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第43話  王都の決断

王都に到着した蓮たちは、国王に帝国の動きを報告する。帝国が異世界人を狙う理由とは何か?

ライルの「歪み」の正体、そして国王の下す決断が、蓮たちの今後を左右する――


夜が明けるころ、蓮たちはついに王都の門前にたどり着いた。戦闘の余韻が残る中、疲れを感じる暇もなく、王へ急ぐ必要があった。


「ようやく着いたな……」


シャムが馬の手綱を引き、息をつく。


「でも、門番に話を通さなきゃならないわね」


リーナが前方を指す。


王都の城門はまだ開いていない。朝の開門時間を待つべきかとも考えたが、そんな悠長なことをしている場合ではない。


蓮は馬を降り、門番の前へ進み出た。


「異世界の来訪者だな?」


門番の一人が、警戒の目を向けてくる。しかし、彼の態度は以前よりも柔らかかった。蓮が魔の森の調査を国王から正式に依頼されたことが、ある程度知れ渡っているようだった。


「急ぎ、国王陛下に報告したい。帝国の刺客が我々を追っていた」


蓮の言葉に、門番は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに頷いた。


「わかった。すぐに宰相に伝えよう。待て」


門番の一人が奥へと駆けていく。


「うまく通ればいいが……」


シャムが肩をすくめる。


「帝国の連中が動き始めた以上、王都にまで影響が出てるかもしれねえしな」


「……いや、むしろそれが決定打になるかもしれない」


ライルが静かに言った。


「決定打?」


リーナが尋ねる。


「帝国が直接王都の近くで動いたという事実があれば、国王も即座に対応せざるを得ないだろう。待たされることはないはずだ」


蓮は頷いた。ライルの推測が正しければ、王都が帝国の脅威を軽視することはもうできない。


やがて、城門の奥から馬のひづめの音が響き、数人の騎士を伴った宰相が姿を現した。


「蓮殿か。王が直ちにお会いになりたいと仰せだ。すぐに王城へ」


宰相の言葉に、蓮たちは互いに頷き合い、王城へ向かうことを決意した。



王城の玉座の間は荘厳な雰囲気に包まれていた。


国王は既に席についており、その隣には宰相と数人の重臣が控えている。蓮たちは膝をつき、簡潔に帝国の追撃、刺客との戦闘、そしてライルの「歪み」に関する情報を報告した。


報告を聞き終えた国王は、厳しい表情を浮かべる。


「帝国が、貴殿らを捕らえようとしている理由について、何か心当たりはあるのか?」


蓮は一瞬迷ったが、正直に答えることにした。


「帝国はおそらく、異世界人を兵器として利用しようとしている可能性があります」


「異世界人を兵器として……?」


国王の表情が険しくなる。


「はい。私が召喚された国では、召喚された者がどのような運命を辿るのか、何も語られていませんでした。ですが、これまでの情報を総合すると、過去の召喚者たちは何らかの理由で姿を消している……」


「……ふむ」


国王は深く考え込むように頷いた。宰相もまた、神妙な顔つきになっている。


「そして、帝国はライルを狙っていました」


蓮はライルをちらりと見た。ライルは静かに頷き、自ら口を開いた。


「私は……"歪み"の力を持っています。帝国はこの力を手に入れようとしているのでしょう」


「"歪み"とは何なのだ?」


宰相が尋ねる。


ライルはわずかに躊躇した後、口を開いた。


「"召喚の歪み"……それは、異世界から来た者の存在がこの世界に適応する過程で生じる不自然な力です」


「不自然な力?」


「はい。通常の魔法とは異なり、世界の法則を捻じ曲げる力……帝国はこれを兵器として利用しようとしているのかもしれません」


国王と宰相が互いに視線を交わす。


「確かに……帝国が異世界人を求める理由としては筋が通る。もしその"歪み"とやらを自在に操ることができれば、戦局を大きく左右する力となるだろう」


「ですが、それは危険すぎます」


蓮が強い口調で言った。


「この力は、正しく扱わなければ……」


ライルが小さく息を吐く。


「暴走する」


静寂が玉座の間を包む。


「……つまり、帝国は制御不能な力を求めているということか」


国王はしばらく思案した後、厳かな声で命じた。


「帝国の脅威はもはや見過ごせぬ。我が国はこの事態に備え、軍の動員を開始する。帝国が異世界人を利用しようとしている証拠を掴み、これを阻止する策を講じなければならない」


「王よ、それは戦争を意味するのでは?」


宰相が慎重に問いかける。


「戦争は避けられるなら避けたい。だが、すでに帝国が動き始めている以上、我々も無策でいるわけにはいかぬ」


国王の目が蓮に向けられる。


「蓮よ、そなたに問う。そなたはこの件にどう関わるつもりだ?」


蓮は静かに立ち上がる。


「私は……帝国の野望を阻止し、この世界で生きる道を切り開く」


シャム、リーナ、ライルも頷く。


「ならば、王命を下す」


国王が重々しく言った。


「貴殿らは帝国の動向を探り、必要があればこれを阻止せよ。加えて、魔の森の調査を引き続き進めること」


「……承知しました」


蓮は深く頭を下げた。


王の決断が下された。


帝国との戦いは、もう避けられない――


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