第54話 帝国四天王、襲来
ガルバードとの激戦の末、ついに彼を追い詰めた蓮とイリス。しかし、勝利を確信した瞬間、新たなる強敵が姿を現す――帝国四天王。帝国が誇る最強の四人が、一挙に蓮たちの前に立ちはだかる。王国軍に、さらなる試練が降りかかる……!
「……帝国四天王、集結か」
イリスの鋭い声が戦場に響く。
ガルバードが膝をついたその背後、そこに現れたのは四つの影――帝国が誇る最強の四人、帝国四天王だった。
「はぁ……はぁ……」
蓮は荒い息を整えながら目の前の状況を見つめる。
ガルバードとの戦いで相当な魔力を消費した。イリスも同様だ。だが、敵はまだ終わっていなかった。
「ふむ……さすがは帝国最強の将軍、簡単には倒れぬか」
静かな声が響く。
四天王の一人、優雅な佇まいを持つ青年が一歩前へ出た。長身で銀髪、白い軍服に身を包み、片手には細身の剣――レイピアを持っている。
「まず名乗ろう。我が名は《蒼雷のカーティス》。帝国四天王の一人だ」
その名が告げられた瞬間、戦場にいた王国兵たちがざわめいた。
「蒼雷のカーティス……!?」
「あの男か……帝国の剣聖……!」
カーティス――帝国剣技の粋を極めた男。雷の魔力を纏う剣技を駆使し、一度剣を抜けば百人を斬ると言われる存在。
「まったく……貴様らがガルバードをここまで追い詰めるとは思わなかった。これは少しばかり、興味が湧いたな」
カーティスが口元に微笑を浮かべる。
「……それは、つまり」
蓮が問う。
「当然だ。私が次の相手を務めよう」
カーティスがレイピアを構えた瞬間、戦場に雷鳴が轟いた。
「《雷閃一閃》」
その声と共に、彼の姿が消え――
「ッ!」
蓮は咄嗟に回避行動を取る。
だが――
「遅い」
カーティスの声が背後から聞こえた。
ズバァンッ!!
蓮の背中を雷が走る。
「ぐっ……!!」
魔法障壁を展開する暇もなく、蓮の身体が弾き飛ばされた。
「蓮!」
イリスがすぐさまカーティスに飛びかかる。
「はっ、竜の力か……なかなか面白い」
カーティスはレイピアを片手に構え、優雅に受け流す。
「だが……帝国最強の四人が、そう簡単に崩れると思うなよ?」
「おいおい、俺たちを忘れるなよ」
低い声が響いた。
別の四天王が歩み出る。
巨大な身体、鋼の鎧を纏い、背中には巨大な戦斧を担いでいる。
「俺は《鉄壁のゴルザ》……防御の要ってとこだ」
彼が地面に戦斧を叩きつけた瞬間、大地が砕ける。
「こいつは……厄介そうね」
イリスが警戒する。
さらに、もう一人が口を開いた。
「戦場で騒ぐのは嫌いだが……仕方あるまい」
冷徹な声。
黒いローブを纏い、両手に不気味な魔力をまとわせる男。
「《闇術士ヴァレリア》……」
彼は静かに名乗る。
「戦場を闇に沈めるのが、我の役目だ」
不気味な黒い霧が彼の周囲に広がっていく。
「さて……最後の一人はどこだ?」
蓮が問いかけると――
「……ここにいるよ」
いつの間にか、蓮のすぐ背後に人影があった。
「ッ!?」
蓮が振り向くと、そこには笑みを浮かべる少女。
「《影のマリス》よ。よろしくね」
黒い短剣を手に、まるで影そのもののように佇んでいる。
「……なるほどね」
蓮は理解した。
カーティスが剣技。
ゴルザが防御。
ヴァレリアが魔術。
マリスが暗殺。
帝国はあらゆる戦況に対応できる四天王を揃えているのだ。
「さあ、始めようか」
カーティスがレイピアを構えた。
「貴様らの力、見せてもらうぞ!」
戦いは、再び始まった――。




