第67話 奈落の獣との死闘
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「"崩滅の閃光"!」
蓮が放った光の剣閃が奈落の獣を直撃し、爆発的な光が神殿内に広がった。だが――。
「……効いてねえのか?」
光が収まると、そこに立つ奈落の獣は傷一つ負っていなかった。
「こいつ……普通の攻撃じゃ倒せないみたいね」
リーナが苦い顔でつぶやく。
黒き獣の身体は異様な質感をしていた。まるで闇そのものが凝縮されたかのように、刃を通さず、魔法の衝撃も吸収してしまう。さらに、無数の眼が蠢き、蓮たちの動きをすべて見透かしているかのようだった。
「ならば、どうすればいい……?」
シャムが歯を食いしばりながら問いかける。
「……"力の核心"を破壊するしかないわ」
エルシアが鋭い眼差しで奈落の獣を観察しながら言った。
「この怪物の魔力の流れを読んでみたけれど、本体を覆う闇はただの防壁よ。内部にある"核"を破壊しない限り、いくら攻撃しても無意味……!」
「つまり、どうにかして内部を狙う必要があるってことか……」
蓮は眉をひそめる。
奈落の獣は低く唸ると、巨大な腕を振り上げ、次の攻撃を仕掛けてきた。
「来るぞ!」
蓮が叫ぶと同時に、奈落の獣の腕が地面に叩きつけられる。轟音とともに衝撃波が広がり、神殿の床が砕け散った。
「くっ……!」
蓮たちは咄嗟に回避したが、衝撃でバランスを崩しそうになる。
「このままじゃジリ貧ね……」
リーナが息を切らしながらつぶやく。
そのとき、神殿の入り口から光が差し込んだ。
「お待たせ! 派手にやってるわね!」
軽やかな声とともに、一人の女性が飛び込んできた。
「イリス!」
蓮が驚きながらも安堵の表情を浮かべる。
空間を裂くように現れたのは、竜人の少女イリスだった。青銀色の髪をなびかせ、空中で優雅に回転しながら着地する。
「遅れてごめんなさい。ちょっと準備に時間がかかっちゃったのよ」
「準備?」
「ええ。こいつ……普通の攻撃が通じないんでしょ?」
イリスは目を細めると、右手を掲げ、魔力を集中させた。
「だったら、"竜の力"を使うしかないわよね!」
イリスの体から蒼白い光が溢れ出した。
「こ、これは……?」
シャムが目を見張る。
「イリス……まさか、お前……」
蓮も驚愕する。
「ええ、ちょっと本気を出すわよ!」
次の瞬間、イリスの身体が光に包まれ、彼女の姿が変化していった。
青銀の髪が輝きを増し、瞳は黄金に染まる。背中からは大きな竜の翼が広がり、手足の爪が鋭く伸びる。そして、その周囲には凄まじい魔力が渦巻いていた。
「"蒼天の竜化"……!」
エルシアが驚きの声を上げた。
「イリス、あんたそんな力を……!」
リーナも圧倒される。
「へへっ、私も伊達に古代竜やってないのよ!」
イリスは軽くウインクすると、奈落の獣に向かって飛び出した。
「さあ、どこまで耐えられるかしら?」
イリスが爪を振るうと、青白い閃光が走る。その一撃が奈落の獣の黒い身体を裂き、空間ごと引き裂くような衝撃が生まれた。
「……効いてる!?」
リーナが驚きの声を上げる。
「イリスの攻撃は、奈落の獣に有効みたいね!」
エルシアが叫ぶ。
「ならば、俺たちも――」
蓮は剣を構え、イリスに続くように奈落の獣へと突撃した。
イリスの攻撃で一瞬怯んだ奈落の獣だったが、すぐに反撃を開始した。
無数の黒い触手が伸び、イリスを包み込もうとする。
「甘いわね!」
イリスは素早く旋回し、触手をかわしながら口を開いた。
「"蒼天の咆哮"!!」
青白い炎が彼女の口から放たれ、奈落の獣の身体を焼き尽くす。
その隙を突き、蓮が一気に距離を詰めた。
「今だ、蓮!」
「おう!!」
蓮は剣に全魔力を込めた。
「"崩滅の閃光・極"!!」
眩い光が剣先から放たれ、奈落の獣の核へと突き刺さる。
「グォォォォ……!!!」
奈落の獣は苦痛に満ちた咆哮を上げ、激しくのたうち回った。
そして――。
黒い身体が次第に崩れ、奈落の獣は塵となって消え去った。
「……終わった、か?」
蓮は剣を構えたまま息を整える。
「やったね!」
イリスが笑顔で着地する。
「ふう……ギリギリだったな」
シャムが安堵の息を吐いた。
だが、その時――。
「……まだ終わりではない」
崩れた祭壇の奥から、ガルヴァンが立ち上がった。
「くっ、まだ動けるのか!」
蓮が剣を構え直す。
「……フフ、だが、貴様らに勝ち目はない」
ガルヴァンは不敵な笑みを浮かべながら、闇の魔法陣を展開した。
「次なる"災厄"は、すでに目覚めつつある……!」
蓮たちの戦いは、まだ終わらない――。
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