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第53話  帝剣ヴォルカニス

帝国軍最強の将軍、ガルバードが本気を出す。

その手に握られた《帝剣ヴォルカニス》が戦場を支配し、王国軍にさらなる試練をもたらす!

蓮とイリスは、この脅威を乗り越えることができるのか!?

ガルバード将軍が抜き放った剣――《帝剣ヴォルカニス》。

それは、まるで火山の怒りをそのまま封じ込めたかのような業火の剣だった。


「これが……!」


蓮は瞬時に危機を察知する。

《帝剣ヴォルカニス》から放たれる熱量は尋常ではなく、剣を握るガルバード自身すらも熱風に包まれている。それほどの威力を持つ剣を、意のままに操れるということは――。


「フッ……やはり貴様、並の相手ではないか」


ガルバードは蓮を見据え、ゆっくりと構えを取る。


「だが、所詮はただの魔術師。剣の技量では私には及ぶまい!」


次の瞬間――轟音が響いた。


「ッ!?」


ガルバードが地を蹴ったかと思うと、蓮の目の前に瞬間移動したかのような速度で迫る。


「遅い!」


蓮は即座に防御魔法バリアウォールを展開するも――


「無駄だ!」


ヴォルカニスが触れた瞬間、バリアごと焼き尽くされた。


「なっ……!?」


蓮は咄嗟に横へ飛び退く。だが、ヴォルカニスが振り下ろされた地面は溶岩のように溶け、そこから火柱が噴き上がった。


「……魔法そのものを焼き尽くす剣か」


イリスが低く呟く。


「しかも、揮うたびに大地そのものが炎に変わる……厄介ね」


蓮は冷や汗を流しながらも、すぐに次の行動に移る。


(まともに受けるのは無理だ……なら、こちらも出し惜しみせずにいく!)


蓮は両手をかざし、魔力を集中させる。


「《フリージング・ディザスター》!」


氷の嵐が吹き荒れ、戦場を一瞬で氷雪地獄へと変えた。

炎に対する最強の対抗手段――絶対零度の氷。


「ほう……」


しかし、ガルバードはまったく動じることなく、ヴォルカニスを振りかざす。


「――砕けろ」


彼が剣を振るった瞬間、氷の大地が音を立てて崩壊し、一瞬で蒸発した。


「ッ……!?」


蓮の攻撃すら、まったく通じない――それほどの力が、この剣には備わっているのか!?


「さすがに厄介ね……」


イリスが前に出る。


「なら、私が相手をしてあげるわ」


彼女の黄金の瞳が、燃え盛るガルバードを見据えた。


「竜の力……見せてやる!」


イリスの周囲に竜のオーラが溢れ出し、彼女の手が赤熱する。


「《ドラゴニック・バースト》!」


彼女の拳が振るわれると、空間が歪み、純粋な竜の力が放たれた。


「ほう……!」


ガルバードは驚いたような表情を見せながらも、ヴォルカニスを正面から構え、イリスの拳を迎え撃った。


「――ゴォォォォン!!!」


衝撃波が周囲を吹き飛ばし、戦場全体が揺れる。

炎と竜の力が衝突し、互いに押し合う。


「おもしろい……これほどの力を持つとは!」


ガルバードの剣がさらに燃え盛る。


「だが、それでも……帝国最強は、この私だ!」


彼がヴォルカニスを天へ掲げると、剣から灼熱の柱が立ち上り、炎が空を覆った。


「まさか……この規模の魔力制御を、一介の人間が!?」


イリスが驚愕する。


「――終わらせるぞ」


ガルバードが剣を振り下ろした。


「《灼炎天滅》!!!」


炎の奔流が戦場を飲み込もうとした、その瞬間――


「させるか!!!」


蓮が全魔力を解放し、空間ごと魔力を歪めた。


「《エンドレス・ホライゾン》!!!」


蓮の手から放たれたのは、あらゆる属性を内包した混沌の魔法。

炎、氷、雷、風、闇――すべての属性が絡み合い、ガルバードの炎にぶつかった。


「ぐぅ……!」


ガルバードが歯を食いしばる。


「なに……!? 私のヴォルカニスが……押されるだと!?」


「お前だけが切り札を持ってるわけじゃない!」


蓮が叫ぶ。


「俺は――この世界に負ける気はない!」


二つの力が激突し、戦場が光に包まれる。

そして――


「ぐあっ!!」


ついに、ガルバードが膝をついた。


「馬鹿な……この私が……!」


ヴォルカニスが力を失い、剣の炎が消えていく。


「やった……のか?」


シャムが息を飲む。


蓮とイリスは息を切らしながらも、勝利を確信する。


「これで……決まりね」


イリスが微笑んだ、その瞬間――


「フッ……まだだ」


ガルバードは、再び立ち上がった。


「なっ……!?」


ボロボロのはずの彼が、不敵な笑みを浮かべる。


「貴様らが強いのは認める。だが、私はまだ負けていない」


彼の背後に、新たな影が現れる。


「……帝国四天王、集結か」


イリスが警戒する。


「面白い……まだまだ続きそうね」


戦いは終わらない。

さらなる強敵が、蓮たちを待ち受けていた――。


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