第58話 死霊の軍勢
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蓮は荒れ果てた戦場を見渡した。
ヴァレリアの《影牢》から解放されたものの、体力と魔力を相当に消耗している。
だが、戦いはまだ終わっていなかった。
「ふふ……なかなか楽しませてもらったわ」
ヴァレリアは黒衣を翻し、口元に妖艶な笑みを浮かべている。その背後に広がるのは、異様な黒い魔法陣。
「……次は何を仕掛けてくる?」
蓮が剣を構え直した瞬間――
「《死霊の呼び声》」
ヴァレリアが静かに呟いた。
瞬間、戦場の至る所から黒い霧が立ち昇り、不気味な音が響き渡る。
「……何だ?」
蓮が身構えた次の瞬間、地面が揺れ、次々と骸骨や朽ち果てた兵士たちの亡骸が浮かび上がってきた。
「くそっ……! 死霊兵か!」
ヴァレリアはくすくすと笑う。
「そうよ。過去に戦場で散った者たちを呼び戻してあげたの」
蓮の周囲に広がるのは、無数の死霊兵たち。
鎧をまとい、武器を構えたままの亡者たち。
彼らの瞳には、生者への怨嗟と憎悪が宿っている。
「この数……!」
見渡す限り、戦場が死霊で埋め尽くされていた。
ヴァレリアは優雅に腕を広げ、誇らしげに言う。
「この大軍勢を前にして、あなたはどう戦うのかしら?」
死霊兵たちが一斉に武器を構え、蓮に向かって殺到する。
「……やるしかないか!」
蓮は《風の加護》を発動し、素早く地面を蹴る。
「《フレイム・ブレード》!」
剣に炎を纏わせ、一気に敵陣へ斬り込んだ。
「燃えろ!!」
ズバァァッ!!
炎の刃が死霊兵たちを両断し、黒い霧となって消えていく。
だが――
「……何!?」
切り伏せたはずの死霊兵たちが、再び立ち上がる。
「ふふっ、無駄よ?」
ヴァレリアが妖艶な笑みを浮かべる。
「死霊は倒しても何度でも蘇るの。あなたが魔力を消耗するだけ……」
「面倒くさいな……」
蓮は舌打ちした。
死霊兵たちは倒しても倒しても無限に蘇る。
このままでは埒が明かない――。
ならば、死霊そのものを消滅させるしかない。
「……よし、試してみるか」
蓮は剣を掲げ、深く息を吸い込んだ。
「《神聖魔法・浄化の光》!!」
純白の光が戦場を包み込む。
死霊たちの体が焼かれ、断末魔の叫びが響き渡る。
「……ぐっ……!」
ヴァレリアが顔をしかめた。
「そんな魔法……!」
「……どうやら、効くみたいだな」
蓮は剣を握り直し、ヴァレリアを睨みつける。
「このまま、お前の術を打ち破る!」
ヴァレリアの瞳が揺らぐ。
「ふふ……出来るのならね」
彼女が手を掲げると、死霊兵たちの数がさらに増えていく。
「……マジかよ」
蓮は歯を食いしばった。
だが――
「なら、一気に決める!!」
蓮は最後の手段を使う決意をした。
「《聖なる審判》!!」
光の柱が戦場を覆い尽くし、死霊兵たちを一掃する。
ヴァレリアは後退し、驚愕の表情を浮かべた。
「そんな……!」
「これで終わりだ!!」
蓮は一気に間合いを詰め、ヴァレリアへ剣を振り下ろした――!
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