表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/201

第41話  召喚の歪み

帝国の騎士団長ジークが撤退し、戦いは一時的に終結した。しかし、ライルの異質な魔力、そして「召喚の歪み」という言葉が残した謎が、蓮たちを新たな問題へと導く。

王都へ向かう道中、ライルは自身の過去を語り始める。異世界召喚の研究に関わった彼が知る、帝国の恐るべき計画とは――?


「ライル、お前……今の魔法、一体……?」


戦いが終わり、森の奥深くへと足を進める中、蓮は改めてライルに問いかけた。


「……俺の魔力は、普通のものとは違う」


ライルは疲れ切った表情で小さく笑い、地面に座り込む。


「少し休ませてくれ……話すべきことは、たくさんあるからな」


彼の言葉に頷いた蓮たちは、近くの開けた場所に陣を敷いた。シャムが警戒し、リーナが回復魔法を施す中、ライルは静かに語り始めた。


「……俺は元々、帝国の研究機関で"召喚術"の研究をしていた」


「召喚術の研究?」


蓮は眉をひそめる。シャムやリーナも驚いた表情を浮かべた。


「ああ、異世界召喚は、この世界の魔法の中でも特異なものでな。通常の魔術理論では説明できない部分が多い……だからこそ、帝国はその力を解明しようとしていたんだ」


ライルは手を握りしめ、悔しそうに続ける。


「俺も最初は、ただ魔法を学びたいだけだった。だけど、ある日気づいたんだ……帝国の本当の目的は、"召喚者を兵器として利用すること"だってな」


「……」


蓮は無言でライルを見つめた。


「帝国は召喚者に強制的に戦わせる方法を探していた。召喚された者が拒めないよう、魂に干渉する魔術や、特殊な拘束魔法の研究を進めていたんだ」


「魂に……干渉?」


リーナが青ざめた顔で呟く。


「そうだ。魂そのものに刻印を施し、帝国の命令に逆らえなくする――そんな恐ろしい研究が進められていたんだ」


「……おいおい、それってつまり"意思を奪う"ってことかよ」


シャムが険しい顔で言う。


「まさにその通りだ。俺は……その計画に耐えられなくなって、逃げ出した。だが……"歪み"は俺の身体に残ったままだった」


ライルは自身の手のひらを見つめる。その手からは、先ほどジークを退けたときと同じ異質な魔力が、微かに滲み出ていた。


「……異世界召喚は、本来、世界の法則に反する行為だ。そのせいで、召喚された者には"魔力の異常"が発生することがある」


「それが、お前の"歪み"ってやつか?」


「ああ。俺は召喚の研究に関わるうちに、異世界の魔力を取り込んでしまった。それによって、自分の魔力が不安定になり、通常の魔法とは異なる力を発現するようになったんだ」


ライルの言葉に、蓮はゆっくりと息を吐いた。


「……召喚者が利用されるだけでなく、その力まで歪められるなんてな」


「帝国は、召喚術をさらに発展させようとしている。俺が逃げた後も、研究は続いているはずだ。そして……おそらく、"新たな召喚"が行われた可能性がある」


「新たな召喚……?」


蓮は目を細める。


「……つまり、俺以外の異世界人が、また召喚されたかもしれないってことか」



「王都へ急ぐぞ」


蓮はそう言い、立ち上がった。


「帝国の動きが活発になっているなら、一刻も早く王へ報告しなければならない」


「賛成だな」


シャムも同意し、リーナも頷く。


「でも、王都までの道中、また帝国の追手が来るかもしれないわね……」


「その可能性は高い。だが、もう逃げるだけじゃダメだ」


蓮の言葉に、ライルは微笑を浮かべた。


「……お前、いい目をするようになったな」


「俺はこの世界で生きると決めたからな。もう逃げ腰じゃいられない」


蓮は剣を握りしめた。


「行くぞ――帝国の企みを阻止するために」



彼らが王都へ向けて出発したその夜。


帝国の暗部にて、一人の魔導師が報告を行っていた。


「ジーク様……例の"歪み"を持つ者が、蓮と接触しました」


ジークは無言で報告を聞き、静かに目を閉じる。


「……ライルのことか」


「はい。しかし、彼はもはや帝国に従わない者となりました」


「知っている」


ジークはゆっくりと立ち上がり、剣を手に取る。


「帝国の意志に逆らう者は、全て排除する……それが我々の役目だ」


冷徹な声が、闇の中に響く。


「準備を進めろ。次は、確実に"仕留める"」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ