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第70話  蒼炎の決戦

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

「フフフ……面白い。この私に抗おうというのか?」


冥獄の王の無数の眼が怪しく光る。空間がひしゃげるほどの圧力が神殿を包み、黒い霧が渦を巻くように広がっていた。


だが、その闇を断ち切るかのように、イリスの蒼炎が空間を照らす。


「蓮、準備はいい?」


イリスが振り返りながら言った。その瞳には、確固たる意志の炎が宿っている。


「ああ、やるしかないだろ」


蓮は剣を握り直した。シャムは口元を拭いながら不敵に笑う。


「最終決戦ってやつだな。燃えてきたぜ」


「まったく……最後まで無茶をするわね」


リーナが溜息混じりに微笑みながら魔法陣を展開し、エルシアも杖を強く握る。


「勝つわよ」


彼らの決意に呼応するように、イリスの体が輝き始めた。


「ならば……」


冥獄の王が両腕を広げる。瞬間、神殿の壁という壁から黒き触手が伸び、一斉に蓮たちへ襲いかかった。


「くるぞ!」


蓮が叫ぶと同時に、蒼炎が天井から降り注ぐ。


「邪魔よ!」


イリスが空中で舞いながら息を吹きかけると、青白い炎が触手を焼き尽くした。


「調子に乗るな!」


冥獄の王が拳を振るうと、黒い稲妻が空間を裂いた。その雷撃はイリスを直撃し、彼女は空中でバランスを崩す。


「くっ……!」


「イリス!」


蓮が跳躍し、空中で彼女を受け止める。しかし、その瞬間を狙い、冥獄の王の闇の刃が二人を貫かんと迫る。


「させるかよ!」


シャムが横から飛び込み、蒼い剣で闇の刃を弾いた。


「援護するわ!」


リーナがすかさず炎の魔法を撃ち込み、エルシアも封印の魔法陣を展開する。


「"封呪の陣"!」


エルシアの詠唱が響くと、冥獄の王の動きが一瞬だけ鈍った。


「今よ、蓮!」


リーナが叫ぶ。


「うおおおおお!!!」


蓮は渾身の力を込め、剣を振り下ろした。剣から放たれた閃光が冥獄の王の胸を直撃する。


だが――


「ククク……その程度か?」


光が消えた時、冥獄の王は微笑んでいた。彼の体に傷一つなかった。


「なっ……」


「やはり、絶対的な存在には届かぬか」


冥獄の王が冷笑する。


その時――



「ならば……限界を超えるまでよ!」


イリスがそう言うと、その体が眩い蒼き炎に包まれた。


「この炎は……?」


シャムが目を見開く。


「"蒼炎の解放"。私の真なる力――今、解き放つ!」


イリスの翼が大きく広がり、その鱗が白金に輝いた。まるで蒼き光の化身のように、美しく、そして恐ろしいほどの魔力を放っている。


「ほう……少しは楽しめそうだな」


冥獄の王が興味深げにイリスを見据える。


「皆、力を貸して!」


イリスが叫ぶ。


「当然!」


「言われるまでもない!」


蓮たちは一斉に力を解放した。


蓮の剣が黄金の輝きを放ち、シャムの体からは蒼雷が迸る。リーナの炎は真紅に燃え上がり、エルシアの魔法陣は白銀の光を帯びた。


「ここで終わらせる!」


蓮たちは一斉に突撃する。



「行くぞ、冥獄の王!」


蓮が先陣を切り、黄金の剣を振るう。


冥獄の王は黒き刃を繰り出すが、イリスの蒼炎がそれを焼き尽くす。


「貫け、"雷閃蒼刃"!」


シャムの蒼雷の剣が冥獄の王の腕を斬り裂く。


「焼き尽くせ、"紅蓮爆炎"!」


リーナの炎が冥獄の王の胸を焦がす。


「封じろ、"神域封陣"!」


エルシアの魔法が冥獄の王の動きを止める。


「とどめだ!」


蓮とイリスが同時に突進する。


「"聖焔一閃"!!」


蓮の剣が蒼炎を纏い、冥獄の王の心臓へと突き刺さる。


「ぐ……おおおおお……!」


冥獄の王の体が崩れ、空間が崩壊し始める。


「……これで、終わりだ」


蓮が剣を引き抜くと、冥獄の王は崩れ落ち、やがて黒き霧となって消え去った。


そして、神殿に静寂が訪れた。


「やった……のか?」


シャムが肩で息をしながら呟く。


「……ああ、勝ったんだ」


蓮が剣を納め、仲間たちを見渡す。


イリスは静かに微笑んだ。


「お疲れさま、蓮」


「お前もな、イリス」


彼女の手を握ると、蓮は深く息をついた。


こうして、冥獄の王との決戦は幕を閉じた。


しかし、戦いはまだ終わりではない。


次なる試練が、すでに待ち構えている――。

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