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第4話  赤牙の大狼と覚醒する力

獣人の隠れ里に受け入れられるため、蓮は試練として「赤牙の大狼」の討伐を命じられる。

魔物の巣へと足を踏み入れた彼を待ち受けていたのは、想像を超える強敵だった。

追い詰められた蓮の中で、新たな力が覚醒する――。

深い森の奥へと足を進めるにつれ、周囲の空気が変わっていくのを蓮は感じていた。

まるで森そのものが「侵入者」を拒んでいるかのような、重く圧し掛かる魔力の気配。


「……この感じ、ただの魔物じゃなさそうだな」


蓮は警戒を強めつつ、手のひらに魔力を集める。


(試練とはいえ、なかなかハードモードじゃないか)


そんなことを考えながら、さらに奥へと進んでいくと、やがて岩壁に囲まれた開けた場所に辿り着いた。


そこには、真紅の牙を持つ巨大な狼が待ち構えていた。


赤牙の大狼――。


その体長は優に3メートルを超え、燃え盛る炎のような赤い毛並みが揺れる。

目は黄金に輝き、殺意に満ちた視線がこちらを射抜いた。


「グルルル……」


低く唸りながら、大狼はゆっくりと蓮の方へ歩み寄ってくる。


(これは……相当やばいな)


蓮は額に汗を浮かべながら、慎重に距離を測った。

赤牙の大狼は通常の魔物とは違い、ただの獣ではない。

その強靭な肉体と鋭い知性を併せ持つ、まさに「王」のような存在だった。


――それでも、やるしかない。


蓮は覚悟を決め、静かに呟いた。


「さて……どこまでやれるか、試してみるか」


蓮はここで防御シールドを展開させた。


「――炎槍!」


蓮の手から放たれた炎の槍が、大狼へと一直線に飛ぶ。

しかし――


「ガァンッ!」


大狼はその巨体を躍らせ、炎槍をいとも簡単に回避した。


(やっぱり素早い……!)


次の瞬間、蓮の背後に回り込むようにして大狼が疾走する。


「――!」


蓮は咄嗟に飛び退いたが、そのわずかに遅れた隙を逃さず、大狼の鋭い爪が襲いかかる。


「グガァッ!!」


「っ……!」


蓮は腕をクロスさせて防御したものの、衝撃で地面を転がった。


(このスピードとパワー……まともに戦ったら押し切られる)


立ち上がりながら考える。


(魔法の精度を上げるか、それとも……)


しかし、考える間もなく、大狼は再び突進してきた。


(くそっ、早い!)


咄嗟に防壁魔法を展開しようとした瞬間――


ズズンッ!


大狼の巨大な前脚が蓮の胸を直撃した。


「ぐはっ……!」


吹き飛ばされ、岩壁に叩きつけられる。


視界が歪み、肺から空気が絞り出されるような痛みが襲った。


(……くそ、マジかよ……)


防護シールドを展開していてもなお、全身に痺れるような感覚が走る。


(……こんなところで、負けられるかよ)



血を吐きながらも、蓮は立ち上がる。


「……まだ、終わっちゃいねぇぞ」

「俺はまだやれる!」


自らを鼓舞して大狼を睨みつける。


その瞬間――


ドクン……!


蓮の体に、今まで感じたことのない力が溢れ出した。


(……なんだ、これ……?)


身体の内側から沸き立つような感覚。

全身に魔力が巡り、視界が鮮明になっていく。


すると、脳内に声が響いた。


【適性スキルを確認。新たな能力を解放します】


≪超速詠唱≫を習得しました。


【全属性魔法の適応を確認。魔法の発動速度を最大限まで加速します】


「――っ!」


蓮の周囲に、無数の魔法陣が浮かび上がった。


「行くぞ……!」


蓮は両手を掲げ、魔力を解き放つ。


「雷槍!」


雷の槍が瞬時に生成され、大狼へと一直線に放たれる。


「グォォォォ!!」


大狼は回避しようとするが、蓮の詠唱速度は尋常ではなかった。

次々と放たれる雷の槍が、大狼の動きを封じる。


「終わりだ――!」


蓮は全身の魔力を込め、最後の一撃を放つ。


「雷獄閃!!」


無数の雷撃が大狼を包み込み、爆発的な轟音が響き渡った。


「グ、ガァァァァ……ッ!!」


雷光の中で、大狼は断末魔の咆哮を上げ、ついに地に伏した。



蓮は深く息を吐き、ゆっくりと歩み寄った。


「……やった、のか……?」


大狼の巨大な身体は微動だにしない。


(……倒した、か)


蓮はその場に座り込み、夜空を見上げた。


試練は終わった。


しかし、それと同時に――


(この世界で生きるために、俺はもっと強くならなきゃならない)


そう、蓮は改めて決意したのだった。


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