第47話 暴かれる陰謀
王都に広まる異世界人への不信と、帝国の工作の影。
蓮たちは王城と協力し、囮となることで敵の正体を暴こうとする。
そしてついに、王都に潜む裏切り者の正体が明らかになる――
王城での会議が終わり、蓮たちは再び王都へと戻ってきた。
「……さて、囮になるって話だけど、具体的にはどう動く?」
シャムが腕を組みながら尋ねる。
「単純に目立つ行動を取るってことだろうな」
蓮は王都の大通りを見渡しながら答えた。
「幸い、俺たちはすでに"異世界人"として噂になってる。わざと人気のある場所に行き、注目を浴びれば、帝国のスパイも動かざるを得ないはずだ」
「つまり、敵が仕掛けてくるのを待つってことね」
リーナが頷いた。
「……でも、注意しておかないと。帝国がどこまでこの王都に手を伸ばしているのか、まだ分からないわ」
「わかってる。だからこそ、俺たちはまず"情報を集める"ところから始めるべきだ」
蓮はそう言いながら、王都の広場へと足を向けた。
王都の中心にある広場は、多くの人々で賑わっていた。しかし、その賑わいの中には、どこか不穏な空気が混じっている。
「異世界人が王都を危険にさらしている?」
「本当なのか?」
「最近、帝国の動きが怪しいのも、奴らのせいじゃないのか?」
人々の不安げな声が聞こえてくる。
「……思った以上に広まってるな」
シャムが低く呟く。
「しかも、話の内容が統一されすぎているわ」
リーナが警戒するように辺りを見渡した。
「まるで、誰かが意図的に流したようにね」
「そうだな……となると、その"誰か"を突き止めるのが先決か」
蓮は考え込む。
(帝国のスパイが広めた情報なら、必ず"発信源"があるはずだ)
「とりあえず、商人たちから話を聞いてみよう」
蓮たちは広場の屋台や商人たちに近づき、さりげなく情報を集め始めた。
「最近、この噂を聞いたのはいつから?」
蓮が尋ねると、年配の商人が渋い顔で答えた。
「ここ二、三日ってところだな。最初は旅の商人たちの間で囁かれ始めたんだが、いつの間にか王都中に広がっちまった」
「旅の商人……?」
「そうだ。王都に入ってくる商人たちは、各地の情報を持ち込むからな。だが、今回の噂は妙なんだ。まるで最初から"広めることを目的にした"みたいに統一されてるんだよ」
蓮は商人の言葉を聞きながら、何か引っかかるものを感じた。
(旅の商人が発信源か……だが、本当にそれだけか?)
蓮が考えていると、リーナがそっと袖を引いた。
「蓮、向こうに怪しい人物がいるわ」
リーナが指し示した先には、フードを深くかぶった男がいた。
「……確かに怪しいな」
蓮たちは男を目立たないように尾行し、人気のない路地裏へと入り込んだところで声をかけた。
「おい、ちょっと待て」
男は驚いたように振り返るが、すぐに逃げ出そうとする。
「逃がすかよ!」
シャムが素早く動き、男の前に立ちふさがった。
「おとなしくしてもらうぜ」
男は抵抗しようとしたが、リーナがさっと魔法を使い、動きを封じる。
「さて、いろいろと聞かせてもらおうか」
男は最初は口を閉ざしていたが、王城の兵士を呼び、拘束すると次第に観念したように話し始めた。
「……俺は帝国の命令で王都に送り込まれた……」
「やっぱりな」
蓮たちは予想通りの答えに、表情を引き締めた。
「帝国の目的は何だ?」
「……王都の混乱を煽ること。そして、お前たち異世界人を孤立させることだ」
「予想通りだな」
シャムが渋い顔で呟く。
「帝国は異世界人を恐れている。そして、お前たちが王都にいることを知り、利用しようとした」
男はそう続けた。
「俺たちは王都に潜伏し、商人たちを使って噂を広めた。そして、お前たちを追い詰めるために"次の手"も打ってある」
「……次の手?」
蓮は嫌な予感を覚えた。
「帝国は、次の夜に"本格的な襲撃"を仕掛ける」
「なに……?」
「昨夜の襲撃は、ただの"前哨戦"にすぎない。本命は、今夜だ」
男の言葉に、蓮たちは驚愕した。
「王都を混乱させ、貴様らを孤立させたうえで、帝国の精鋭部隊を送り込む計画だったのさ」
「……つまり、時間がないってことか」
リーナが険しい表情で言う。
「王城に報告しなきゃ」
「いや、それだけじゃない」
蓮は深く息を吸い込んだ。
「俺たち自身も、準備をしなきゃならない」
(帝国の狙いは、俺たち異世界人の抹殺……いや、捕獲か?)
蓮は考える。
(いずれにせよ、ここで奴らを迎え撃つしかない)
「よし、作戦を立てよう」
蓮は決意を固めた。
(今度は、こっちが帝国の"計画"を潰す番だ)




