第64話 神殿奪還
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王城の大広間で、蓮たちは神殿奪還の作戦を立てていた。
「神殿は魔の森の北端、巨大な湖の中心にある浮遊島の上に存在する」
エルシアが魔法で映し出した立体地図を指しながら説明する。
「かつて、この神殿は古代の術師たちがエゼキエルの力を封印するために作り上げた。今もその力は健在だが、誰かが神殿を乗っ取ったことで、封印の魔力が不安定になっている」
「なるほどな。つまり、俺たちは神殿を奪い返し、封印を修復する必要があるってわけか」
蓮は腕を組みながら地図を見つめた。
「敵の正体について、何か分かることは?」
「……確証はないが」
エルシアは一度、言葉を切り、真剣な眼差しで蓮を見つめた。
「おそらく、"エゼキエルの復活を望む者たち"だろう」
「復活を望む者……?」
「かつてエゼキエルが封印された際、その力を崇拝し、いつか復活させようと暗躍していた信奉者たちがいた。今でもその末裔が残っている可能性がある」
「信奉者ね……厄介な連中だ」
シャムが肩をすくめる。
「となると、戦闘は避けられないってわけだな」
「……ええ」
エルシアは静かに頷く。
「彼らは、封印を解き放ちエゼキエルの力を手に入れることで、"世界の真理"に至ろうとしている。しかし、それが何を意味するか、彼ら自身も理解していないでしょう」
「……全てが消滅するっていうのにな」
蓮は眉をひそめる。
「とにかく、今は神殿の奪還が最優先だ。準備が整い次第、出発するぞ」
「了解!」
仲間たちは一斉に頷き、それぞれの役割を確認し始めた。
王都を発った蓮たちは、王国の精鋭部隊と共に魔の森へと向かった。
「……この森、以前よりも魔素が濃くなっているな」
リーナが警戒しながら周囲を見渡す。
森の中は常に薄暗く、漂う魔素の気配は明らかに異常だった。
「エゼキエルの封印が不安定になっている影響かもしれない」
エルシアが神妙な表情で答える。
「森の魔獣たちも落ち着きがない。早めに神殿へ向かうぞ」
蓮の指示で、部隊は足を速めた。
数時間後、ようやく湖のほとりに到着する。
「……あれが神殿か」
蓮が湖の中央を指さす。
霧の立ち込める湖の上に、古びた神殿が浮かんでいた。
「どうやってあそこまで行く?」
シャムが問いかけると、イリスがふんっと鼻を鳴らした。
「我が翼で運んでやろう」
「頼もしいな」
蓮が笑みを浮かべる。
イリスが竜の姿になれば、一度に多くの人間を運ぶことができる。
「では、まず蓮とエルシア、リーナ、それにシャムを先に運ぶ。王国の精鋭たちは、次の便で運ぼう」
イリスがそう言うと、竜の姿へと変身し、蓮たちは彼女の背に乗った。
「しっかり捕まっていろ!」
翼が大きく羽ばたき、一行は空へと舞い上がった。
神殿の敷地へ降り立った途端、蓮たちは異様な気配を感じた。
「……何か、いるな」
蓮が剣を構える。
すると、霧の中からゆらりと黒い影が現れた。
「……来たか」
不気味な声と共に、数十体もの黒装束の者たちが姿を現す。
「お前たちが神殿を占拠しているのか?」
蓮が鋭く問いただすと、その中の一人――明らかに指導者らしき男が前へ進み出た。
「……封印の鍵を求めし者よ。我らの使命を邪魔するつもりか?」
「お前たちの使命が、世界を破滅させることならな」
「愚か者め……"真理"を知ることこそが、この世界の進化なのだ」
男が片手を上げると、黒装束の者たちが一斉に魔法陣を展開した。
「来るぞ!」
蓮が叫ぶと同時に、敵の魔法が飛んできた。
「風障壁!」
リーナが素早く防御魔法を張り、攻撃を防ぐ。
「お前らは後ろの連中を頼む! 俺はあいつを倒す!」
蓮はそう叫びながら、指導者の男へと駆け出した。
「ほう……なかなかの力だな」
男は微笑みながら、黒い剣を抜く。
「だが、貴様に我らの崇高な理想を阻むことはできん!」
「理想とか言ってるが、やってることはただの破滅だろうが!」
蓮は剣を振るい、男と激しく剣戟を交わす。
一方、シャムとリーナ、エルシアも次々と敵を撃破していく。
「はっ、雑魚ばっかじゃねぇか!」
シャムが軽口を叩きながら敵を蹴散らしていく。
「まだ終わりじゃないわ……!」
リーナは杖を掲げ、雷撃を放つ。
「終焉の門が開く……!」
男が魔力を解放し、神殿全体が震えた。
「まずい、封印が……!」
エルシアが焦る。
「やらせるかよ!」
蓮は渾身の力を込め、男を一刀のもとに斬り伏せた。
「ぐ……!」
男は血を吐き、崩れ落ちる。
同時に、神殿を覆っていた闇が晴れ、静寂が訪れた。
「……勝ったか?」
シャムが息を整えながら呟く。
「いや、まだだ。封印を修復しなければならない」
エルシアが前に出る。
こうして、蓮たちは封印の修復へと取り掛かるのだった。
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