表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/201

第68話  災厄の序章

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

「次なる"災厄"は、すでに目覚めつつある……!」


ガルヴァンの言葉に、蓮は剣を構えたまま警戒を強めた。


「奈落の獣を倒したというのに、まだ何かあるってのか……!」


シャムが悔しげに拳を握る。リーナやエルシアも油断なく魔力を練り、次なる戦いに備えていた。


だが、そんな中、イリスが奈落の獣との戦闘で疲労し、膝をつく。


「イリス!」


蓮が駆け寄ると、イリスは苦笑しながら手を振った。


「平気よ……ただ、少し無理しちゃったみたい……」


彼女の体を包んでいた蒼白い光が薄れ、竜化が解けていく。それはつまり、しばらくの間、彼女が竜の力を使えないことを意味していた。


「どうやら、次の戦いは私抜きで頑張ってもらうことになりそうね」


イリスの言葉に、蓮たちはますます警戒を強める。


ガルヴァンはそんな様子を見て、くつくつと喉を鳴らした。


「フフフ……いいぞ。その怯えた目、絶望の予感に満ちた表情こそ、我が主への最高の供物となる」


彼がそう言うと、崩れた祭壇の奥で何かが蠢き始めた。


「……っ!」


全員の背筋が凍りつく。


祭壇の中央に刻まれた巨大な魔法陣が、漆黒の光を放ちながらゆっくりと回転し始めたのだ。


「これは……!?」


エルシアが驚きの声を上げた。


「この魔法陣……まさか、封印を解くためのもの!?」


「その通りだ」


ガルヴァンは満足げに頷く。


「奈落の獣は、単なる"鍵"に過ぎん。本当に目覚めさせるべき存在は、これから生まれ出ずるのだ」


「ふざけるな!」


蓮が怒りを込めて剣を振るう。


「"崩滅の閃光"!」


眩い光の刃がガルヴァンへと放たれる。だが――。


「無駄だ」


ガルヴァンは微動だにせず、目の前に現れた黒い壁が攻撃をかき消した。


「こいつ……!?」


リーナが驚く。


「すでに"災厄"の力はこの地に満ちつつある。この身に宿る闇もまた、主の恩寵によって強化されているのだ」


ガルヴァンの足元で黒い靄が渦巻き、その身体を覆い始める。


「ちっ、こいつも倒さなきゃならねえってことか!」


シャムが剣を構え、前へと踏み出す。


「ええ、でも……それだけじゃないわ」


エルシアが魔法陣を指差しながら、厳しい表情で言う。


「この儀式を止めなければ、本当に"災厄"が目覚めてしまう!」


「つまり……ガルヴァンを倒しつつ、魔法陣もどうにかしないといけないってことか」


蓮は周囲を見渡し、作戦を考える。


「エルシア、リーナ、イリスは魔法陣の制御を試みてくれ。俺とシャムでガルヴァンを抑える!」


「了解!」


仲間たちは即座に動き出した。


だが――その瞬間。


「……遅い」


ガルヴァンの目が妖しく光った。


次の瞬間、魔法陣が強烈な光を放ち、空間が歪む。


「な、何だ!?」


「……間に合わなかった!?」


エルシアが焦りの声を上げる。


そして――。


神殿の奥底から、不気味な黒い腕がゆっくりと這い出してきた。



「――ククク……久しぶりだな、この空気」


不気味な声が響く。


「この世界に再び、"終焉"をもたらす時が来たか……」


神殿全体が震え、壁が崩れ落ちる。


「これは……!?」


シャムが息を呑む。


現れたのは、黒き霧に包まれた異形の巨躯。


その身体には、無数の目が光り、背中からは異質な触手が伸びていた。


「まさか……"冥獄の王"!?」


エルシアが青ざめる。


「知ってるのか!?」


蓮が問うと、エルシアは震える声で答えた。


「……伝説に語られる、かつて世界を滅ぼしかけた邪神。その一端に過ぎない存在だけど、それでも……強大な力を持っている……!」


「ククク……面白い。貴様らがどれほど足掻こうが、この身の復活は止められん」


冥獄の王が腕を掲げると、空間が歪み、周囲の魔力が吸い込まれるように揺らいだ。


「まずは、その絶望を味わうがいい」


次の瞬間、黒き波動が放たれた。


「くっ……!」


蓮は咄嗟に剣を振るい、防御を試みるが――。


衝撃が炸裂し、蓮たちは吹き飛ばされる。


「ぐっ……!?」


全員が床に叩きつけられ、神殿内に悲鳴が響いた。


「これが……災厄の力……!?」


リーナが呻く。


冥獄の王がゆっくりと歩を進める。


「さて……絶望に沈む準備はできたか?」


その言葉に、蓮は震える身体を起こしながら、剣を握りしめた。


「……そんなもん、させるわけねえだろうが」


彼の瞳には、まだ炎が灯っていた。

ブックマーク・評価・いいね、出来れば感想とレビューをお願いします!

モチベーション向上のため、よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ