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第39話  再会の刻

呪霧の獣との戦いを終えた蓮たち。

だが、カースの言葉が胸に残る――「貴様らには、まだ"本当の呪い"を見せていない」。

そんな中、王都への帰還途中で蓮たちは"ある人物"と再会を果たす。

それは、シャムが異世界へ召喚された直後に出会い、別れた重要な人物だった――。

「ふぅ……とりあえず、一段落か」


剣を鞘に収め、蓮は周囲を見渡した。

呪霧は完全に晴れ、森の空気が澄み渡っている。


「……まさか、呪霧の獣が人の怨念から生まれたものだったなんてな」


シャムが肩を回しながらぼやく。


「カースの言葉が気にかかる。"本当の呪い"とは、一体……」


リーナは小さく唇を噛んだ。先ほどの戦いで彼女の心に生じた傷は、完全に癒えたわけではない。

しかし、彼女の目に宿る決意は揺るがないものになっていた。


「今は考えても仕方がない。いったん王都へ戻ろう」


蓮の言葉に頷き、彼らは歩き始めた。



しばらく歩くと、森の奥から微かな気配が伝わってきた。


「……誰かいるな」


蓮が目を細める。


「敵?」


シャムが即座に剣を抜いた。


「いや……この気配は……」


リーナが瞳を輝かせた。


「"人"だわ」


慎重に進むと、木々の隙間から一人の人物が姿を現した。


「……あっ」


シャムの目が驚きに見開かれる。


そこに立っていたのは、薄汚れたローブをまとった青年だった。

その顔には疲労の色が濃く刻まれているが、どこか懐かしさを感じさせる。


「お前……」


蓮もその顔に見覚えがあった。


「……まさか……ライル!?」


シャムが驚愕の声を上げる。


「ライル?」


リーナが問いかけると、シャムは急いで説明した。


「俺がこの世界に召喚された直後に出会った男だ。あの帝国にいたとき、一緒に牢に入れられてたんだよ」


「シャム……か……生きていたんだな」


ライルはかすれた声で呟くと、膝から崩れ落ちた。


「おい、大丈夫か!?」


蓮が慌てて駆け寄る。


「……すまない。しばらく……水を……」


リーナがすぐに水筒を差し出し、ライルはゆっくりとそれを飲んだ。


「……助かる……」


「ライル、どうしてここに?」


シャムが問い詰めると、ライルは苦笑した。


「話せば長くなるが……帝国を逃げ出し、放浪していたんだ」



ライルはかつて、帝国で貴族に仕えていた魔術師だった。

だが、異世界召喚の実験に関わるうちに、自身もその犠牲者となった。


「俺は……召喚の研究に関わっていたが、その成果を利用され、異世界人を兵器として扱う計画が進められていると知った」


ライルは拳を握りしめる。


「だから、俺は異世界人――シャムを助けるために動いた。その結果、裏切り者として牢に入れられたがな」


「それで……今は?」


「帝国は相変わらず、異世界人を求めて動いている。だが、それだけじゃない」


ライルは眉をひそめ、蓮たちを見つめた。


「"召喚の儀式"が行われた際、通常ではありえない魔力の歪みが生じたらしい」


「魔力の歪み……?」


リーナが首をかしげる。


「召喚の魔法陣が発動した際、通常の異世界人召喚とは異なる波動が観測された。帝国の魔術師たちは、その原因を"召喚石"の異常だと考えている」


「つまり……俺が召喚された理由にも関係があるってことか?」


蓮が問いかけると、ライルは頷いた。


「そうだ。通常、召喚は一度行うと次の発動まで数十年かかる。しかし……お前が召喚された時点で、帝国は再び召喚を行っていた」


蓮の表情が険しくなる。


「帝国は何かを隠している。俺はそれを知るために逃げ出したが……すぐに追手がかかった」


「追手……?」


蓮が警戒を強めたその時――


「……!」


周囲の木々がざわめき、鋭い気配が迫ってきた。


「来たか……!」


ライルが歯を食いしばる。


「どうやら、俺を追っていた連中がこの森まで来ているらしい……!」



森の奥から現れたのは、黒い鎧をまとった兵士たちだった。

その中央に立つのは、精悍な顔立ちの青年――帝国の騎士団長、ジークだった。


「やっと見つけたぞ、ライル」


彼の視線が鋭く光る。


「そして……これは驚いた。"もう一人の異世界人"に会えるとはな」


ジークは蓮を見据えると、口元に薄く笑みを浮かべた。


「……なるほど。帝国が探していたのはお前か」


「どうやら、面倒なことになりそうだな」


蓮は剣を抜き、戦闘の構えを取った。


「ライルを渡せ」


ジークの声が響く。


「断る。俺たちは、好きにはさせない」


蓮の言葉に、ジークは冷ややかに笑った。


「ならば――力づくで連れて行くまでだ」

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