第59話 四天王、崩壊
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「……終わりだ!!」
蓮の剣がヴァレリアの懐へと迫る。
《フレイム・ブレード》に宿った炎の輝きが、闇に包まれた彼女の黒衣を照らした。
だが――
「……ふふっ」
ヴァレリアは微笑んでいた。
「《影の渦》」
ズズズ……ッ!
刹那、黒い影が彼女の体から溢れ出し、蓮の剣を包み込んだ。
「くっ!」
蓮はすぐに後方へ飛び退る。
だが、その一瞬の隙を突かれる。
「甘いわよ」
ヴァレリアの姿が揺らめき、次の瞬間には蓮の背後へと現れていた。
「《ナイトメア・バインド》」
闇の鎖が蓮の体を縛り上げる。
「ぐっ……!」
体が硬直し、魔力の流れが乱される。
ヴァレリアは艶然と微笑んだ。
「あなた、さっき《聖なる審判》なんて厄介な技を使ったわね……。そんなものを連発されたら、さすがに困るわ」
彼女の指先が蓮の顎にかかる。
「だから――少し、お仕置きが必要かしら?」
ヴァレリアが蓮の胸元へ手をかざす。
「《闇喰らい》」
ズズッ……!
蓮の体に闇が染み込むように広がり、魔力が急速に吸い取られていく。
「くそ……っ!」
全身から力が抜ける感覚に、蓮は歯を食いしばる。
「ふふ……どう? 闇に呑まれる気分は」
ヴァレリアは愉悦に満ちた表情を浮かべる。
――まずい、このままでは……!
蓮は必死に抵抗しようとするが、魔力が抜けていくにつれ、思考すら鈍っていく。
(……なら、逆に利用するまでだ)
蓮は目を閉じ、意識を深く沈めた。
ヴァレリアの魔力が自分に流れ込む感覚――それを逆手に取る。
(お前の魔力を、俺のものにする!)
「――《魔力反転》!」
ズズズ……!!
闇の力が逆流し、ヴァレリアの方へと跳ね返る。
「な……!?」
ヴァレリアの体がびくりと震えた。
「これは……私の魔力が……!?」
「お返しだ」
蓮は縛りつけていた鎖を力づくで引きちぎると、ヴァレリアの懐へと踏み込んだ。
「《光輝剣・破邪》!!」
ズバァァン!!
純白の剣閃が闇を裂き、ヴァレリアの体を貫いた。
「――っ!!」
ヴァレリアの体が光に包まれ、ゆっくりと崩れ落ちる。
「……そんな、馬鹿な……私が……負けるなんて……」
彼女の黒衣がゆらめき、徐々に消滅していく。
蓮は剣を収め、静かにヴァレリアを見下ろした。
「お前は……強かったよ」
ヴァレリアは薄く笑い、かすれた声で囁く。
「……ふふっ……ありがとう……蓮……」
そして――
《闇術士ヴァレリア》は、戦場から完全に消え去った。
四天王、崩壊――。
蓮はゆっくりと息を吐いた。
「……終わった、か」
だが、その時。
「蓮!!」
シャムの叫び声が響く。
「!?」
蓮が振り向いた瞬間、異様な気配が戦場を覆った。
「これは……?」
ズズズ……!
大地が軋み、空が不気味な赤黒い光に包まれる。
「何が起きてるんだ……?」
シャムが駆け寄ってくる。
「ヴァレリアを倒したはずなのに、魔力の暴走が止まらない……!」
「……まさか」
蓮の脳裏に嫌な予感がよぎる。
その予感は、すぐに現実となった。
ズズズ……ッ!!
突如、戦場の中心に巨大な黒い魔法陣が出現する。
「……ちっ、まだ終わってなかったのか!」
ヴァレリアの死とともに、彼女の秘術が発動したのだ。
「この魔法陣、何かを呼び出そうとしている……!」
シャムが叫ぶ。
蓮は剣を構え直し、魔法陣を見つめた。
「……何が来る?」
次の瞬間――
「ククク……」
魔法陣の中心から、不気味な笑い声が響いた。
「ようやく目覚めることができた……」
赤黒い霧が戦場に満ち、その奥から姿を現したのは――
新たなる敵。
蓮は歯を食いしばり、剣を握る。
「……来い」
新たな戦いの幕開けが、静かに告げられた――。
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