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第60話  災厄の王

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。

「ククク……ようやく目覚めることができた……」


深く、低く、不気味な声が戦場に響いた。


蓮は剣を握り直し、黒い魔法陣の中心を睨みつける。そこには、赤黒い霧に包まれた影があった。


「……何だ、あれは?」


シャムが息を呑みながらつぶやく。


霧の奥から、ゆっくりと姿を現したのは、漆黒の甲冑をまとった巨大な男。


その顔は骸骨のように白く、目の奥には血のような赤い光が揺らめいていた。


そして、彼の周囲には圧倒的な闇の魔力が渦巻いている。


「ふむ……この身体で動くのは久しぶりだ」


男は肩を回しながら、ゆっくりと辺りを見回す。そして、彼の目が蓮を捉えた。


「貴様か……私を目覚めさせたのは」


「……お前は何者だ?」


蓮が問いかけると、男は薄く笑った。


「私の名は《災厄の王》エゼキエル」


「エゼキエル……?」


その名に聞き覚えはなかった。しかし、彼がただ者ではないことは、全身を包む魔力の濃密さが証明している。


「貴様がヴァレリアを倒したことで、彼女が残した封印が解けた……」


エゼキエルは腕を広げると、赤黒い魔力が周囲に広がる。


「さあ――我が復活を祝え、そして恐れよ」


その瞬間、地面が裂け、戦場に巨大な黒い柱が次々と出現した。


「っ……この感じ、まずいな」


蓮は直感で理解した。


この男は、四天王とは比べものにならないほどの存在だ。


「蓮、どうする!?」


シャムが叫ぶ。


「……やるしかない」


蓮は剣を構え、エゼキエルに向かって踏み込んだ。


「《雷迅剣》!!」


バチバチと雷を纏いながら、一気に間合いを詰める。


「フッ」


エゼキエルは微動だにせず、蓮の攻撃を迎えた。


「喰らえ!!」


蓮の剣が閃き――


ゴォォンッ!!!


だが、エゼキエルは指一本でそれを受け止めた。


「……なっ!?」


蓮の全力の一撃が、まるで軽く受け流されるように止められたのだ。


「悪くない剣だ。だが……」


エゼキエルの目が赤く光る。


「貴様では、我を倒すことはできぬ」


バゴォッ!!


次の瞬間、エゼキエルの掌打が蓮の腹部を直撃した。


「ぐっ……!!」


蓮の体が弾き飛ばされ、地面に叩きつけられる。


「蓮!!」


シャムが駆け寄る。


「くっ……強いな」


蓮は地面を叩き、立ち上がる。


(今の一撃……防御魔法を張ってなかったら、即死していたかもしれない)


エゼキエルはゆっくりと歩み寄りながら、不敵な笑みを浮かべる。


「どうした? さっきまでの勢いは」


「まだ終わっちゃいねえよ」


蓮は体勢を整え、剣を構える。


「《烈火剣・焔》!!」


剣に紅蓮の炎を纏わせ、渾身の一撃を放つ。


「――無駄だ」


エゼキエルが手をかざすと、炎が霧散する。


「なっ……!?」


「その程度の魔法、我が闇の前では意味をなさぬ」


「じゃあ、これはどうだ!」


シャムが素早く魔法を詠唱する。


「《聖光槍》!!」


純白の光が槍の形を成し、エゼキエルへと突き刺さる――


しかし、エゼキエルはそれすらも片手で受け止めた。


「……チッ」


シャムが舌打ちする。


「まるで歯が立たない……」


蓮も焦りを感じ始めていた。


(このままでは、押し切られる……)


その時――


「ふむ……ここで貴様らを殺すのも悪くはないが……」


エゼキエルがふと、興味なさそうに腕を下ろした。


「今日は、このまま引いてやろう」


「……何?」


蓮が警戒する。


「今の我は、まだ完全ではない……」


エゼキエルは空を仰ぎ、静かに笑う。


「だが、そう遠くないうちに――この世界を闇に染める時が来る」


ズズズ……ッ!!


黒い霧が渦巻き、エゼキエルの姿が徐々に消えていく。


「次に会う時を楽しみにしているぞ、蓮よ」


そう言い残し、エゼキエルは消え去った。


「……行ったか」


蓮は剣を収め、深く息をつく。


「シャム、大丈夫か?」


「……ああ。でも、まずいな」


シャムの顔は険しかった。


「完全復活したら、マジで勝ち目がないかもしれない……」


「……いや」


蓮は静かに拳を握る。


「次までに、俺たちがもっと強くなればいい」


シャムは驚いたように蓮を見たが、すぐに笑った。


「……そうだな」


「そういえば、他の奴らは?」


シャムは呆れたように答える。


「たぶん魔術師が倒された後、あの禍々しい闇の魔力を感じ取ってこの場から立ち去ったようだな。」


「そうか……出来ればここで叩いておきたかったな……」


「よし、ひとまず王都に戻るとしよう」


こうして、戦場に一時の静寂が訪れたが、それは嵐の前の静けさにすぎなかった――。

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