第75話 異世界の来訪者
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光の柱が遺跡の入り口にそびえ立ち、その輝きは夜の闇を切り裂くかのようにまばゆかった。蓮は即座に防御態勢を取り、仲間たちも警戒を強める。
「これは……!?」
リーナが驚きの声を上げる。
「まさか、本当に召喚を……?」
エルシアの声にも緊張が滲む。
蓮はカール・バルトを鋭く睨んだ。
「貴様、まさかまた異世界の人間を召喚するつもりなのか?」
カールは不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと手を広げる。
「正確には、"この世界に最も適した存在を呼び出す"のだ」
その言葉の意味を測りかねているうちに、光の柱の中から"何か"が現れた。
光が収束し、そこに立っていたのは、一人の男だった。
「う……ぉ……」
男はぐらりと揺れ、膝をついた。
見た目は二十代後半、長めの黒髪を乱し、灰色の外套を羽織っている。異世界の衣服ではなく、この世界の戦闘用のローブに似た装いだ。
蓮は警戒を解かず、男を観察する。
「おい、お前……どこから来た?」
男はゆっくりと顔を上げた。その目は虚ろだったが、焦点が定まると、蓮を鋭く見据えた。
「……どこから……俺は……」
「フフフ……」
カールが満足げに笑う。
「ようこそ、新たなる召喚者よ」
その瞬間――
バシュン!!
男の体から異様な魔力が吹き出し、周囲の空気を震わせた。
「くっ……!?」
蓮は咄嗟に防御魔法を展開する。
「おい、まさか……こいつ」
「……そうだ。彼は"適応された召喚者"だ」
カールが誇らしげに言った。
「帝国はな、何度も召喚を試みていたのだよ。その過程で我々は気づいた――異世界人はこの世界に"適応"するまでに時間がかかる。それならば、適応する前の段階で"帝国に従うよう調整すればいい"とな」
「まさか、こいつ……洗脳されてるってのか!?」
シャムが叫んだ。
「その通り。我々は召喚と同時に精神干渉を施し、忠実なる兵士として生み出すことに成功した」
蓮は歯を食いしばる。
「召喚者を"礎"とするとは、つまりこういうことか……!」
しかし、その時――
「……ちがう……」
男がかすかに呟いた。
「なに?」
カールが眉をひそめる。
「違う……俺は……こんなことのために……」
男は苦しそうに頭を抱えた。
蓮はその隙を見逃さなかった。
「シャム、行くぞ!」
「おう!」
二人は一気に距離を詰め、男を捕えようとする。
だが――
バシュゥゥン!!
突如、男の体から黒い魔力が炸裂した。
「ぐっ……!?」
蓮は咄嗟にアイテムボックスから防御の魔道具を取り出し、結界を張る。
「こいつ、完全に支配されてるわけじゃねぇのか!?」
シャムが叫ぶ。
「……ああ、まだ"戦える"……!」
蓮はアイテムボックスに手を入れ、状況を打破する手段を探した。
(支配を解くには、強力な精神干渉を解除する必要がある……だが、正面からやっても時間が足りない)
そこで、ある道具を取り出す。
「こいつを試してみるか……!」
取り出したのは"精神浄化の聖水"。聖属性の魔道具の一種で、強い精神干渉を解く効果がある。
「シャム、こいつの動きを止められるか?」
「任せろ!」
シャムは剣に魔力を込め、一瞬の隙を突いて男の腕を斬りつけた。
「ぐっ……!」
男が苦悶の声を上げる。その隙に――
「これでも飲んどけ!」
蓮は聖水を男の口に押し込んだ。
ゴクン……
「……!?」
男の体がびくりと震え、黒い魔力が霧散する。
「……俺は……?」
「正気を取り戻したか?」
蓮が慎重に尋ねると、男はゆっくりとうなずいた。
「……帝国に……利用されていた……?」
「その通りだ」
蓮が頷いた瞬間、カールが舌打ちした。
「ちっ、余計なことを……! 貴様ら、まだこの戦いは終わっていないぞ!」
帝国の兵たちが一斉に剣を構える。
「シャム、イリス、エルシア! 一気に片付けるぞ!」
「おう!」
「了解!」
新たな戦いが始まる。
だが、蓮たちはすでに戦闘態勢を整えていた。
帝国の策謀は未だ終わらず、蓮たちはさらなる激戦へと突入する――!
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