第55話 雷剣と竜爪
帝国四天王の一人、《蒼雷のカーティス》が蓮たちの前に立ちはだかる。雷を纏う剣技と超速の動きに、蓮は防戦を強いられる。さらに、ゴルザ、ヴァレリア、マリスも戦いに介入し、状況は絶望的に。しかし、イリスが竜の力を解放し、カーティスとの直接対決に臨む――!
「来るぞ!」
蓮が叫ぶのと同時に、カーティスの姿が雷と化した。
「《雷閃乱舞》」
雷撃を纏った無数の剣閃が、一瞬にして蓮を襲う。
「くっ……!」
蓮は《バリアウォール》を展開するも、雷の刃が防御魔法を貫通し、皮膚を焦がした。
「遅いな」
カーティスの声が響く。
――こいつ、速すぎる!
視認すら困難な速度で移動しながら、精密な剣撃を繰り出してくる。
「なら……!」
蓮はすかさず空間魔法を発動させ、周囲の空気を圧縮する。
「《グラビティフィールド》!」
重力が増し、戦場の時間が歪む。だが――
「無駄だ」
カーティスは、まるで影をすり抜けるようにフィールドの影響を受けず、雷の軌跡を描きながら蓮の背後へ回り込んだ。
「《雷閃裂破》!」
ズバァン!
雷光が爆ぜ、蓮の体を切り裂く。
「ぐっ……!」
蓮はすぐに回避魔法を発動し、距離を取った。
(ヤバいな……動きが全く読めない)
彼の剣技は雷の如く、予測不能な軌道で襲いかかる。通常の剣士なら、目で捉えて回避できるが、カーティスの動きは視認すら困難だった。
「ふむ……今の一撃で仕留めたと思ったが、生きているか」
カーティスが薄く微笑む。
「帝国四天王の名は伊達ではない、ということだ」
蓮は拳を握る。
「だが……まだ負けるつもりはない」
その時、
「もういいわ、蓮」
イリスが前に出た。
「……イリス?」
彼女の黄金の瞳が鋭く光る。
「お前みたいな速さが売りの剣士なら、私が相手をする」
彼女の全身から炎のような竜のオーラが立ち昇る。
「ほう……」
カーティスは目を細めた。
「竜の力か。なるほど、面白い」
「言っておくけど、私の爪は雷よりも鋭いわよ?」
イリスは静かに拳を握りしめ、地を蹴った。
――ドンッ!!
彼女の姿が掻き消えた。
「なっ……!」
カーティスが驚愕する間もなく、イリスの拳が眼前へ迫る。
「《ドラゴニック・インパクト》!」
ゴオォォォン!!
轟音と共に、カーティスの身体が吹き飛ばされた。
「……ほう、なるほど」
地面を滑りながら、カーティスは姿勢を立て直す。
「私と同じ……いや、それ以上の速さか」
「気づくのが遅いわね」
イリスは不敵に微笑んだ。
「雷は速いけど、私は空を支配する竜よ?」
彼女の爪が淡く輝く。
「雷を捕まえるくらい、朝飯前よ!」
カーティスの目が鋭く光る。
「ならば、試してみるか……!」
二人の間に、火花が散る。
「《雷神剣・雷鎖》!」
カーティスが剣を振ると、雷の鎖がイリスを捕えようと奔る。
「無駄よ!」
イリスは竜の翼を広げ、一瞬で上空へ飛び去った。
「……やるな」
カーティスが楽しそうに笑う。
「ならば――全力でいこう!」
雷光が迸る。
戦場は、雷剣と竜爪の死闘の場と化した――!




