴゴゴ……!!
地面が裂け、そこから"異形の存在"が現れた。
――それは巨大な魔獣だった。
黒い甲殻に覆われた体、無数の赤い目、そして異様に長い腕を持つ怪物。
「《召喚獣・奈落の従者》……!」
カールが満足げに微笑んだ。
「こいつはお前たち程度の雑魚を片付けるのに十分な力を持っている……さあ、絶望するがいい!」
魔獣が唸り声を上げ、蓮たちに向かって突進してきた。
「くそっ、デカいな……!」
「蓮、どうする!?」
蓮は冷静にアイテムボックスを開いた。
(巨大な敵なら、やることは一つだ)
彼は奥の方から"ある武器"を取り出す。
「……こいつの出番だな」
それは――《魔導大砲》だった。
蓮は砲口を魔獣に向け、魔力を込める。
「《魔導砲・極光破》!!」
ズドォォォン!!
巨大な光線が放たれ、魔獣を直撃。
「ギャアアアアア!!」
魔獣は悲鳴を上げながら消滅していく。
「バ、バカな……!?」
カールは愕然とした表情を浮かべた。
「終わりだ、カール・バルト」
蓮が剣を構え、一歩踏み出す。
帝国の陰謀は、今ここで潰えるのか――!?
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